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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第二章
52/211

第52話 退却命令

  「隊長どうしますか?」


  カイのその問い掛けに、タイラは我に帰る。


  「ああ」


  あのシュウキという回収者は一体何をやっているんだ。


 仮にもあれは彼の同胞のはず…


  それを自らの手で殺めるとは。


  タイラにはシュウキの行動が理解出来なかった。


  「隊長!」


  今度はリュウに呼ばれた。


  隊員である彼らが待つもの、それは隊長であるタイラの突撃命令であった。


  もちろんそれは、彼にも分かっていた。


  シュウキの手により先程まで二十体以上いたヒトツキが、今は五体のみ。


 シュウキを入れても六体しかいない。


  全部とまではいかなくとも、数体は倒せるはずだ。


  だが、タイラはそれを躊躇していた。



  『果たしてそれは、得策か?…』



  そう思うのには理由がある。


 なぜなら、ヒトツキだけならともかく、あちらにはシュウキがいる。


 こちらが無傷という訳にはいかないであろう。


  彼の強さは生半可なものではないと思わせるには十分な程、あの一突きはタイラにとって衝撃的だった。


  それに、もし自分達が全滅してしまうような事になれば、今日得た情報は、全て水の泡となってしまう。


  それに…


  彼は、隊員達をちらりと横目で見る。


 そして脳裏にシュウの顔が浮かぶ。


  周囲にシシカド隊の気配が無い今、玉砕覚悟で突撃することは、余りにも無謀過ぎると、彼は考えた。


  「隊長!」


  今度はイスミがタイラを呼ぶ。


  「お前達…」




  タイラは意を決し、隊員達に告げる。


  「…一旦、退くぞ」


  「!」


  その言葉に隊員達は耳を疑った。


  「い、今、なんと?」


  イスミが驚きを隠せない表情で問い返す。


  「退却する、と言っているんだ!これは…命令だ」


  「なっ、正気ですか、隊長!冗談は止めて下さい!」


  「そうですよ!隊長らしくありません!」


  「…納得出来ません。…理由を…理由を教えて下さい」


  最後に意気消沈した様子で、イスミがタイラに問い掛けた。


  当然といえば当然だ。


 先程までの意気込みとはまるで正反対の命令…


  理由なく納得しろ、というのは無理がある。


 もちろんそれは、彼にも分かっていた。


  「…俺達が無事に帰れる保証が無いに等しいからだ。やってみなければ分からない、とお前達は思うかも知れない。俺も、さっきまではそう思っていた。だが…その可能性は限りなく低いだろう。あのシュウキとかいう奴がいる限りな」


  「ではシュウは?シュウはどうするのですか?まさか…見捨てるつもりですか?」


  イスミが声を震わせながら、タイラに詰め寄る。


  「確かに、今はそうなるかもしれない。しかし、俺はシュウを見捨てるつもりは無い。むしろ逆だ」


  「逆?」


  「そうだ。お前達も見たはずだ。奴がやった事を」


  「それは…もちろんです」


  皆一様に頷く。


  「だよな。奴はあの『ミツキ』?とかいう仲間を殺した。その後の事を思い出してみるんだ。奴の手には何があった?」


  「!!」


  隊員達は顔を見合わせた後、タイラを見る。


  「そう、エンセキだ。つまり、『ミツキ』…『回収者』を倒せば、エンセキをこちらの手に入れる事が出来る。これがどういうことか分かるか?つまりその中にある、人の『生気』をこちらに奪還することが出来るのだ」


  「た、確かに」


  カイが声を上げる。


  「しかし…悔しいが、今の俺には奴を倒せる力はない。だが、俺はその情報を得る事が出来た。これを無駄には出来ない」


  「…」


  隊員達は無言で頷いた。


  「それに、俺達は新しい力を得た」


  その言葉で彼らは何かを思い出した。


  「『アカアシ』のリョカ。あいつならそれをやり遂げる事が出来るはずだ。…だからこそ、この場は一時退却する」


  タイラはそう言い切ると、再び隊員達の顔をしっかりとみる。


  「…分かりました。隊長の命令に従います。な?」


  カイはリュウとイスミに同意を求めた。


  「はい」


  と、二人は返事をする。


  「済まない」


  タイラは彼らに頭を下げた。


「止めて下さいよ。隊長」


  カイは慌てて彼を止める。


 しかし、タイラは頭を上げようとしなかった。


  暫くし、頭を上げたタイラは、


  「実はもう一つお前達に言っておく必要がある。…俺は、今日限り、隊長の座から退くつもりでいる」


  隊員達はその言葉に再び言葉を失った。

 

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