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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第九章
172/211

第172話 行方不明

 リョカさんの思惑通りに事は運び、ナガレさんから大量の酒をご馳走になり、そのままジャノメ団のアジトに俺達は泊めてもらう事となった。


 もちろん、みんなが酒を飲んだわけではなく、俺やトウジ、カイナはお腹一杯の食料で満足させてもらった。


 しかし、全てが満足出来た訳ではない。


 元々所帯が大きいところに俺達は泊めてもらっていたので、寝る場所は……


 家の中という訳にもいかず、男性陣はその他の弟達と共に屋外雑魚寝。


 辛うじて、カイナだけはナガレさんと共に家の中での就寝という事になった。


 家に近い場所で俺達は横になる。


 トウジ、俺、その隣にソウジの順に並んでいた。


 リョカさん達はまた少し離れた場所で横になっている。


 後々また酒でも飲みだすんではないだろうか……


「結局、野宿じゃないか……。なあ、アンジ?」


 と、当然不満げにソウジが声を漏らす。


「まっ、そういうなって、ソウジ。お腹は一杯になっただろ?」


「おいおい、俺だって、遠慮って言葉知ってるんだぜ?腹一杯になるほどなんて食べてないさ」


「「うそっ!」」


 俺とトウジは同時に声を出した。


 俺達二人は、さっきまでのソウジの姿を思い出す……


「ソウジ……、いつも以上に食べてたよ、ねぇ?僕、いつも食堂でソウジが食べてる姿を見るけどさ。今日の方が多かったような気がしたんだけど……」


「ああ、俺もそう思った。さっきのあれは、遠慮してるようには、とても思えなかったぜ?」


 俺達がそう尋ねると、


「そうか?まあ、いいじゃないか。気にするなって。とりあえず、……、俺、もう、寝る。じゃ、おやすみ」


 そう言い残し、ソウジはあっという間に寝てしまった。


「……呆れた」


「ああ、呆れたな。けど、……俺達も」


「うん。そうだね」


 仰向けになったまま、空を見る。


 夜空はきれいだったのだろうか……


 昼間に目一杯暴れた事もあり、俺は月も星も見る事なく、あっという間に寝入ってしまった。



 



 


 翌朝……



 



 


 騒がしく聞こえる男達の声と、食欲をかき立てるいい香りが鼻をくすぐる。


 うっすらと目を開け、隣を確認する。


 大きく口を開いたまま、寝息を立てているソウジがそこにいた。


 俺は目を擦り、反対側を確認した。


 が、そこにトウジはいなかった。


 驚きはしない。


 俺より先にトウジが起きている。


 いつも通り、当たり前の朝だ。


 ソウジは……、普段俺より早いはずだが、お酒が入ったせいか、起きていない。


 こちらは、いつもと違っているようだ。


 とりあえず俺は体を起こし、一度大きく伸びをした。


「いっ……」


 体中のいたるところが痛い。


 野宿のせいか、それとも、昨日の戦闘のせいか……


 どちらにせよ、しっかり体を動かせば大丈夫だろうと思い、俺はゆっくりとその場に立ち上がり、もう一度、今度は全身を使って大きく伸びをした。


「ふぅ~~~~~っ」


 大きく息を吐はくと、お返しとばかりに大きなあくびも一つついてきた。


「何?まだ眠いの、アンジ?まっ、いつもの事だけどね」


「いや、そうじゃない……、こともないかな。カイナこそどうなんだよ?ちゃんと寝むれたのか?」


 俺がそう尋ねると、ニヤッとして、


「当然。ぐっすり、とね」


「そっか、それは、羨ましいかぎりで……」


 そう言いながら、俺は辺りを見回した。


「ところで、トウジは何処に行ったんだ?顔でも洗っているのか?」


 すると、カイナは首を傾げ、


「さぁ?私が起きてからは見かけてないわよ?……、何?気になるなら、家の中見てきてあげよっか?」


「あっ、ああ、うん。頼めるか?」


「じゃ、ちょっと待ってて」


 そう言うと、カイナは家の中へと走って行った。


「どうしたの、アンジ?」


「あっ、ハクさん。おはようございます。リョカさんも、おはようございます」


「おはよう。それで?カイナ、何かあったの?」


 走り去る姿が見えたからだろう、ハクさんがそう尋ねてきた。


「いや、カイナがって、いう訳じゃなくって、……、あっ、ハクさん達はトウジを見ませんでしたか?」


 ハクさんとリョカさんは、互いに顔を見合わせ、首を横に振った。


「そう言われてみれば……、僕が起きた時、アンジの隣にトウジの姿、無かったような……………、ごめん。はっきり覚えてない。まあ、リョカは、聞くまでもないね」


「もちろん!俺もさっきまで寝てたからな。アンジと一緒だ!」


「……、とっ、とりあえず、今家の中をカイナが見に行っています」


 俺が言うのとほぼ同時に、カイナが外へ出てくるなり、


「ねぇ、何処にもいなかったわよ?何で?」


「……」


「……」


「……」


 誰も言葉が出ない。


 まさか……


 すると、突然、


「どうしたんだい?あんた達?みんな揃って、神妙な顔して」


 と、ナガレさんが声を掛けてきた。


「朝飯、食べないのかい?」


『まさか……、結局、この人達がトウジを何処かへ……』


 俺はそう疑ってしまった。


 しかし、カイナは違ったようで、


「ナガレさん、トウジが何処にも見当たらないんです」


「何だって?トウジっていうと、あの眼鏡の男の子だね?」


「はい」


「そういわれりゃ……、確かに、いないねぇ…………。いつからだい?」


「多分、明け方か夜中ではないでしょうか。私が起きた時には、既にいなかったと思います」


 ナガレさんの質問に、ハクさんは丁寧に答えた。


 すると、彼女は俺達が寝ていた辺りでしゃがみこみ、何かを見つけ「チッ!」と、短く舌打ちをした。


 それは、ただの黒い布の切れ端のようにしか見えないのだが………


「なんてこったい……まさか、ここまで来られても気付けなかったなんてね。……、気を抜きぬき過ぎだねぇ…………。頭……失格だよ」


「おいおい、ナガレ。俺達にも分かるように説明しろよ。とりあえず、トウジは何処だよ?」


「……」


「おいっ!トウジは?トウジは何処だ!!ナガレ!!!!」


 リョカさんが珍しく、本気で声を荒げるとナガレさんが静かに答えた。


「ここにはもういないよ。……すまないねぇ。まさか『あいつ等』がここまで来るなんて……、予想もしてなかったんだよ」


「誰だ、そいつらは?『あいつ等』って事は、連れ去った相手に心当たりあるってことだな?」


 先程とは違い、静かにリョカさんがそう尋ねると、ナガレさんは頷き、


「もちろんさ。知ってるとも。そこに、置き土産で黒い布がある。トウジを連れ去ったのは、『スミノゴ』だよ。間違いない。あいつらこそが、正真正銘の山賊さ!」


 と、吐き捨てる様に言ったのだった。


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