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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第三章
61/211

第61話 困惑

  ~~同じ頃~~


  あの闇に包まれた部屋の中で、静かに笑う声が響いていた。


  もちろんその主は、コウエンに他ならなかった。


  「実に愉快…実に愉快だ。シュウキよ、そう思わぬか?」


  「もちろんでございます。コウエン様」


  そう答えるシュウキは、コウエンの座る椅子から、少し離れた場所に立っていた。


  そして、その傍らには、もう一人…


  表情なく立つ男がいた。


  「…もう一度、名を教えてはくれぬか?」


  コウエンは、その男に対してそう尋ねた。


  「…ホウキ」


  と、その男は、短く答えた。


  「ホウキか…ホウキ…ホウキ、良い名だ」


  満面の笑みを浮かべ、数回頷きながら、コウエンは、そう繰り返した。


  もちろんここは、明かりの無いあの部屋。


  コウエンの表情など普通の人々に見えるはずもなかった。


  しかし、今は逆にそれが見えていない者は、この部屋の中には存在しなかった。


  「…経緯は違えども、同胞が増えるのは、嬉しい事だ。なあ、シュウキよ」


  「…!?」


  その言葉と、コウエンの凍てつくような視線にシュウキは凍りついた。


  自分達が、あの街からここへ戻って来た時、既にコウエン様は就寝されていたはずだ。


  そして、先程起床された。


  それから間もなくして、私をこの部屋に呼ばれた。


  その間、誰とも接触されていなかったはずだ。


  それなのに…


  「どうした?シュウキよ?」


  「いえ…」


  「この私が何も知らないとでも、思ったか?…言ったはずだ。あの街にも私の手の者がいるとな。それに、あれは、この私が生み出した物…。離れていようとも、感じる事は出来る。どうなったかをな…」


  シュウキは、青ざめ、


  「申し訳ございませんでした。あまりにも、不出来な者であったので…つい…」


  そう言って、深々と頭を下げた。


  「…まあ良い。その事は、忘れるとしよう…、ホウキを連れて帰ってきたことに免じてな」


  「感謝致します。コウエン様」


  「礼ならホウキに言うがいい、シュウキ」


  「…そのようで」


  シュウキはそう言って、頭を上げた。


  「さて、ホウキよ」


  コウエンは、シュウキの隣に立つ男に声を掛けた。


  「なんだ?」


  「ホウキ!言葉に気を付けよ!」


  と、語気を荒げたのはシュウキだった。


  「まあ、良いではないか、シュウキよ」


  「しかし、コウエン様」


  「この者は、お前達とは、違うのだ。…それに、他にも口の悪い者がおるであろう?」


  「…確かに、そう…ですが」


  「ならば、少し静かにしておれ」


  「…そう申されるのであれば」


  シュウキは、口を閉ざした。


  「さて、ホウキよ。私は、お主に興味が尽きない…」


  「俺は別に、あんたに興味はない」


  と、ホウキは無愛想に答えた。


  「…そうか。だが、それも仕方のないことか…では、手短に、私の要件だけ、済ませようと思うのだが…」


  そう言いながらコウエンは、じっとホウキの顔を見た。


  対するホウキも、臆することなく、その目を見据え、


  「…いいだろう。では、『手短に』な」


  と、答えた。


  「そうか。では、…右手を貸してくれぬか?」


  「右手?」


  「そう、右手だ。お主の右手で、この手を握ってくれぬか?」


  そう言いながら、コウエンは、ホウキの前に自分の右手を差し出した。


  「おかしなことを…これで良いのか?」


  ホウキは、コウエンの右手を握った。


  「すまないな、ホウキ」


  コウエンがそう言った直後、ホウキは体に異変を感じた。


  「貴様…何…を」


  「動くな、ホウキ、直に済む」


  コウエンの言葉には、先程までの温かさはなかった。


  よく見ると、ホウキの右腕の中を何かが進んでいた。


  それは、繋いだ右手から始まっている。


  彼の体の中をコウエンの管が伝っているのだ。


  その光景はお世辞にも気持ちの良いものではなかった…


  手から腕、更に肩へ、そして、それは更に先へと進んで行く。


  「そろそろか」


  コウエンが呟く。


  ホウキは、口を開け震えていた。


  その光景をシュウキは静かに見守っている。


  そして、


  「…成る程…そういうことか」


  そう呟くとコウエンは右手を離した。


  「…二人共、下がって良いぞ」


  コウエンは、シュウキ達にそう言うと、何かを思案し始めた。


  「では、失礼致します、コウエン様」


  シュウキは、頭を下げ、そう言った。


  そして、驚くことに、


  「…失礼致します、コウエン様」


  隣にいた、ホウキもコウエンにそう告げた。


  コウエンは頷き、退室をうながしたのだった。


  『一体どういうことだ?』


  困惑したまま、シュウキは部屋を後にした。

 

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