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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第九章
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第189話 トウジの思惑

 予定なく現れたトウジ。


「おい、トウジ。何で出て来たんだよ」


「決まってるじゃないか。二人を助けに来たんだよ」


「助けにって……」


 俺がそう言うと、トウジは鼻で笑い、


「必要ないとは言わせないよ、アンジ。だって、もうへとへとじゃないか。ソウジも、起き上がれないんでしょ?ねっ!?」


 トウジが、彼の方を向いて声を掛けたのだが、返事も、反応もない。


「……ほらね。じゃあ、やっぱり、僕が……、僕が頑張るしかないじゃないか」


 そう言いながら、ロクジョウコンを強く握りしめるトウジ。


「僕が掴まったばっかりに、二人に迷惑を掛けて…………、二人が、こんな風になってるのに黙ってられる訳無いじゃないか!!僕だって……僕だって、シカジキ団の一員なんだ!!!!今度は、僕が二人を守るんだ!!」


 トウジは勇ましく叫んだ。


 別人かと思うほどに。


 しかし、スミは違う。


「やれやれ……、勇気ある行動……、仲間思いで……、いいねぇ…………」


 そこまで言うと、スミは刃先をトウジの方へ向け、


「だが、お前に何が出来る?この、盗人どもに簡単に掴まったお前に、何が出来るんだ?それで、俺を、殴るのか?」


 ロクジョウコンを指しながら、スミが尋ねる。


「それは、ねっ、寝てる時に……さらわれたから、仕方ないじゃないか……とっ、とにかく、僕は、お前と戦うんだ。でも、…………最後は、アンジ。頼むからね。『力』、今の内に溜めといてよねっ!」


 というトウジの視線に気付き、俺は一度だけ頷いた。


『最後は……って、一体どういう意味だよ?』


 口に出して尋ねれば良いのだが、目の前にはスミもいる。


 相手に悟られては、元も子もない。


 一先ず、俺はトウジに言われた通り、『力』の回復を優先することにした。


『でも……、トウジの奴、一体どうするつもりだよ。まさか、あの術でスミと……』


「いや」


 俺は頭を振った。


「悪い、トウジ頼む」


 と、ついさっきソウジに掛けられた言葉を、そっくりそのまま俺はトウジに掛けた。


『俺達が無事に帰る為には、トウジの力が必要なんだ。あいつを、信じよう』


 そして俺は、心を静める様に深く深呼吸を繰り返した。


「……話は済んだか?」


 首を傾げながら、スミはトウジに向かって声を掛けた。


「はい。終わりました」


「そうか…………別れの言葉が聞こえなかったが…………良いのか?」


「ええ、心配して頂かなくても大丈夫です。……別れるつもり……ないんで」


 ゆっくりと、トウジとスミは向き合う様に対峙する。


「生意気な……」


 そう言うと、スミは左手に持っていた折れた狂人刀を無造作に足元へ投げ捨てた。


 そして、空になった左手を右手に持つ刀の柄に添える。


 俺達と戦っていった時のスミとは明らかに雰囲気が違う。


「トウジ、気を付けろっ!」


 俺の声に反応したトウジは、笑顔で頷いた。


「忌々しい……その顔……何故怯えておらんのだ。武器も持たぬ小僧が………」


 スミは口元を歪める。


「それはどうですかね?」


 表情を変えず、トウジはそう言うと、ロクジョウコンの先端を自分の胸の方へと向ける。


『やっぱり……』


 俺の頭と胸の中は、期待と不安が入り混じっていた。


 そんな俺が見守る中、ソウジは静かに口ずさむ。


 そして、次の瞬間、


「ソルウィド!」


 その言葉と同時に、ロクジョウコンの先端をスミの方へと向ける。


 すると、たちまちその先端から白い塊が発射される。


 直ぐ様それは風の刃へと形を変え、スミの胸元目掛けて瞬く間に飛んで行く。


「!?」


 言葉を発する前に、スミは、体を低くしそれをかわす。


 ガサガサッ!!ドスーーーン!!!!


 スミが振り変えると、後方の森の木が数本折れ倒れていた。


 その様に驚き声が出なかったスミだが、


「…………いいねぇ。なかなか…………良い術、使えるじゃないか」


 そう言いながら、また表情を緩める。


 何度見ても気持ちが悪い、あの表情……


『気を付けろ…トウジ……』


「だが……、もう終わりじゃないよな?おい?行くぞ?いいよ……なっ!?」


 言い終わると同時に、スミはトウジとの間合いを一気に詰めようと駆け出した。


 ところがトウジは冷静に、


「もちろん!終わり、じゃないよ!ソルウィド!!」


 自分の方へと向かってくるスミに向かって再度、術を使う。


 気のせいだろうか、先程放たれたそれより、小さい様に俺には見えた。


 そして、トウジ自身もスミから離れる様に移動を開始した。


 スミは一度足を止め、俺と同じ事に気付いたらしく、今度はそれを避けず、手に持つ狂人刀でそれを斬り付けた。


 すると風の刃は真っ二つに割れ、スミの体に触れることなく消滅した。


 それを確認するとスミは再び距離を詰めようと前進するが、トウジはそれに臆することなく再び術を使い、距離を取るように移動する。


 二人はそれを繰り返す。


『なるほど。すごいな。トウジのやつ、しっかり考えて戦っているんだな……』


 守らなければならない友と思っていたのだが、それは大きな間違いだったらしい。


『頼むぞ、トウジ……今はお前だけが……頼むぜ!!』


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