第24話 アンジのアザ
「アザ…ですか?」
アンジはとっさに自分の首元を右手で隠し、リョカに問い返した。
「ああ、そうだ。そのアザだ。隠しても無駄だ。さっき部屋の中からこっちを見ていた時にそれが見えていたからな」
「ねぇアンジ、アザって何の事?」
今まで横になっていたトウジが体を起こし、二人の会話に割って入ってきた。
「アンジの首にアザなんてあったっけ?僕見たこと無い気がするけど?」
「いや…」
アンジは言葉を濁す。
トウジは間違った事を言ってはいない。
なぜなら普段一緒にいる時にこのアザは無いのだ。
このアザは決まった日にだけ浮かび上がってくる。
しかも一日中ではなく決まった時間帯だけだ。
だから、その時にはなるべく一人でいるようにしているし、一緒にいても、これは隠すようにしていた。
今までずっと。
もちろんこれが何を意味するのか自分ではわからなかったし、知るのが怖かった。
「君はトウジ…だったよな?」
「は、はい」
突然リョカは俺ではなく、トウジに話しかけた。
「じゃ、トウジ、君がそれを見たこと無いのは無理もない」
「えっ?なんでですか?」
「そのアザは『決まった時だけ』出ているはずだからな。そうだろアンジ?」
「…」
俺は黙っていた。
「そうなの?アンジ?」
トウジはなぜか心配そうに俺の方を見ていた。
「…」
俺は答えなかった。すると、
「じゃ、リョカさん。そのアザっていつ出てくるんですか?」
トウジは質問の矛先をリョカに向けた。
「さっきも言ったが『決まった時』だ」
「『決まった時』?」
リョカは「そうだ」と、言って頷いた。
「『決まった時』…」
そう呟きながらトウジは考え込んだ。
そしてなにかに気付き俺の顔を見た後、すぐにリョカの顔を見る。
リョカは何も言わず一つ頷く。
「アカツキ…ですか?」
「そうだ、トウジ。あの月が出ている間だけアンジのそのアザは浮かび上がっているんだ」
「なるほど…、だから僕、今までずっと気付かなかったんだ」
リョカの答えに納得した様子でトウジは数回頷いていた。
しかし、トウジの中に別の疑問が湧いてくる。
「…でも、なんでそんなものがアンジにあるんですか?」
トウジはリョカに抱いた疑問をそのままぶつけた。
「いいところに気が付いたなトウジ。そう、そこなんだ。そのアザが何故アンジにあるかなんだ。アンジ、何故か知ってるか?」
と、聞かれ俺は首を横に振った。
逆に俺が知りたい位だった。
「だよな」
リョカは俺の答えがわかっていたかのように、溜め息混じりにそういった。
「だから、お前の親に会えば分かると思ったんだが…」
「無理、ですね」
そう答えたのはトウジだった。
「さっきも言いましたけど、僕達親が誰なのか知らないから…。僕達には親替わりの園長しかいないんで…」
「ああ、聞いた。親替わりの園長しかいないんだったよな。……?親替わりの園長…親替わりの園長か!アンジ。もしかして、そのアザの事、園長は知っているんじゃないのか?」
「…」
「どうなんだアンジ?」
「…」
「アンジ…そうなの?」
「…はい」
二人に問われ、俺は頷きそう答えた。
「何故黙っていた?」
「それは………園長と約束したから…このアザのことは二人だけの秘密だって…誰にも言っちゃいけないって…だから…」
「…ってことは、園長は何かを知ってるってこと?」
トウジが俺に尋ねてきたが、「わからない」としか俺は答えられなかった。
しかし、リョカは違った。
「そうか。だが、充分だ。園長が何かを知っているかもしれない事が判っただけでも、俺にとっては大事なことだからな。…よし、そうとわかれば…」
リョカは一人納得した様子で踵を帰すと、俺達を置き去りにし、急いでその場を後にした。
俺達が呆然と見守る中、リョカが向かったのは彼の部屋がある建物だった。
一体何をする気なのだろうか。




