第67話 やるべき事
「言いたい事はそれだけか?」
「…」
「それで?結局、お前に何が出来る?アンジ、昨日、ヒトツキに全く歯が立たなかったお前に、何が出来るっていうんだ?」
「そっ、それは…」
リョカさんに問われ、俺は言葉に詰まった。
この人の言う通り、俺は昨日、何も出来なかった。
そして、その結果…
「二人共、生きて帰って来れないぞ?それを分かってて、お前は、いや、お前達は言っているのか?」
リョカさんが言っていることは、現実に起こりうる、いや、そうなる可能性が限り無く高い事実だった。
力無い二人…
生き残る可能性は、どう考えても皆無に等しかった。
俺にも、リョカさんや、タイラさんみたいな力があれば…
この人達みたいな…
「…分かりました。諦めます…」
俺は、俯きながら、リョカさんにそう答えた。
「そうだな」
リョカさんは頷きそう応じた。
「でも、」
と、俺は顔を上げ、リョカさんの顔を見ながら、
「その代わり、お願いがあります」
「なんだ?言ってみろ」
「俺に…俺にヒトツキとの戦い方を教えて下さい」
「何だと?」
「昨日…俺は自分の無力さを嫌というほど見せつけられました。確かに今のままじゃ、…無意味です。行ったところで何も出来ません…。でも、きっと俺が戦い方を知っていれば、はなしは変わってくるはずです。だから、俺に戦い方を教えて下さい。お願いします」
そう言って俺はリョカさんに頭を下げた。
「アンジ…」
隣にいるトウジが、戸惑った表情を浮かべ、俺に声を掛けてきた。
当然と言えば当然だが…
「ごめん、トウジ。だけど、これは、お前のお父さんを助けに行く為に、必要な事なんだ。今のままの俺じゃ…何も出来ない。それに、もしリョカさん達が一緒に来てくれたとしても、俺は、足手まといになるだけだ…だから」
「分かってるよ。アンジ。僕も、リョカさんとアンジの話しを聞いてて、そう思ったから。…僕達、何にも出来ないもんね」
トウジは、そう俺に言った後、
「でもさ、抜け駆けはだめだよ」
そういうと、おもむろにリョカさんに向かって頭を下げ、
「お願いします。僕も、…僕にも教えて下さい」
「お前達、本気か?」
リョカさんが俺達に向かって問い掛ける。
「もちろんです」
俺も、トウジもそう返事をした。
今更だが、お互いを守るため、トウジの父親を助けるためにはそれが最優先にすべき事なんだと、俺達は改めて気付かされた。
「いいんじゃない?リョカ」
今まで口を挟まなかったハクさんがそう言ってくれた。
「自分達に足りないこと、今やるべき事を彼らなりに考えた結果でしょ?それに」
そういうと、ハクさんはリョカさんに、何やら耳打ちをした。
すると、リョカさんは、納得したように、
「なるほどな、確かにそうかもな」
と、頷きながら、声を漏らした。そして、
「分かった。良いだろう。アンジ、トウジ。お前達に教えてやる」
俺達は、驚きながら、
「本当ですか!」
「ありがとうございます」
と、声に出した。
「だが、条件がある」
「条件?」
「そうだ」
そう言われ、俺とトウジは、顔を見合わせた後、
「なんですか?」
そうリョカさんに尋ねた。
「いいか?まず、絶対に途中で投げ出すんじゃないぞ。それと、俺達が良いと言うまで戦いに参加するんじゃない。アカツキの夜に出歩くなんてもっての他だ。これを、お前達守れるか?」
「…守れます。俺、守ります」
「僕もです」
と、俺達は、リョカさんに向かって答えた。
それを聞いたリョカさんは、一呼吸おいて、
「約束だからな」
そう念を押した。
それに対し、俺達は、
「はい」
と、返事をした。
「よし、じゃあ、アンジ、お前には俺とタイラで戦い方を教えてやる。トウジは、ハクに教えてもらうといい」
そのリョカさんが発した言葉に驚いたのは、他でもない、タイラさんだった。
「俺も教えるのか?」
「当然だろ?乗り掛かった船だ。最後まで付き合えよ。それに、もう隊長じゃないんだから、時間もあるだろ?丁度良いじゃないか。お前の訓練にもなるぞ」
「それは…確かに…そうかも知れないが」
「だったら、決まりだな」
「…分かった」
タイラさんは、しょうがないといった感じで頷き、そう答えた。
そのやり取りを聞いていた俺は、驚きながらタイラさんに尋ねた。
「タイラさん…隊長辞めたんですか?」




