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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第一章
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第19話 リョカ

  ある程度の事には目をつぶろうと思っていたのだが、いきなりそうも言っていられない状況におちいってしまっている。


  リョカという男がヒトツキに一礼をしている。


 それだけなら良いのだが、ヒトツキの口元は今にもあの例の管が伸びそうになっていた。


  このうえ更に犠牲者を増やしたくない。


 そう思った時、タイラはリョカに向かって大声で叫んだ。


「何してるんだ!早く逃げろ!」


  「え?何?」


  ゆっくりと頭を上げタイラの方へ振り返り、リョカはタイラに問い返した。


  その時、ヒトツキの口元から管が伸びてきた。


  だが、その管の向かう先はリョカではなかった。


 なんと、それはタイラの方へ向かって伸びて来るではないか。


 リョカの方へ向かって行くと思っていたタイラは油断していた。


 タイラの体は硬直し、管に対して対応出来なかった。


  『駄目だ。逃げ切れない』


  タイラは諦めかけていた。


 しかし、リョカは違っていた。


  「おいおい…」


  自分とは違う方向に伸びていく管を見ながらため息混じりに呟いた。


  そして、片手に持っていた刀を両手で持ち直すと、一気に管に向かって振り下ろした。


 すると、間一髪のところで管はタイラの足元に突き刺さった。


  「さっきよろしくって言っただろ?お前の相手は俺だって」


  刀を振り下ろしたままリョカはヒトツキに向かってそう言った。そして、


  「あんたも大丈夫か?」


  と、タイラにも声を掛けた。


  「ああ、大丈夫だ。…すまない」


  大きく頷きタイラはリョカに礼を言う。


 助けるはずの男に助けられてしまった。


 そう思うと恥ずかしくなり、タイラはリョカから視線を外した。


  「何、気にするな」


  リョカは相変わらずの口調でそういうと刀を構えなおした。


  タイラは何気なくその刀に目をやる。


 あれは…


  「あんた、その刀」


  「ああ、これか?」


  刀を構えたままリョカは答える。


  「これは俺の愛刀だ」


  「愛刀って…ただの木刀じゃないか」


  「そうだけど。いけないか?」


  「いや、そうじゃなく…」


  木刀ではヒトツキは倒せないだろ。


 言葉にはださなかったがタイラはそう思っていた。


  「大丈夫だって。心配するな」


  それを見透かしたようにリョカはタイラに言った。


  タイラは反論しようとしかけたが、その言葉をのみこんだ。


 まかりなりにもこの男に命を助けられた。


 今は何も口出し出来ない。


  「わかった」


  タイラは静かに戦況を見守る事にした。


  「それはどうも」


  管が口元へ戻ったヒトツキと対峙しながらリョカはタイラに言った。


  「さあ、仕切り直しだ」


  今度はヒトツキに向かって声を掛ける。


  「今度こそよろしく頼むぞ」


  そう言いながらリョカは距離を詰めていく。


  互いの間合いに入った時、ヒトツキが先に動いた。


 先程アンジを突き飛ばした時と同じように右腕をリョカの方へ伸ばした。


  だか、リョカは突き飛ばされない。


 それどころか、ヒトツキの攻撃をしっかりと両手に握った木刀で受け止めていた。


  「そうそう、いい感じだ。もっと来い」


  リョカは嬉しそうにそういうと、刀でヒトツキの右手を払いのけた。


  ヒトツキは更に左腕、右腕と交互にリョカに向かって突き出す。


 しかし、それを全てリョカは受け止め、払いのけた。


  「…」


  その様を見ていたタイラは言葉が出ない。


 この男、一体何者なんだ。


 ああも容易くヒトツキの攻撃を受け止めるとは。


 しかも、木刀で。


 常人とは思えない。


  後ろで、タイラがそのような事を考えているとは知りもしないリョカはただひたすら、ヒトツキの攻撃を受け止めていた。


  が、突然リョカがタイラに話し掛けてきた。


  「なあ、あんた」


  「なんだ」


  「もう大丈夫か?」


  「…なんのことだ」


  「なんのことだって、もう『力』は戻って来たのかって、聞いてるんだ」


  「!?」


  何故この男『力』の事を知っている。


 タイラは驚きを隠せなかった。

 

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