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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第九章
175/211

第175話 情報整理

 方角的にゲッシへ向かう様に山の中、山道ではない獣道を走り続け、ようやく今いる所まで俺達一行はたどり着いていた。


 息が切れていないものは誰もいなかった。


 俺もカイナも生涯で初めてこれほど走り続けたのではないだろうか。


 ソウジはというと、呆れたことに大の字になって倒れていた。


『おいおい……、場所考えろってば……』


 彼の事は放っておき、


「あそこが、そのスミノゴのアジトなんですか?」


 小声で俺はナガレさんに尋ねた。


「そうだよ。私はここに来るのが初めてじゃないからね。心配しなくても、間違えやしないよ」


「じゃあ、あそこの中にトウジが」


 そう俺が言いかけた時、


「だろうな。さっさと行こうぜ、ナガレ」


「ちょっと待ちな。あの子の事が心配で、気が気じゃないのは分かるけど、そう焦るんじゃないよ……」


 俺達を見回し、ナガレさんは静かにそう言うと、横穴の方へと向き直った。


「おいっ、どうした?」


 リョカさんがそう尋ねると、左手を上げて「黙って」と短く告げると、ナガレさんは何かを呟いていた。


『もしかして、今のって……』


 それは初め見る光景ではない物だった。


 俺達はナガレさんが次の言葉を発するまでの間、口を開かなかった。


 みんなの呼吸が徐々に落ち着いてきていることが良く分かる。


 特にソウジ。


 手には水筒を持っていた。


 きっとカイナが渡してあげたのであろう。


 口元へそれを運んでいるが、何も出ていない。


 入っていない事が分かっているはずなのに、悪あがきをしているソウジの姿を見ていると、自然と口元が緩んでしまった。


「待たせたね。とりあえず、今分かっているのは、あの中にいるのは、四人」


「よっ、四人?」


 そもそもスミノゴは五人組の集団だったはずだが……


 俺達の不安をぬぐうかのようにナガレさんは、


「安心しな。モゴモゴ言っている声が聞こえるから、あの中にトウジはいるよ。ただ、いないのは、シロとギンっていう双子のガキで……」


「いるのはアニキ達ばかり。でっ、もちろん、そいつらが持ってるんだろ?『狂人刀』?」


 リョカさんがそう尋ねると、ナガレさんは深く頷いた。


「ああ、一人一本づつね」


「三本……、リョカ、今更だけど」


「大丈夫かって?」


 不安そうに尋ねたハクさんにリョカさんが答える。


「さぁて、どうするかねぇ。とりあえず、向こうが三人。こっちは一、二、さ」


「六人だよ、リョカ」


「おう。ほら、人数は倍もいる。武器もある。最終的に、アンジとソウジ、それと俺で仕留めて終わり!」


「リョカ。アンジ達に狂人刀の対処方法を教えておかなくてもいいの?」


「……俺がか?」


「『俺が』だよ」


 驚いた様に尋ねるリョカさんに対し、ハクさんは冷静に答えた。


 すると、


「いやいや、俺には無理だって、ハク!頼んだ!!」


「また…………。もぉ、とりあえず、時間を掛けてもしょうがないか。『狂人刀』は、持った人間を狂わせて、刀の気が済むまで殺戮を繰り返させるいわば意思を持った刀なんだ。そして、操られる人間は人並み以上の力を与えられるんだ。でもね、その代償に本人の意識は奪われてしまう。……恐ろしい刀なんだ」


 それを聞いたソウジは体を起こし、


「意思を持った刀って……、ヒトツキみたいだな。なぁ、アンジ?」


「えっ!?そうかな?」


「だってよ、ヒトツキも、もとはただの石だろ?エンセキっていうな。それに手が加えられて、挙句に人を襲ってるんだ。エンセキは刀。ヒトツキの体は人間の体……ってことだろ?ハクさん?」


「まさしくそういう事だよ、ソウジ。ただ、一つ、違いがあるとすれば、人間の体があるかないか。だね。『狂人刀』を止めるには、それに操られている人間を、どうにかして止めなければいけないって事だからね」


「つまり?……それは、殺せ……って……事ですか?」


 俺は恐る恐るそう尋ねた。


 しかし、ハクさんは首を横に振り、


「まさか、そこまでやらなくても大丈夫だと思うよ。気を失う位は必要かも知れないけどね……。ごめん。そこは僕もハッキリとは言い切れないや」


 そう答えると、ナガレさんが、


「いや、それで十分さ。それに、もっと簡単な方法もあるよ」


「何だって?どんな方法だ、ナガレ?」


 怪訝そうな顔をしてリョカさんが尋ねると、ナガレさんは自分の背中を指差し、


「ここに必要なモノは入ってるよ。あいつ等とは、短い付き合いじゃないからねぇ」


 と、得意気に答えた。


 あの背中の荷物、確かに気になっていた。


 一人だけ大きな荷物を持ち、俺達の先頭を走って来たこの人……。


 この中で一番逞しい大人なのではないのかと思える。


「何が入っているんだ?」


 中を確認しようとリョカさんが手を伸ばすと、ナガレさんはそれをゆっくりと手で払い、


「まあ、その時に……。それよりもあんた達、あの刀の事について、詳しいじゃないか。どこかで見た事あるのかい?」


 リョカさんとハクさんは顔を見合わせ、


「ああ、ある。だがな、人が扱うのを見たのは数回だ。それ以上に、俺達が見たのは『ミツキ』の連中が扱てるところさ……」


「えっ!!」


「なっ!!」


「ウソ……」


 俺とソウジとカイナは、その言葉に絶句した。


「昔話はまた今度してやる。とりあえず、今は『あいつ等』を優先しないと、だろ?」


 リョカさんが首を振り、穴の方を指すとそこには、見知らぬ男が三人、中から出て来ていた。


 そして、その傍らには、口を布でふさがれ、縄の様なもので縛られ、引きずられているトウジの姿があった。


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