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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第十章
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第197話 補助の術とコオロキ改

「なっ、何だよ、急に。改まっちゃって、ばっ、馬鹿だねぇ。そんな事しなくったって、手伝いくらいしてやるってんだよ。それに、先に、言っとくけど、私が出来るのは補助だよ。補助!補助の術が使えるだけだからね。あんまり高望みするんじゃないよ。いいね?」


 顔を赤くしたナガレさんが、腕組みをしながら早口でそう念を押す。


「耳を良くするやつだろ?」


 意地悪く笑い、自分の耳を指差しながらリョカさんがそう尋ねると、


「何言ってんだい。私の術は耳を良くする術じゃないよ!」


 ふざけるリョカさんを睨み返し、


「私は、術の効果で『聴力』を上げているだけだよ、分かるかい?」


「つまり?」


「私が使えるのは、補助の術だって言っただろ?そのままさ」


 ナガレさんはそう言うと、自分を指差し、


「私自身。または、他の誰か……」


 そう言いながら、俺達をゆっくりと指差し、


「……の、身体能力を一時的に強化することが出来る……そんな術さ。あくまでも、一時的。一時的だよ」


 リョカさんは、「へぇ~」と言いながら、数回頷いた後、


「身体能力ってことは、聴力以外でも……って事だよな?視力でも。嗅覚でも……だよな?」


 と、尋ねると、彼女も頷き、


「その通りさ。それ以外でもいいよ。腕力でも、脚力でもね……」


「それを、誰にでも、出来るっていうのか?」


 そう尋ねられると、彼女は首をひねり、


「誰にでも。そう、誰にでもね。ただし、一度につき一人だけだよ。一人だけ。二人も三人もいっぺんにって、いうのは無理だからね。それと、立て続けにも無理だよ。掛けた術の効果が切れてからじゃないと、次には行けないよ。忘れるんじゃないよ。いいね、リョカ?」


「いや、そこ、俺じゃなくって、アンジだろ……。なあ、ハク?」


 納得出来なという表情を浮かべ、隣にいる親友に同意を求めたのだが、彼はゆっくりと首を振りながら、


「いや、ナガレは間違っちゃいないと、僕は思うよ。だって、君は、忘れっぽいからね」


「なっ、どういう意味だよ、ハク!?」


「ん?別に、深い意味は無いよ。まあ、とにかくさ、アンジ、それからみんなも、何かあった時には、ナガレにも意見を聞くようにするんだよ。いいね?」


「えっ!?」


 ハクさんの言葉に違和感を覚えた俺達四人は、一様に顔を見合わせた。


「ハクさん、……まさか、いなくなっちゃうんですか?」


「何言ってるんだよ、カイナ。そんな訳、無いですよ、ね?ハクさん」


 不安気な顔をしたカイナをなだめ、ソウジが尋ねた。


 彼の表情もまた、強張っていた。


 トウジも同様だ。


 そして、きっと俺も。


 俺の頭の中には、あの日いなくなってしまった、タイラさんの事が思い浮かんでいたのだった。


「どうなんですか、ハクさん」


 俺がそう言った時、ゆっくりと右手を上げ、


「そろそろ、私も話して良いかな?」


 と、園長が口を開いた。


「やれやれ、お前達の仲の良さは、よぉく分かった。しかしだな、少しだけ、私にも話す時間をくれないか?きっと、お前達が聞きたい答えにも繋がると思うのでな」


 園長が、ゆっくりと俺達を見渡し同意を求めたので、みんな首を縦に振った。


「……そうか。それならば、話を進めよう。まずは、アンジ、こっちへ」


 そう言いながら手招きをされたので、俺は歩を進め、園長の机の前に立った。


「アンジ、これを受け取りなさい」


 そう言って、園長は、自分の足元から何かを取り出し、俺に手渡した。


「あっ!!園長!!これ」


 赤く輝くそれは、


「新しい、コオロキだ。大分傷んでいたみたいだからな、あれじゃあ、使い物にならないだろう。それに……、同じ物では、この先の戦いでは不安が残るのでな……。改良してみた。とりあえず、大きさを確認してみてくれ」


「はいっ!!」


 と、大声で返事をし、急いで両腕に装着してみる。


 前の物と比べると、少し重くなった様な気がするのだが……


 拳を握り、ゆっくりと内へ外へとひねりを加えてみる。


「園長、これ、腕の部分が厚くなりました?それに、拳の部分の水晶が小さくなったような……」


「その通りだ。良く分かったな、アンジ」


 と、褒められたのだが、見たままの事を言っただけなので、それほど嬉しくは無かった。


「しかしな、どちらも以前とは比べものにならない位、強度は増しているからな、心配するな」


「はぁ、そうですか……ありがとうございます」


 と、お礼を言いはしたのだが、


『園長は、えらく強度を気にしているなぁ……。何でだ?』


 と、俺の中に疑問が残る。


「それでは、カイナ。アンジと代わりなさい」


「はい、はい、はぁい」


 上機嫌な返事をしながら俺を押しのけ、園長の前に立つと、両手を前に差し出し、


「はいっ!くださいっ!」


 と、満面の笑みを浮かべるのだった。


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