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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第一章
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第4話 不安

  トウジが言ったことは、にわかに信じられないことだった。


  「…嘘だろ?」


  俺の問い掛けにトウジは顔を横に振って答える。


  「嘘じゃないよ。でも、やっぱり信じられないよね。こんな事」


  確かに信じられない。が、他の誰でもない。トウジの言う事だ。


  「信じるよ。お前が嘘つけない性格なのも知ってるから…」


  俺がそういうと、


  「ありがとう」


  トウジは安堵の表情を浮かべた

  「だけど、僕自身まだ、半信半疑なんだ。あれは悪い夢だったんじゃないかって。だから今日、それを確かめたいんだ。アンジと一緒に」


  「…そういうことか。…分かった。一緒に確かめよう」


  俺は、頷いてそう答えた。


  「でも、確かめたらすぐ帰るぞ。で、危なくなったら直ぐに逃げるぞ。いいな?」


  俺は続けてそういった。もちろん、と言わんばかりにトウジは無言で頷いた。それを見て、俺は更に続けた。


  「じゃ、とりあえずここからだと園まで遠いから、もう少し園の近くまで戻ろう」


  目的がはっきりした今、いつまでも公園にいる必要もない。


ここからだと俺達の園まで歩いてゆうに3、40分は掛かる。


ましてや今夜はアカツキの夜…


  アカツキの夜は決まって街灯が点かない。


その為、夜道は暗くなる。


それにトウジが見たと言う得体の知れないものの事が気になる。


何かあった時の事を考えると、あまりにも帰る道のりが遠い。


  「そうだね」


  トウジもそれを理解し、二人で公園を後にすることにした。


気持ちが焦る。


空にはまだアカツキは出ていなかった。


しかし、あれほど早く見てみたいと思っていたはずなのに、トウジの話しを聞いた今となっては、まだ出て来るなと、願っている自分がいた。


  そんなことを思いながら公園を出た時、ふいにトウジが「あれ?」と声をあげた。


  「どうした?」


  俺はすかさず聞き返す。


  「あそこに何かある」


  そう言いながらトウジが数歩先の地面を指した。


確かに何かある。


地面の上で何かが光っている。


近づいてみると、それは親指の爪ほどの大きさで、黒くつやのあるガラス玉のようなものだった。


しかし、それは今までに見たことがないほど、神秘的であった。


  興味が沸いたのか、トウジがそれを拾いあげる。


  「なんだろ?こんなの来る時気付かなかったね」


  しげしげと見た後、それを俺に手渡しながらそう言った。


  「そうだな。俺も気付かなかった」


  受け取りながらそう言った。


だが、実際は気付けなかったのかも知れない。


公園へ来る時は、アカツキへの期待で、俺は空ばかり見ながら来たのだから。


  アカツキ…俺は、その言葉で現実へと引き戻された。


そうだ。


今は急いで帰らなければいけなかったのだ。


俺の手の平にある黒いガラス玉を見つめながらそう思った。


  とにかく今は急ごう。


これは帰ってから、またゆっくり見ればいい。そう思い俺は、それを強く握りしめた。


その時、


  「痛っ」


  握りしめた手から肩にかけて強い電気を流されたような衝撃が走り、俺は思わず声をあげた。


そして、その反動で、ガラス玉を地面に落としてしまった。


  「アンジ、大丈夫?」


  心配そうにトウジが俺の方を見ている。


  「ああ。大丈夫。ちょっと驚いただけだ」


  俺は強がってそう言った。


  「…ならいいけど」


  そうは言いながらまだ、心配そうにこっちを見ていた。


  「本当に大丈夫だって。とにかく今は、先を急ごう。時間がない」


  そういうと、トウジも今の状況を思い出したように、


  「そ、そうだったね。じゃ、急ごう。でも、それは持って帰ろうよ」


  「ああ。そうだな」


  俺がそう言うと、トウジは俺の足元からそれを拾いあげた。


拾いあげたまま、トウジが固まっている。


  「どうした?」


  おかしく思い、俺がそう聞くと


  「ねぇ、アンジ…このガラス玉…透明になってる…」


  「はぁ?そんなわけ…」


そこまで言って俺は絶句した。


トウジの手の平にあるのはさっきまでの黒いガラス玉ではなく、ただの透明なガラス玉だった。


  「なんで…」


  俺は訳が分からなくなっていた。

 

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