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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第九章
194/211

第194話 宴の終幕?

 俺達四人は顔を見合わせた。


「何かあったのかなぁ?」


「さぁ?何か美味い物でも出て来たかな?」


「気になるわね?」


「行って、みるか?」


 俺がそう尋ねると、皆、勢いよく頷く。


 一斉に立ち上がり、四人同時に輪の方へと近付く。


 すると、不思議な光景が出来上がっていた。


 輪の中心に、丸い机と二脚の椅子。


 その椅子は机を挟んで向かい合う様に置かれていた。


 そして、そこに座っているのは、リョカさんとナガレさんだった。


「何やってるんですか?あの二人?」


 近場に座っていた男性に尋ねてみた。


「ああ?何だ?見て分からねぇのか?あの二人、どっちが強いか飲み比べするんだとよ」


「……はぁ?」


『何でそうなるんだ?』


 辺りを見回し、ハクさんを探す。


「アンジ、ハクさんならあそこにいるわよ」


 俺は、頷くとハクさんの元へと駆け寄った。


 皆も続く。


「ハクさん」


「ああ、アンジ」


「ハクさん。あれ、どういう事ですか?」


「いや、まあ、何というか、話の流れでね。どちらが酒豪かって話になってさ。リョカがね『どうせ、術の力を借りての話だろ』って彼女に言っちゃってさ」


「うわ、リョカさん。最悪」


「そうだよね。でも、そしたら、彼女『借りる事も出来るけど、あなたになんか術を使わなくても勝てるわよ』って……。そしたら、リョカも『俺が、女に負ける訳無いだろ』って……」


「それで、あれですか……」


 俺達は、リョカさんに呆れた視線を投げる。


 そんな事など本人は気にしていない様子だった。


「ホントに良いんだな?手加減はしないからな。ナガレ」


「別に。構わないよ。勝つのは決まってるんだからね」


「はぁ~。よっぽど自信があるって訳だ。ヨシッ!じゃ、賭けるか、どっちが勝つか」


「嬉しいねぇ。何をくれるっていうんだい?」


「何でもいいさ。俺は負けないからな。好きな物くれてやる」


「じゃあ、私もそれでいいよ。負ける訳がないからね、この私が」


 二人の前に酒が運ばれてくる。


 どちらも勝ちは譲らないという表情だ。


 そして、「始めっ!!」の号令とともに、二人の飲み比べが始まった。


 野次に応援、歓声にと、二人の周囲は大盛り上がり。


 と、まあ、始めは良かったのだが、これがなかなか勝負がつかない。


 それを見ている周りの男性達からの声も、徐々に減り……


 気が付けば、二人の事をそっちのけで、男達はまた飲み始めていた。


 見守っているのは、俺達五人。


 と、もう一人、大男。


 昨日は見なかったのだが、この男、名前を『ボー』というらしい。


 こう見えて実は末っ子。つまり、一番最近ジャノメ団に入ったらしい。しかも、タツキさんがいなくなった日の帰り道の山中で倒れていたところを『拾われた』と。更に、ついていない事に、このボーさんは、何かしらの原因で記憶をなくしているらしい。だから、ボーという名前も、ナガレさんがつけたという事だ。ガタイは大きいのにぼーーっとしている事が多いからだったらしい。と、カイナが教えてくれた。


「がっ、がんばれ~。だんっ、だんちょ~~」


 と、手を叩いて応援している姿は、年下で、体格も彼より小さい俺がいうのも変だが、かわいい弟に見えた。


「でも」


 声を出した俺の方をボーさんが見下ろす。


 俺が笑うと、彼も笑った。


「……負けられないな。リョカさん頑張ってくださぁい!」


 彼に負けない様に、俺もリョカさんを応援することにした。


「だんちょ~~!!」


「リョカさん!」


 とりあえず、俺達二人でリョカさんとナガレさんを鼓舞する。


 そして、心の中では、『早く、終わってくれ!!』と、念じていた。


 その声が、届いたのかどうかは、分からないのだが、暫くすると、ついにその時が来た。


「はあぁ~~~。もうダメだ。…………限界」


「そうか。という事は」


「ああ、そうだよ」


「……俺の、勝ちだな」


「私の負けだよ……」


 雌雄が決すると、辺りは再び大盛り上がり。


 これを肴にまた飲み始める男達。


「呆れた。あの人たちに方が、よっぽど強いんじゃないの?」


 カイナの一言に俺達も、そうかもしれないと思ってしまった。


「それで?」


 不意に、ナガレさんが声を発し、


「何が、欲しいんだい?リョカ」


 と、尋ねると、皆が一斉に静かになる。


 すると、リョカさんは、ゆっくりとした口調で、こう答えた。


「いいか……、俺が…………欲しいの、は…………お前……………を……貰ってやる…………文句、ない、だろ?」


 そう言って、リョカさんは気を失った。


「えっ?」


「はっ?」


「うそ……」


 ナガレさんと、その場に居合わせた俺達を含め、証人の数、約三十名。


 まさかの展開に、俺達はそれ以上言葉が出なかった。


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