第34話 再会
『この門を開けて、外へ出たのは何時間前の事だったんだろうか…』
自分の身長よりも高い、鉄格子状の門の取っ手に手を掛け、建物の方へ押し開けながらアンジはそんなことを考えていた。
『夢であって欲しい…』
心のどこかでまだ、そう願っている自分がいた。
「どうぞ」
門を開け、俺達はリョカさん達を招き入れる。
「ありがとう」
ハクさんが言った。
この二人から聞いた話しは、そう心の中で思いたくなるような事ばかりだった。
静まりかえった中庭を建物に向かって歩いていく。
辺りには四人の足音だけが響き渡る。
向かう先には建物の玄関がある。
あの扉の向こうにいる園長の口からは一体どんな真実が告げられるのだろうか。
不安のあまり、玄関が遠く離れていくようにさえ感じた。
そして、ちょうど中庭の中間を越えた当たりの事だった。
不意に玄関の扉を誰かが内側から力強く開けた。
突然の事に驚く俺達に向かって、その人は呼び掛けてきた。
「アンジ、トウジ、お前達なのか?」
聞き覚えのある声だった。
「はい、園長。俺達です」
俺がそう答えると、声の主、すなわち園長がこちらへ向かって駆け寄って来た。
といっても、お世辞にも痩せているとは言えない体型のため、そんなには早くない。
そこで、俺達は園長に向かって歩み寄っていった。
そして、俺達は園長の前まで来ると、歩みを止めた。
「園長…」
バシッ。
俺がそう言った時には強烈な平手打ちが飛んできた。
もちろん、トウジにも同じように。
「どれだけ心配したと思っているんだ!」
今まで見たことのない程、怒った顔をして、園長が怒鳴る。
「ごめんなさい」
ほほの痛みを堪えながら、俺達は園長に謝った。
怒鳴られて当然のことをしたのだから。
「ごめんなさい、ごめんなさい…」
俺達は、何度も謝った。
「もう許してあげて下さい。この子達も十分反省しているみたいですから」
見かねたハクさんが園長に口添えしてくれた。
「誰だ?あんた達は?」
そう言いながらリョカさん達の顔を見た園長の顔が驚きの表情で固まる。
リョカさん達は、やっぱりな、というような表情をしていた。そして、
「あんた、ジンさんだよな?」
と、リョカさん。
「ジンさんですよね?」
と、ハクさんは言った。
「お前達…」
そこまで言いかけた時、園長は、ハッとなり、俺達の方をちらりと見た。
「いや、あなた方は、どちら様ですか?どうやら私の事をお知り合いと間違われているようですが」
明らかに、慌てた様子で園長はそう言った。
「危ない所を助けてもらったんです。で、そのままここまで送ってもらいました」
と、トウジは園長に説明した。
「…そうでしたか。それはそれは。ありがとうございました。では、もう大丈夫でございますので、どうかお引き取りを…」
そう言って、会釈をすると、俺と、トウジを連れて中へ戻ろうとした。
「え、園長」
俺達の背中を押して中へ入ろうとする園長に、戸惑いながら俺は言った。
「いいから、さぁ、中へ入るんだ」
そう言いながら園長は、さらに強く俺達の背中を押す。
そして、玄関の前まで来た時、
「いつまでその子達に黙っているつもりだい?ジンさん。本当の事を」
突然、リョカさんがそう言った時、背中を押す園長の手が止まる。
「…何の事でしょうか」
俺達の方を向いたまま園長はそう言った。
「とぼけても無駄ですよ。ジンさん。僕達がいろいろとその子達に教えてしまいましたから」
「…何を話したんですか?」
そう言いながら園長はリョカさん達の方へと向き直る。
「もちろん『アカツキ』について少し」
ハクさんは薄い笑みを浮かべてそう言った。
「そう…ですか」
園長はそう言うと再び俺達の方へ向き直り、
「さあ、中へ入りなさい」
玄関の扉を開け、園長は俺達にそう言った。
「園長…」
俺はうつむいて、そう呟いた。
やはり真実は教えてもらえないのか。
そう思った時、
「お前達も入って、お茶でも飲んでいけ。…リョカとハク」
と言って、園長は二人を招き入れた。
「では、お言葉に甘えて」
リョカさんは笑顔で従った。




