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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第一章
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第3話 トウジの秘密

  アカツキが出て来るまでの間、俺達はそのまま公園で待っていた。


特に何をするでもない。


たまに話しをしたりするが、それも長くは続かない。


それも仕方のないこと。


 ほとんどずっと一緒にいるのだから。


お互いの事はよく分かっている。


今更取り立てて話す事もない。


 トウジもそれは分かっているはずだ。


だから、あまり話しかけてこない。


彼もまた、沈黙をさほど苦痛に感じてはいないだろう。


 ただ、俺は今、一つだけ疑問に思っていることがある。


隣を見るとトウジはまだ空を見上げていた。


いつもと変わらぬ月の浮かぶ空を。


  「なんだよ。気持ち悪いなぁ」


  視線に気付き、トウジがそう言ってきた。


  「いや、別に」


  慌てて俺は視線を前に戻し、そう答えた。


  「アンジはわかりやすいんだよ。何か聞きたい事があるんでしょ?」


  「そ、そんな事ねえよ。別に…」


  とは言ったものの、実際は、ある。どうやってごまかそうか考えたが、


止めた。


素直にトウジに自分の疑問をぶつけてみることにした。


  「なあ、トウジ」


  「なに?」


  「俺さ、気になってる事があるんだ。」


  「だから、何を?」


  「…昔から、悪い事、危ない事…まぁ、後から園長に怒られるような事って、だいたい俺がやろうって言い出して、トウジを無理矢理付き合わせてたよな」


  「確かにそうだね。だいたいっていうより、ほとんど全部だけどね」


  笑いながらトウジがそう答える。


  「そうなんだよ。俺が悪い子。お前はいい子。皆そう思ってるし、実際そうだと俺も思ってる…」


  「…話しが見えないんだけど?何が言いたいの?」

「じゃあ聞くけど、何で今日こうやって、『園を抜け出そう。アカツキを見て見よう』って言い出したんだ?普通、逆だろ?俺が言い出すような事じゃないか。なのにお前の方から言い出すなんて、どう考えても変だろ?何か…あったのか?」


  予想していた質問と違っていたのだろうか。


トウジが驚いた表情をしていた。


しかし、それはほんのわずかな時間だけだった。


すぐにいつもの表情に戻ると、


  「アンジと二人で、冒険してみたかったんだ…」


  と、トウジは呟いた。


  「何言ってるんだよ。今までだって、二人で散々色んな事やってきたじゃないか?」


  「…そうだけど、これは、僕が見てみたい事、知りたい事なんだ。いつもみたいにアンジに誘われてやるんじゃなくて、アンジが僕に付き合って欲しかったんだ。…一人じゃ怖いから」


  そこまで言うと、トウジはうつむいてしまった。


  「まぁ、確かに今日はアカツキの夜だしな。さすがに俺でも一人で外に出てみようなんて思わないし、お前を誘えないもんな」


  「ごめん。でも、付き合ってくれてありがとう」


  トウジはうつむいたままだ。


  「ま、いいさ、今まで散々付き合ってもらったんだから、たまにはな。でも、それだけか?外に出てみたかっただけなのか?冒険はアカツキを外で見る事で終わりなのか?」


  「いや、違うよ…」


  そこまで言うとトウジは暫く無言になった。


そして、顔をあげると、意を決して話しだした。


 

「僕の知りたい事は他にあるんだ。でも、僕の言う事…信じてくれる?」


  「ああ。もちろん」


  俺は頷いた。それを見て、トウジは話しを続けた。


  「この前のアカツキの夜にね、…僕、見たんだ」


  「見たって…何をだよ?」


  「…わからない」


  「お前が言ってることが分からないよ」


  「だって、本当に分からないんだよ。ただ…」


  「ただ?」


  「…ただ、あれが人じゃないのは間違いないんだ」


「なんでだよ?」


  「だって………顔が、無かったから…」



  「…」


  俺は、思わず絶句した。

 

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