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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第十章
199/211

第199話 園長の心配事

「他にナガレはいないだろ?お前だよ。ほら、早く行けよ」


 リョカさんにそう言われ、彼女は、ためらいながらも俺の隣まで足を進めて来た。


「なっ、何さ。私にも何かあるっていうのかい?」


 緊張した様に、ナガレさんがそう言うと、園長は落ち着いた口調で、


「ああ、もちろんだとも。君には、これを受け取って欲しい」


 そう言うと、今度は足元ではなく、机の引き出しから何かを取り出し、それを机に上に置いた。


「これは、一体……」


 そう言いながら、ナガレさんはそれを手に取り確認している。


 両手で持つと小さく感じるが、片手で持つには少し大きい。


 装飾は無く、光沢のない黒一色。


「園長、それ、何ですか?何に使うんですか?」


 と、ナガレさんではなく、俺がそう尋ねた。


「それはな、口元を隠すものだよ。顔の下半分だけを覆う半仮面……といえば伝わるかな、ナガレ、アンジ」


「半仮面、ですか」


 俺がそう言うと、ナガレさんは不機嫌そうに、


「へぇ~、それで?何で私に、これを渡すのさ?うるさいから口を塞いでおけってことかい?」


「ははっ。まあ、当たらずとも遠からず……。が、そう怒るな、ナガレ。先程、自分で言っていた様に、使える術は補助の術。で、間違いないな?」


「ああ、そうさ。だから何さ?」


「そこにいる、トウジが術を使える事は敵にも知れている。敵にも見られてもいる。今更隠す必要はない。しかしだ、君が使える術の事は、敵には知られていない。知らせない、知られない方がより効果がある……と、私は考えた。そこで、それだ。その半仮面を装着した状態で術を唱えても、声が漏れない様になっている。あっ、術以外の声もだがな。ナガレよ、君の術はアンジ達を助けるには非常に重宝出来るものの様だ……かわいげの欠片もないような代物だが、受け取ってくれるかな?」


「そういう事なら。ありがたくいただくよ。どこまで力になれるかは分からないけど、私に出来る範囲の事は、精一杯努力するよ、それでいいよね?」


 ナガレさんの問いに、園長は微笑み、


「それで十分。頼んだぞ、ナガレ」


 ナガレさんは、「はいよ」と言いながら、後ろに下がった。


 その時、俺は、ふと我に返る。


『そういえば、俺、いつまで園長の前にいるんだ?俺も、既にコオロキをもらっているじゃないか。いや、そもそも戻る機会を逃しただけかもしれない…………さりげなく、ナガレさんの後を追う様にして、トウジのところに戻ろう』


 踵を返し、


「いやぁ、良かったですね、ナガレさん」


 と、口にしながら、一歩目を踏み出そうとした瞬間、


「まてまて、アンジ。どこへ行くつもりだ?」


 園長に呼び止められたので、俺は素直に、


「えっ?だって、俺の分はもう終わったはずですよね?だから、そろそろ、下がろうかなと思ったんですけど。何かおかしいですか?」


「何を言っているんだ。まだ、終わってないぞ、アンジ。まあ、次で、一先ず最後になるがな」


「次で、最後……」


 俺が復唱すると、園長は頷いて、


「そうだ。アンジとソウ…ジ、前に来なさい」


 と、声を掛けた。


 俺はその場で園長の方へと向き直る。


 ソウジは、


「園長。ソウジでも、ソウゴでも、ソウテンでも園長の呼びやすいヤツでいいですよ」


 いつもの笑顔で、軽口を言いながら俺の隣へと彼は進んできた。


 そして、


「それに、俺の刀……あのままがいいんですけどね。いやぁ~~、あれが、最高!!なんですけどねぇ」


「別に、刀をどうこうするつもりなど無いよ、ソウジ。心配するな」


「なら良かった。それじゃ、一体?」


 ソウジが園長にそう尋ねると、園長は眉間にしわを寄せ、


「二人は今も、そして、これからも、前線で戦う事になるだろう。それはきっと、一度や二度の話ではない……」


「まあ、そうだろうな。俺も、アンジも分かっているさ。なっ?アンジ?」


 ソウジの問いに俺は一つ頷いて見せた。


「私は、今更それをどうこう言うつもりもない。ただ、カイナやトウジの事も心配だが、それ以上にお前達二人の体の事を危惧している」


「心配性だな、園長は。そう思うよな、アンジ?」


 ソウジの問いに、俺は一呼吸置いて首を横に振り、


「いや、そうは思わないよ、ソウジ。きっと、園長が心配しているのは、『狂人刀』の存在があったから…………ですよね?」


 そう尋ねると、


「その通りだ、アンジ。二人とも分かっていると思うが、あの刀は、危険だ」


「確かに、あれは危ない代物だった。けどさ、三本とも俺達が片付けたはずだぜ?なあ、アンジ」


 俺は頷き、


「うん。間違いない。破壊しまたよ、園長」


 園長にそう伝えた。


 しかし、


「安心出来るのは、あれが三本『だけ』だった場合だ。が、残念ながら私は、そうは思っていない。あの刀は、今もなお、作られていると、私は考えているのだ……」


「!!」


 その部屋にいた、全員が絶句した。


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