第38話 赤い瞳
「あれは14年前のある日の事だった…」
園長は、遠い目をして、話し始めた。
「ガクと、コウエンはある所へ出掛けていた。ある所とは…カイエンの墓へとな。お前達も知っていると思うが、カイエンはコウエンの兄…。先の戦いでは敵と味方に別れて戦ったのだが、…血を分けた兄弟だからな。彼が亡くなった日に、毎年コウエンは必ず足を運んでいた。そして、ガクもそれに付き合っていた。もちろん、複雑な気持ちもあったと、思うがな。まあ、本人に尋ねた事がないから、本当のところは、分からないがな」
「すると、その日は、あの戦いが終幕した日と、同じ日だった…ということですね」
ハクが言うと、園長は無言で頷いた。
「そう。そして、今あるあの新しいアカツキが生まれた日、でもある」
「その日に何が?」
「…ガクとコウエンは、例年と同じ様にそこへ向かった。しかし、戻ってきたのは、ガクだけだった。彼は傷を負っていた。そして、こう言った。…『まずい事になった』とな。そして、その日はそれ以上何も語らなかった…」
園長は、一つ間をおいて、話しを続ける。
「数日後、ガクは、私とエイダイ、それにセナを呼び出し、あの日の事を話してくれた。彼が言うにはこうだ…。あの日、彼らはいつものようにカイエンの墓前に立っていた。しばらくすると、コウエンが妙な事を言ったらしい。『誰かが自分を呼ぶ声が聞こえる』と。しかし、それはガクには聞こえなかったそうだ。気のせいではないかと、コウエンに彼は言った。だが、コウエンは『確かに聞こえる』と言い張り、声の出所を探し始めたそうだ。仕方なくガクもな。しかし、彼は後悔していた。一緒に行動しなかったことをな。…コウエンは声の出所を探し出した。そこは、カイエンの墓だったそうだ。そして、コウエンはガクを呼んだ…」
再び園長は、一呼吸おいた。
リョカとハクは無言のまま続きを待った。
「『ガク!ここだ!この中から聞こえる!』と、コウエンに呼ばれ、彼は振り返った。コウエンは墓を背にし、ガクに向かって、手招きしていた。ガクはそれに応じ、コウエンの方へ近づこうとした、その時…『アイツ』がコウエンの背後に現れたそうだ………ヘイシがな」
その名前を聞いたリョカは、
「ヘイシ…ヘイシだと!?」
と、驚くと同時に立ち上がった。
「あの時、その話しを聞いた私達も同じ様に驚いた。しかし間違いなく、あのヘイシだったと、ガクは言っていた。まあ、とにかく座りなさいリョカ」
「なんて事だ…しかし、アイツはあの日…」
そう呟きながら、腰を下ろした。
「そう、あの日、カイエンと一緒に討伐したはずだった。何故、生きていたのかは、誰にも分からない。が、実際、コウエンの背後に現れたそうだ。そして、それに気付いたガクはコウエンに向かって叫んだ。そのことを知らせる為にな。『コウエン、離れろ…』、その言葉と同時に悲劇が起きた。…奴らが人から『生気』を奪う方法は、知っていると思う」
「はい、もちろん」
ハクが、頷き答える。
「…ヘイシは、あの管を伸ばし、コウエンの背中に突き刺したそうだ。そして…」
「ま、まさか、コウエンさんの『生気』が奪われたのですか!?」
ハクがそう聞くと、園長は首を横に振り、
「いや、違う。その逆…と、でも言えばよいのか分からないが、あろう事か、ヘイシは『何か』をコウエンの中へ逆流させたそうだ。その有り得ない光景に、ガクは何も出来なかったらしい。しばらくして、我に帰ったガクはコウエンの元へ走った。だが…遅かった。『ガク…イズルを…捜して…』コウエンが、彼に向かって、そう言ったとき、ヘイシの管が抜かれた。そして、コウエンは…私達が知っているコウエンでは、なくなったそうだ…」
話している園長の体が奮えていた。
「兄と同様に、瞳が赤く染まっていた…と、ガクは言っていた。しかも、コウエンはヘイシと共に立ち去ろうとした。それを引き留めようとしたガクはヘイシに傷を負わされた。そして二人はその場から姿を…消したと」




