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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第九章
176/211

第176話 叱責と失笑

 穴から出て来た三人の男。


 三人とも大きい。


 しかも、三者三様体型が違うので分かりやすくもある。


「向かって左。やせた背の高い男がスミーロ。通称スミ。そして、右側にいる中肉中背の男がスネズミ。通称スネズ。そして、真ん中の丸々した男が親玉のドンネズミ。通称ドンネズ。まあ、あいつらの中ではドン兄って呼んでいるみたいだけどね。それと、例の刀……。ほら、左の腰にみんなぶら下げているだろ?あれさ」


 ナガレさんはそう言うと、三人の腰のあたりを指差した。


「それで?どうして急にあいつら出て来たんだ?」


 リョカさんが尋ねると、ナガレさんは首を傾げ、


「私に分かる訳ないだろ?まあ、しいて言えるとしたら、…………山賊の勘かねぇ。あいつらも、伊達に悪い事ばっかりやってる訳じゃないからね」


「悪党でも悪党なりに鼻か利くって訳か……」


「まあ、そうだね」


 小声で話している為、ドンネズ達には気付かれていないのだろうか。


 彼らは入口の前で辺りをキョロキョロと見渡すだけで、こちらへ向かって来ようとする気配が無かった。


『トウジは……、生きているのか?』


 俺は、スミが引く縄の先で横たわっているトウジに注視した。


 顔……色は分からない、目は…………閉じているのか?あっ、肩が上下に動いている!!


「良かった、あいつ、生きてる……」


 ホッとして、俺は思わず声を漏らした。


 すると、


「当たり前でしょ!!何言ってるの!!まさか死んでるとでも思ってたの?信じられない!!ホント!信じられない!!」


 と、鬼の形相をしたカイナに責められてしまった。


「まあまあ、落ち着けってカイナ。アンジも悪気があって言った訳じゃないんだから、な?」


「もっ、もちろんさ。ただ、顔を見て安心したってだけで、別に、ほかに、意味なんて無いって」


 首を何度も縦に振りながら、俺は一生懸命に弁解した。


「うるさいよっ!静かにしなっ!!」


 ナガレさんに一喝され、俺達は萎縮し静かになった。


「全く、やれやれ、こんな時にお前らは…………余程自信があるんだな」


「いや、別にそんな訳じゃ……」


 ナガレさんと違い、強い口調ではないリョカさんの言葉は、逆に怖かった。


「とりあえず、作戦という作戦なんかは『ない』。それに、ナガレに助けを求めるのも筋違いだよな?メシ食わせてくれて、泊めてくれた。それだけだ。トウジがさらわれた事も、ナガレには関係ない……だよな?」


 リョカさんが言っている事に間違いはない。


 その問いに対し、俺とソウジとカイナは頷くしかなかった。


「そうだよな。そう思うよな。だったら、行って来い!」


「えっ……!?俺達ですか?」


「もちろんだ。お前とソウジ。二人でとりあえず行って来い。まあ、向こうは三人いるが、左のスミって奴は、トウジを手放してまでお前達の相手をするとは考えられない。まあ、ドンに預けるかもしれないが、どちらにしろスネズと併せて実質二人……だろ?何とかしてこい」


「そんな、無茶な……」


 と、口にはしたのだが、この提案が覆ることは無いと分かっている。


 隣にいるソウジの顔を見ると、彼もこちらを見ていた。


 お互いに頷いた後、


「じゃ、行くぞ、ソウジ」


「はいよ。団長」


「それ止めろって言っただろ……」


 そう言いながら俺は歩き出した。


 そして、後を追う様に、


「そうでした。はい、ごめんなさい。……ふぅ、とりあえずリョカさん。俺達に何かあった時にはお願いしますよ」


 ソウジはリョカさんの顔を見ながらそう言うと、急ぎ足で俺の隣へ進んでくる。


「何かって、何をどうするんだ?」


「そりゃ、決まっているでしょ?トウジとカイナですよ」


 リョカさんの問いにそう答えるソウジ。


「ああ、そういう事か。あんまり、あてにするなよぉ。それとな、お前達の相手は『刀』だぞ。忘れるなよ。お前達の目的は『トウジの救出』だ。で、ついでに『刀の破壊』だからな。そこ、間違うなよ」


 それを聞くと同時に俺達は茂みの外へと出た。


 リョカさんに返事はしない。


 何故なら俺とソウジは、トウジを助ける為に、『二人』でここに来たのだから。


 向こうの三人も俺達に気付き、こちらを睨んでいる。


 しかし、昨日はもっと大勢の男達に囲まれていたのだから、たった三人の視線に俺達が臆する事は無かった。


 俺とソウジはどんどん歩を進め、三人との間合いを詰めて行く。


 そして、残りの間合いが俺の歩幅で十歩といったところで、


「止まれ、お前達。ここに何しに来た?」


 真ん中にいる男、ドンネズが威圧するような口振りでそう尋ねてきた。


「そっ、そんなこっ、事、きっ、決まってるんだと?…………」


「……」


「……」


 俺以外、全員がきょとんとしている。


 ガチガチで、しかも言葉尻、間違えたっ!!!


『何、言ってるんだ俺……、はっ、恥ずかしいぃ~~』


 顔から火が出る思いで俺がいると、向こうより先に隣にいるソウジが、「ぷっ!」と吹き出すと、それを皮切りに向こうの三人からは失笑が聞こえて来た。


「なんだ?お前、俺達を笑わせて、金てもせびろうっていうのか?全っ然、面白くもなんともねぇ。笑えねぇガキに付き合うほど、こっちは暇じゃねんだ。さっさと帰れ、帰れ」


 煙たそうにドンネズが俺達に追い払う仕草をする。


 すると、


「ですよねぇ~。すいません。コイツが変な空気にしてしまって。いや、実はですね、俺達旅をしながら剣術を磨いているんですけど……、街のうわさでこの山中に凄腕の剣士がいるって聞いたもので……。もしかしたら、あなた方……かな、と、思ったのですが」


 いつもの表情でソウジが男達にそう尋ねると、三人は顔を見あわせた後、顔を緩め、


「ああ、その噂、本当だ。俺達がその凄腕の剣士さ」


 ドンネズミはそう言うと、「がははははっ」と笑い出した。


 スネズとスミの二人もそれに合わせ笑い出す。


 ソウジもそれに合わせて笑い出すと、


「そうですか!良かった。やっぱりあなた方だったんですね。じゃあ、その凄腕剣士のあなた方にお願いがあるのですけど……」


「おお、何だ?言ってみろ」


 気をよくしたドンネズミが聞き返すと、ソウジは申し訳なさそうに、


「俺達と、手合わせお願いできませんか?」


 と、依頼をしたのだった。


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