第28話 過去
俺達四人は再び園に向かって歩き出した。
もちろん、空にはまだ当然のようにアカツキが浮かんでいた。
「アンジ、君はいつから、あのアカツキが空に出現するようになったと思う?」
「えっ?それは…ずっと昔からじゃないんですか?」
ハクさんの唐突もない質問に俺は思ったままのことを返した。
「そう思うよね」
「…違うんですか?」
そう言ったのはトウジだった。
「確かにあれがいつから出始めたのかは、僕も知らないんだよね。ただ…」
「ただ?」
「ただ、アカツキは今から20年前に一度消滅した…はず…なんだ」
ハクさんの話しを聞いて、俺とトウジはお互いに顔を見合い、首を傾げた。
「どういうことですか?『はず』って?」
不思議に思った俺は、ハクさんに尋ねた。
「まあ、そう焦らないで。確かに、アカツキは一度消滅したんだ。だからもちろん、暫くの間、夜空にあのアカツキが浮かぶことは無かった。おかげで、平穏な夜が人々に訪れていたのも事実なんだ」
「それじゃ、いつからまた出始めたんですか?」
トウジの質問は当然だった。
「…そうだな、あれは確か…14年位前からだったかな。その頃はまだ今みたいな周期じゃなくて、半年に一度あるかないか位だった。でも月日が流れるにつれ、その周期も段々と短くなってきたんだ。もちろん、みんなそれを感じていたし、不安も広がった。『またあの赤い月夜が戻って来た』ってね…」
「…でも、過去に一度消滅させる事が出来たんですよね?」
「そう」
俺の問い掛けにハクさんは短く答えた。
「だったらまた…」
「それが無理なんだ」
「えっ?なんでですか?」
「過去にアカツキを消滅させる事が出来たのは、それを出現させていた男を見つけ出して、倒したからなんだ。しかし、まだ今回はその首謀者を見つけ出せていない」
「じゃあ、その人を見つけ出せれば…」
「いや、それでも」
トウジの言葉を遮ったハクさんは、そう言いながら首を横に振った。
「駄目なんですか?」
俺も念を押して尋ねる。
「そうなんだ。仮にもし、その首謀者を見つけ出したとしても、倒す事は出来ないんだ」
「倒せないなんて…でも、過去には出来たんですよね?ハクさん?」
「もちろん。さっきも言ったよね。でも今とは状況が違う。あの人達がいたからね……。君達は『シキ』って知っているかい?」
そう尋ねられた俺達は、当然、首を横に振った。
「なんですか?その『シキ』って?」
「アカツキを消滅させる為、その首謀者を倒す目的で作られた四つの道具の事なんだ。でも、それは誰もが使える物ではなく、特別な『力』を与えられた人達にしか、使いこなす事が出来ないんだ。当時はそれを使いこなせる人達がいた。そして彼らがその目的を果たしてくれた…」
「じゃ、じゃあ、またその人達にお願いして…」
「いや、今はもう無理なんだよ。何度も言うけど、過去の話しなんだ。そう、20年も前のね。彼らは当時で30歳前後だった。だから今はもう…。それに、彼らはすでに『力』を失ってしまっているんだ」
そこまで聞いた俺は、力無く呟いた。
「じゃあ、もうあのアカツキを消滅させる方法は無いって事なんですね」
俺達は、この先もずっとあのアカツキの恐怖に怯えながら暮らしていかなければならないのか。
ずっと…ずっと…。
「いや、そう悲観する事でもないさ」
ハクさんは落ち込む俺達にそう言った。
「何故そう言えるんですか?だって他に方法は無いんでしょ?」
トウジは、興奮気味にハクさんに喰って掛かった。
「まあまあ、抑えてトウジ君。話しには続きがあるんだよ」
「そ、そうなんですか。すいませんでした」
トウジは慌てた様子で謝った。
「いいよ。まあ、とにかく、ここからが大事なんだ」




