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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第九章
178/211

第178話 ソウジとスネズ(1)

「んじゃ、よろしくお願いしまぁす」


 会釈をしながら、軽い口調でそう言うと、早速スネズの前で刀を構えた。


「なんだ?お前、鞘から抜かないのか?」


 ソウジが両手に構えた刀は、鞘を付けたままだった。


 ジャノメ団との攻防の時は鞘だけ握っていたはずだが……


「いや、一応、これ本物の刀なもんで……、刀身が当たったら危ないでしょ?だから」


「はぁ!?」


 スネズが吐いたその一言で、ソウジの言葉が彼の機嫌を損ねている事が分かる。


 そして、


「お前、俺様を馬鹿にしているのか?」


 ソウジは慌てた様に、


「いやいや、まさか!そんな訳、無いでしょう」


 と、弁解すると、スネズは右手の人差し指でソウジの持つ刀を差し、


「だったら、外せ!!!!」


「いや、でも……。そしたら、あなたも、刀……抜きますよね?」


「はぁ!?お前みたいな小僧相手に……抜くわけねぇだろうが!刀なんて使うか!!もったいねぇ……。だが、素手って訳にもいかねぇから、……そうだな。この、鞘を使って相手してやる。別に文句ないよな!?いやなら止めてもいいぜ?」


 刀を鞘から抜くと地面に突き刺し、残った鞘で構えるスネズに、ソウジは首を一度縦に振り、


「ええ……。もちろん、ありがとうございます。じゃあ、俺は、抜きますね」


 鞘を腰に戻し、改めて両手に二本の曲刀を握り態勢を整えた。


 その顔には、もちろんいつもの笑みがある。


「お前、その刀……。どこで手に入れた?」


 笑っているソウジの顔よりも、スネズの興味はその手に持たれている『刀』にあるようだ。


「ああ、これですか?これは、まあ、知り合いに仕立て直してもらったんですよ。俺の親父の刀を、俺用にね。なかなかいいでしょ?」


「……。そうだな」


「いや、でも、駄目ですよ。譲れませんからね」


「はっ!!別に。貰おうなんて思ってねぇよ!!」


 スネズはそう言ったのだが、


『ウソつけ!!その顔、下心見え見えなんだよ!!あぁ、そっか。貰うんじゃないから、間違ってないか……奪い取ろうって魂胆だろうからな……』


 ソウジは一人で納得し、首を縦に数回振っていると、


「何やってんだ?お前やるのか?やらねぇのか?どっちだ?」


 スネズが首を傾げながらそう尋ねると、


「はいはい。もちろん、やりますよ~。はい。じゃあ、良いですか?」


 我に返ったソウジは、両手を回しながらスネズに尋ねた。


「来いよ……」


 一言返し、スネズも重心を低くする。


 横幅はソウジが大きい。


 身長はスネズが拳三つほど高い。


 小太りなよくしゃべるガキ……。


 ソウジに対するスネズの印象はこんなものだった。


 スネズが持つ刀代わりの鞘は右手にあるのだが、その先端は地面に向けて、ゆらゆらと振られていた。


 目線だけはこちらを向いているが、明らかにスネズの構えは隙だらけだった。


『なめられたもんだなぁ、俺も…………』


 と、内心一度呆れながらも、直ぐに頭を切り替え、


『だからといって、流石に一発で終わったら……、まずいよなぁ…………』


 初太刀で終わらせてしまったとすれば、その後、残り二人の警戒が強まり、トウジの救出が難しくなるかもしれない。


 上手くなんとかギリギリで勝てる事が、最良……


『偶然、勝てた?みたいな。はぁ~~~。面倒だぁ~~~~~~~~~』


「けど、仕方ない。やるか」


 そう声に出した後、両手の刀をしっかりと握り直し、「そりゅあ!!」と声を出し、ソウジはゆっくりとスネズに向かって走り出した。


 ドスッ、ドスッ、ドスッ……


 近くで見ているアンジも、離れた場所から見ていたリョカ達も、唖然とするほどゆっくりとした走り。


 彼の俊敏さを知っている者からすれば違和感しかない。


 しかし、スネズはそれに当てはまらない。


 スネズは合わせるようにゆっくりと右手に持つ鞘を前に構え、ソウジの初太刀に備えている。


「っしょっ!!」


 走る速度よりは早いものの、ソウジの振り下ろした二本の刀は当たり前のように、スネズの鞘ではじかれた。


「おっ!?とっとっ……」


 よろめきながらも踏み止まり、再び構えを取るソウジ。


「お前、本気でやってるのか?」


 スネズはソウジに疑いの眼差しを向けながらそう尋ねた。


 もちろん、ソウジは「いや、手を抜いてますよ」と、答える事はせず、


「あっ、いや、まあ、少しだけ、肩慣らし程度に……。つっ、次から、本気で行きますんで」


 そういうと、彼は再び、走り出し、スネズに向かって両手を振り下ろした。


 先程よりも早く、しかし、本来の力を発揮するわけでもない、微妙な加減。


 だが、「ふんっ!!」、という鼻息と共に繰り出されたスネズの一払いによって、ソウジの刀は弾かれた。


 振り下ろすと弾かれる、振り下ろすと弾かれる……。


 二人はそれを数回繰り返した。


 すると、


「はぁ~~~……。おい、後どれ位続けるつもりだ?一生掛かってもお前の刀、俺には当たらねぇぞ……?」


 そう言い放ったスネズの口元には、薄い笑みが浮かんでいた。


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