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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第九章
182/211

第182話 共鳴?

 スミは両手を広げ、天を仰ぎ、


「さあ、楽しもう……」


 祈るように声を漏らした後、顔をこちらに向ける。


 閉じた瞼と楽し気に笑みを浮かべる口元…………


「気持ち悪い……あいつ、何が楽しいんだ?」


 ソウジも俺と同じ事を感じていたようだ。


 するとスミは、右手に持った刀をゆっくりと前に出しながら、


「気持ち悪いか……」


 ソウジの言葉に反応した。


 そして、左手を刀に添えると、


「そうか。まあ、そう言えるのも、今の内だ……」


 その言った直後、スミの体が一度大きく後ろへ仰け反る。


 それと同時に俺の首元が熱くなってくる。


『なっ、何で?……まさか』


 自分の体の確認が出来ない為、俺は隣にいるソウジの首元に急いで目を向ける。


 ソウジも同じ事を感じたのか、彼も俺の方を見ていた。


「やっぱり」


 彼の首元にはあのアザが浮かんでいた。


 そして、ソウジの表情から、きっと俺にも。


 一度視線を空に向ける。


 まだ、明るい時間帯。


 もちろん、アカツキが浮かんでいる様子もない。


『だったら、何で……?』


 考えられる要因は一つしかなかった。


 俺とソウジは、ほぼ同時にスミの方へと視線を戻した。


 すると、俺達の視線を待っていたかの様に、スミは目と口を閉ざし無表情のまま頭をゆっくりと元の位置に戻すと、左手を刀から離した。


 そして、頭をゆっくりと左に一回まわす。


 フィ~~…………


 と、奇妙な声がスミの口から洩れて来た。


 そしてその口の両端がゆっくりと上がっていく。


「気を抜くなよ、アンジ」


「ああ、分かってる。ソウジもな」


 お互いに声を掛け合った後、ソウジは刀に、俺は拳をしっかりと握った。


 ウィィィィ~~~~~


 先程よりも大きく唸った後、


「いざ。いざ、いざ、いざ、いざ…………。いざっ!!」


 最後に大きく叫ぶと同時に、スミは大きく目を見開いた。


「何だよありゃ。ホントに化け物じゃないかよ」


 ソウジがそう漏らすのも仕方無かった。


 スミの体型に変化は無い。


 しかし、見開かれた目には白目の部分が無く、黒目の部分も無い。


 両目全体が真っ赤に染まっていた。


『あれが、あの狂人刀の力なのか??』


「ソウジ」


 俺は左隣にいる彼に声を掛け、目で合図する。


 ソウジは一つ頷き、


「はいよ。了解」


 と返事をした後、スッと俺から距離を取った。


 俺も同時に、ソウジから離れる。


 お互いに離れた為、スミを含め各々を頂点とした三角形の構図になった。


『よし、準備は整ったぞ』


 俺は内心そう思ったのだが、ソウジは、


「おい、アンジ。これっ。これ見ろよ!」


 ソウジが左手を振りながら俺を呼ぶ。


 視線を移して驚いた。


 彼の持つ刀が黄色く光っている。


 そして、その光を消し、


「なっ?そういう事みたいだぜ」


 と言った。


『俺達の力も解放されているって事か。なるほどね。じゃあ、これで、ホントに整ったな』


 俺は両手を前に構える。


 目の前のスミは、まだ俺とソウジを交互に見比べているだけで動き出す気配が無かった。


 すると、


「お先にっ!」


 軽く俺に声を掛けると、ソウジが我先にと動き出した。


 スネズの時とは打って変わった軽快な走り。


「あっ、おい!ソウジ!!」


 と、呼び掛けたのだが、ソウジは返事することなく、スミとの距離を詰めて行く。


「なんだよっ!」


 俺もその後を追う様に駆け出した。


『あんな戦い方で満足してる訳無いか……』


 とは言え、


「ソウジ!!相手は『刀』。だぞ!!忘れるなよ!!」


 後方から大声でそう叫んだ時には、既にスミの間近に迫っていた。


「分かってる……」


 ソウジは、そこまで返事をした後、勢い良く上空へ跳び上がる。


 そして、両手を大きく振りかぶると、


「よっ!!!!」


 と、大声を上げると同時に、スミの頭を目掛けて、両手の刀を一気に振り下ろした。


 スネズの時よりも格段に速く、正確に頭部を狙っているように俺からは見えた。


 だが、スミの頭をとらえる前に、黒い刀によって防がれてしまった。


 動作に無駄がない。


 スミは瞬き一つもせず、表情も変えないまま止めた刀を外へと払う。


 その勢いを利用し、ソウジは再度頭上からの攻撃を仕掛ける。


 今度は多少振り下ろすタイミングをずらしていた。


 しかし、右、左と、簡単に弾かれてしまった。


 ソウジが着地するよりも早く、俺も力を込めて右手で殴り掛かった。


 が、やはり、それも易々と止められてしまった。


『止められた?』


 拳を受け止めていたのは狂人刀。


 俺は右手を引き、チラッと拳を確認する。


『良かったぁ。ケガ……してない。コオロキのお陰だ』


 拳で刀に向かっていた事に、その時改めて気付かされた。


『まあ、お陰で、この拳でも戦える事が分かったんだ。……棚ぼたってやつか』


 俺は、今、前向きだ。


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