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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第三章
69/211

第69話 本

「大事なこと?」


「ああ、そうだとも」


「それは、一体なんだ?リョカ」


「なんだよ…分かんないのか?鈍すぎるぜジンさん…」


 リョカさんはジンさんの返答に対して、呆れたようにそう言った。


「だから、一体なんだ?」


「全く…今までの俺達の話を聞いてなかったのか?」


「いや、もちろん聞いていたさ」


「だったら分かるだろ?俺達は、これからアンジ達を鍛える。…タイラは適当になんとかするだろう」


「適当って…」


 口を挟もうとした、タイラさんを、リョカさんは手で制し、


「しかし、それが何の為か…ジンさん、分かるよな?」


「当たり前だ。馬鹿にするんじゃない。アカツキを終わらせる為、コウエンを助ける為だろうが」


 園長は憮然として、そう答えた。


「なんだ、ちゃんと分かってるじゃないか」


「だから、それで私のやるべき事とは、何なのだ、リョカ」


「決まってるだろ?ジンさん。俺達にはあんたの力が必要なんだよ。もちろん、園長としてではなく、『ギシ』としてのあんたの力がな」


「ギシとして?」


「そうさ。いい加減気付いてくれよ。俺達はこいつらに、ヒトツキ共と戦う術を教える事はできる。だが…さすがに素手では無理だろ?つまり…」


「アンジ達に見合った、道具をこしらえろ…と、いうことか…」


 園長の答えを聞いたリョカさんは、


「ま、そういうことだ、ジンさん」


 と、園長の目を見ながら、答えた。


「全く…何を言い出すのかと思えば…そんな事、お前に言われなくとも用意するつもりだ。当然だろうが。…それと、タイラの分もな。少し時間が掛かるかもしれんが、良いな?」


「もちろんです。よろしくお願いします」


 と、タイラさんは、園長に対して頭を下げた。


「よし…じゃあ、一通りまとまった事だし、そろそろ」


 と、リョカさんが言った時だった。不意にトウジが、


「あの…今更なんですけど…」


「どうした?」


「あの…実は、僕………その、アンジみたいに色々出来ないから……皆さんの足手まといにならないか心配で…」


「なんだ、そんな事か。心配するな。十分分かってる。だから、ハクに、色々教えてもらえ」


「でも…僕…ハクさんみたいに…魔法なんて使えないし…」


「大丈夫だよ。トウジ。無理せず、自分に出来る事から徐々にやっていこう」


 そうハクさんが、トウジに優しく声を掛けたが、トウジはまだ不安そうだった。


 すると、


「何、心配することないぞ、トウジ」


 園長が、トウジに声を掛けた。


「お前は、部屋にある本は読んでるか?」


「本…ですか?」


「そう、本だ。読んでるか?」


「はい。読んでます」


「そうか、で?どれくらい読んだ?全部よんでしまったか?」


「いえ、まだですけど…でも、ほとんど読みました」


「中には難しいのもあっただろう?そう、手書きの物とか」


「ありました…なんてゆうか…とっても読みにくい文字でした」


「それも読んだか?」


「ええ、なんとなくですけど」


「そうか」


 と、一言言うと、園長は頷き嬉しそうに笑顔を見せ、


「そうか…さすが、コウエンの息子だな。トウジは」


「どういう事ですか?園長」


 首をかしげて、トウジが尋ねると、


「実は、お前に、言っていなかったのだが、あの部屋にある本は全てが医者になるための物ばかりではない。特に、お前がさっき『読みにくい』と言っていた本はな」


「そうなんですか?」


「ああそうだ。騙して済まなかった」


「じゃあ、あの本は一体…?」


「あれはな、お前の父が、コウエンが書いた物だ。そして、その中身は…『術』についての事らしい」


「えっ!あれは…そうなんですか?」


「そうだ。これは、嘘ではない。事実、そうコウエンが言っていた。お前の為に書いたと…。実は過去にあれを私も見せてもらったことがあるが…全く読めなかったよ。その時、コウエンが言っていた。これは誰もが読める物ではないと…ある種、特別な人間にしか読むことが出来ない…とな。きっとそれは、コウエンの血を引くお前の事だろうな、トウジ」


「…」


 トウジは、驚きの余り声が出なかった。


「だったら、尚更、お前はハクに色々教えてもらうべきだな、良かったじゃないか、まかりなりにも先生がいて」


 そう言って、リョカさんは、いたずらっぽく笑っていた。


「…そう、ですね。改めて、色々お願いします、ハクさん」


 正気に戻ったトウジは、そう言って、頭を深々と下げた。


 それに対しハクさんも、


「こちらこそね、よろしく」


 と、頭を下げた。


「よし…それじゃ、早速、訓練といこうか。いいな?アンジ、トウジ」


 リョカさんは、そう言って部屋を後にした。


 俺達も、


「はい!お願いします」


 と、勢いよく返事をし、彼の後に続いた。




 たった二日。


 この『たった二日』…いや、『一晩』の出来事で、俺達を取り巻く環境が、今までとは一変してしまったのは事実だった。

 

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