第63話 驚愕
~~再び園長の部屋~~
「大丈夫かい?君達?」
一通り話し終えたハクさんが、俺達に尋ねた。
「…」
もちろん、
『大丈夫です』
と、俺達は即答出来なかった。
何故なら、ハクさんが話してくれた内容は、それほど俺達にとっては、衝撃的なことだった。
過去から現在に至るまでの経緯を、ハクさんは、分かりやすく説明してくれた。
カイエンとの戦いの話しに、俺達は興奮して聞き入っていた。
自分達の親の凄さを改めて感じた。
まあ、顔は分からないが…
それでも、その偉大さはよくわかった。
そう、この時まで、俺達は笑顔を交えながら聞いていた。
だが、そこから先の話を聞くにつれ、俺達から、笑顔が消えた。
もちろん、話していたハクさんからも、一緒にいたリョカさん、それに、園長からも。
元々、園長は、ずっとうつむいていて、一度も顔を上げることがなかった。
俺は、隣にいるトウジに言葉を掛けようとしたが、
「…」
しかし、何も言えなかった。
一体何と声を掛けたらいいのか、俺には分からなかった。
トウジは、ただ呆然としていた。
無理もない…
彼には、俺以上に衝撃的な事実だったのだから。
もし、俺がトウジの立場だったら…
そう考えると、尚更声が掛けられなかった。
「…そっ、そういえば、カイナは?あいつ病気なんでしょ?」
いい言葉が見つからなかった俺は、無理矢理話題を変えようとした。
しかし、それは逆効果だったのかもしれない。
ハクさんは、首を横に振りながら、
「いや、実は違うんだ」
と、答えた。
「違うって、どういうことですか?ハクさん」
「…彼女も、被害者なんだ」
「被害者?なんのですか?………まさか」
「そう。ヒトツキのだよ」
ハクさんの、その言葉に俺達は更にがく然とした。
「まさか…そんな…そんなことって…」
俺は、なんて間の悪い事を聞いてしまったんだ。
しかしながら、今更後悔しても仕方がなかった。
「お前達がいなくなった後、彼女もまた、ヒトツキに生気を吸われてしまったそうだ」
リョカさんが、付け加えた。
「じゃあ、そのヒトツキは?そのヒトツキを倒せば、カイナは元に戻るんでしょ?」
俺は昨夜のトウジ事を思い出した。
「確かにそうだ、が。彼女の場合は、状況が違う。何故なら、もう、夜が明けてしまっている。彼女が意識を取り戻さなかったということは、誰もそいつを倒せなかったということだ。つまり、そいつはもう、コウエンさんの所にいるってことだった。…それに」
「それに、なんですか?」
「そいつはもう、ヒトツキではない」
「ヒトツキじゃない?」
リョカさんの言ってる意味が分からなかった。
「そう、彼女の生気を吸ったヒトツキはヒトツキじゃなくなったんだ。…さっきの話の中に、『ヘイシ』って出てきたの覚えているかい?」
ハクさんにそう聞かれ、俺は頷きながら、
「もちろんです」
と、答えた。
「そのヘイシっていうのは、ヒトツキじゃないんだ。そして、もちろん人でもない。…あいつは、ヒトツキが進化したものなんだよ。見た目もほとんど人とかわりない。そして、時に狂暴な姿を見せる。その強さはヒトツキの比なんかじゃないんだ」
「ハクさん…まさか…」
「そのまさか、だよ。彼女の生気を吸ったヒトツキはそれになった」
「…」
目の前が真っ暗になったよな気がした。
そして、そんな俺に、ハクさんが、
「そいつは、ジンさんに向かって名乗ったそうだ。そいつの名は、…『ホウキ』」
と、言った時、突然部屋の入り口の扉が開き、
「ホウキ…だと?」
驚いた顔をして、扉を開けた人物が、部屋の中に向かってそう問い掛けた。
「なんだ、盗み聞きか?」
「まさか!いや、…そんなつもりはなかったんだが。その…部屋に入る機会を逃してしまって…そのままつい…申し訳ない」
「どこからだ?どの辺から聞いていた?」
「…彼らの生い立ちの話し、くらいから」
「おいおい、肝心なとこ、全部聞いてるじゃないか。…全く、盗み聞きなんて趣味が悪いぞ?隊長さんよ!」
「本当に申し訳ない」
そう言って深々と頭を下げた人物。それは、アンジの目標とする人。
シシカドのタイラ隊長に他ならなかった。




