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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第十章
196/211

第196話 招集

 夕方、訓練を終えた後、夕食までの間、俺は一人で部屋のベットの上で横になっていた。


 それが特別という訳ではない。


 いつもの事だ。


 そして、暫くした後に。


 コン、コン……


 と、部屋の扉をノックする音が聞こえてくるのも、いつもの事だ。


「はぁ~」


 と、短くため息をついた後、「誰?」と、ドアの向こうに問い掛ける。


「僕だよ」


 と静かに答えが返って来る。


 続けて、


「入ってもいい?」


 と尋ねてくる。


 俺は首を傾げながら、ベットから起き上がり、扉の前へと向かう。


『変な事言うなぁ……』


 そう思いながら、俺は扉を開き、


「もちろん。っていうか、どうした、トウジ?」


「いや、なんか機嫌が悪そうな感じがしたから……マズかったかなぁ……って、思ってさ」


「はぁ?別に機嫌悪くなんてないさ。気のせいだって、トウジ」


「そっか、なら、いいんだけど」


 と、安堵の表情を浮かべた。


「それで?」


 と、俺が改めて尋ねると、


「あっ、そうそう、園長にアンジを呼んでくれって、言われてね」


「園長が?」


 と、聞き返すと、トウジは頷きながら、


「そう。園長が」


 と返してきた。


 そして、


「たぶんだけどさ、『あれ』じゃないかな?」


「何だよそれ?」


「もぉ、鈍いなぁ……アンジが壊した『あれ』の修理が終わったんじゃないの?」


 そこまで言われて、俺は「あっ!」っと、手を打った。


 怪我をした拳は、すぐにハクさんに治癒してもらった。


 でも、壊れたコオロキは流石に誰にも直せなかったので、仕方なくここへ戻って来て直ぐ、園長に見せた。


 すると、帰ってきたことに喜んで園長の顔が、一気に赤くなり、こっぴどく叱られた事を思い出した。


 俺が悪い訳では無かったのに……


「でも、修理してくれたんだよな?」


 俺がトウジに尋ねると、彼は首を傾げながら、


「『でも』の意味が分からないけど、たぶん、そういう事だと思うよ。だから、早く行こう、アンジ」


 トウジは振り返ると、俺より先に階段へ向った。


 俺は慌てて、


「おっ、おい、トウジ。なっ、何で俺より先に行ってるんだよ」


「別にぃ~。早くおいでよ、アンジ」


 立ち止まらずにそう言い残し、トウジは、階段の下へと消えて行った。


「何だ?まぁ、いいや。えっと、……とりあえず…………」


 俺は部屋の入口に立ち、中を見回し、一つ頷く。


「早く行こうっと」


 ドアを閉め、階段を下りると、真っ直ぐ園長の部屋へ向かった。


 扉を二つノックする。


「アンジです。入ります」


 園長の返事を待たずに、俺は扉を開けた。


 目に飛び込んできたのは、驚いた顔をした園長だった。


「はっ、……あっ、ああ、入りなさい、アンジ」


 怒ってはいない。


 ただ、驚いた様な声色でそう促された。


『流石にまずかったかな……』


「すいませんでした。入ります」


 俺は改めて、一礼し、部屋の中へと入る。


 園長はいつもの様に正面に座っている。


 そして、向かって左にはリョカさんと、ハクさん。


 右側には、トウジとソウジが園長の近くに立っている。


 そして、その手前、俺の近くにはカイナとリンドウ。


 それと、ナガレさんが一緒に立っていた。


「えっ、ナガレさんも?」


「何だい?私がいちゃいけないのかい?」


 と言うと同時に睨まれたので、俺は慌てて両手で口を塞ぐ。


 そして、頭を振りながら、


「別に、問題ないです。ありません。ごめんなさい」


 と早口でまくし立てた。


「あんまりからかうなよ、ナガレ。それからアンジ、ナガレには俺達と同様に、お前達の補助をしてもらうことにした。それは、構わないよな?」


「補……助……」


 リョカさんにそう言われたのだが、


「あの、リョカさん。それって、今までと何が違うんですか?」


 と、一先ず当たり前のことを俺は、尋ねてみた。


 今日、今、あえて言われた事に何か意味があるのか、そこが俺には分からなかったからだ。


「どうなんでしょう?」


 リョカさんの目を見ながら再度尋ねる。


「……」


「……」


「何も、変わらねぇよ」


 ニヤリとしながら、リョカさんは短く答えてくれた。


「そうですか……でも、まあ、改めてですね。ナガレさん。これから、またお世話になります」


 俺は、ナガレさんに一礼する。


 すると、トウジ達も俺の後に続いて同様に一礼した。



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