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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第九章
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第169話 接点

「それで?あんた達、一体どこの街から来たんだい?」


 準備が終わり、宴が始まるとナガレさんは俺にそう尋ねてきた。


「あっ、えっと、ハラクータ……です」


 本当の事を言っていいものか迷ったが、結局、素直に答えた。


「へえ、みんなそうなのかい?」


「あっ、いや、俺とトウジとカイナ。それとソウジ……もだよね?」


「当たり前だろ!?生まれも育ちもハラクータだよ!」


 食事にありつけ上機嫌なソウジが答えたのを受け、俺は、


「……だそうです。でも、リョカさん達は、」


「別にどこでもいいじゃないか。今、住んでいるのはそいつらと一緒さ。それで構わないだろ?」


 俺の言葉を遮り、リョカさんがぶっきらぼうにそう答えると、


「そうね。別に構わないよ。言える程度でね。……だけど、尚更聞きたい事が出て来たねぇ……」


 ナガレさんを中心に、俺達を含めた七人は円になって地面に座っていた。


 彼女の弟達は、別の場所で同様に円になり、食事を取りつつ楽し気に騒いでいた。


 しかし、俺達のいる空間だけ騒げるような雰囲気になかった。


「何だ?聞きたいことって?言える範囲で何でも答えてやるぜ?」


 さすがリョカさん、そんな空気を全く気にせず質問を返す。


「そうかい、じゃあ、遠慮なく。……『アカツキ』は知ってるかい?いや、知ってるはずだよね?」


「ああ、もちろん。知っているさ。ここにいる俺達はな。だが、何故、お前が知っている?」


「ちょっ、ちょっと、リョカ!『お前』なんて、失礼じゃないか!」


「いいさ。気にしてないよ。好きに呼べばいいさ。あんたでも、お前でも、呼び捨てでもね。とりあえず、質問に答えようか。簡潔に言えば、情報収集は何をするにおいても大事な事さ。遊びにおいても、仕事においてもね。もちろん、ハラクータだけじゃないよ。ゲッシ、ダインク……他の街についてもそうさ」


「へぇ~……。驚いた。物知りな山賊もいるんだな」


 と、リョカさんが口にすると、ナガレは初めて不快な表情をし、


「誰が山賊だって?私達がかい?」


「他にいるか?」


「冗談じゃない!私達は違うよ!あんな奴らと一緒にするんじゃないよ!!」


 そうナガレさんが声を荒げると、今まで談笑していた男達から笑みが消え、静かに立ちあがる。


 そして、殺気立った視線がこちらへと降り注がれた。


「おいおい、そんなに睨むなって。じゃあ、聞くが、お前達の職業は何だ?こんな山奥で。他にどんな仕事があるんだ?俺達は、お前の弟達に襲われたんだぞ?」


「……そうだったね。そう思われても仕方ないね。とりあえず、座りな」


 ナガレさんが、くもの巣を払うような仕草をすると、静かに座り、あっという間に先程の騒ぎに戻っていた。


「私達は、山賊じゃない。むしろその逆さ」


「逆?」


「ああ、逆。あの山道の通行人を山賊から守る、いわば私設の護衛隊さ」


「護衛隊……にしちゃ、やり方が山賊と変わらなかったが?」


「まあね。一応、私達も頭を使ってるんだよ。模擬の山賊を相手に、通行人がどこまでやれるか……。手練れならそのまま放っておく。私達じゃない、別の強い護衛がついてるようなら、それも放っておく。私達が商売するのは護衛が全くついていないか、弱っちいのを雇ってる連中さ。そもそも、あんた達に襲い掛かったのは、あの子が殺されたと他の弟達が誤解したからさ。悪かったね。誤解させるような真似してさ」


「なるほどねぇ。商売も色々あるもんだな。って事は、ここにある食い物は……」


「呆れたねぇ。盗んだ物じゃないよ!全く…」


「じゃ、遠慮なく」


 そう言って、リョカさんは目の前にある食べ物に手を出し、口へ運ぶ。


「こっちは答えたよ。私の質問にも答えてもらおうか?」


「んっ?ああ、ん……、ハク。頼む」


 手のひらをハクさんの方からナガレさんの方へと動かし、答える様に促していた。


「はいはい。じゃあ、僕が。アカツキについて何を聞きたいのですか?」


「月が赤くて、化け物が出る。その化け物は、顔のない泥人形だね、ありゃ。薄気味悪い」


「実際に、見た。と、いうことですか?」


「ああ、見たさ。それも、つい先日な」


 俺達は皆一斉に顔を見合わせた。


『リョカさんが負傷した夜だ!』


 俺達は一様に頷く。


「その、『泥人形』について知りたいと、いう話ですか?」


 ハクさんは、あえてゆっくりと、ナガレさんに尋ねているような口振りだった。


「まさかっ!あんな物に興味なんて無いよっ!全身黒ずくめで、白い仮面付けた三人組さ!」


 ハクさんとは対照的に、早口でまくし立てる様にナガレさんは答えたのだが、誰一人、聞き逃さなかった。


「黒ずくめ?」


「白い、仮面……」


「……三人?」


 俺とトウジ、それにソウジは顔を見合わせながら、それぞれ口にした。


 泥人形に興味無しとナガレさんが言った為、俺達はてっきり『ミツキ』について聞きたいのであろうと予想していた。


 しかし、それは完全に裏切られた。


「ホウキ達…………、黒くなかった、よな?」


 俺はトウジに尋ねたが、「うん」とだけ短く答えが返ってきた。


「知ってるのかい?知らないのかい?どっちだい?」


 ナガレさんが俺をせかしていると、ハクさんが、


「その子達も、もちろん僕と彼も、その存在は初耳です。逆に、もう少し詳しく教えて頂きたいです。その三人は一体、何をしたのですか?」


 そう尋ねると、ナガレさんは悔しそうに答えた。


「……あいつら、私の大事なタツキを…………弟のタツキをさらって行ったんだよ!!」



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