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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第九章
168/211

第168話 アジト

 今朝方フシチヨから外の世界へと続いていた山道。


 山の中を、そう歩く機会のなかった俺でも、どこか神秘的な雰囲気を感じた。


 きっと、あの感覚はあの場所でしか味わう事は出来ないのだろう…


 と、朝の事を思い浮かべるのには訳がある。


 今現在、歩いているのも、また山道…


 しかも、今回は薄暗く、道は道でも獣道という感じだった。


「俺達元の道に戻れるかな?」


 小声で、トウジに聞いてみる。


 すると、彼は、


「多分、僕とアンジだけなら無理だろうね…」


「だよな」


 頷き、一言返事を返した。


 ナガレに誘導されるがまま、俺達六人はその後を追っている。


 先頭は、ナガレ一人。


 その後に俺達。


 そして、更にその後ろから、一戦交えた男達が全員一団となって付いて来ていた。


「ねぇ、私達…大丈夫なの?待ち伏せ……、なんて無いわよね?」


 馬車の中での威勢はどこへやら。


 不安そうな声でカイナが俺達に尋ねる。


「まっ、その時は、俺達がまた蹴散らしてやるから。そんな心配、必要ないって」


 ソウジが、得意気にそう言うと、


「おい、そこの丸いの。あんた達の腕はさっき、しっかり見せてもらったんだよ?それなのに、あえて私のかわいい弟達を、また仕向けると思ってるのかい?」


 そう答えたのは、先を歩くナガレだった。


「……」


 俺達は、答えに詰まった。


 何故か。


 それは、俺達の会話がナガレに聞こえていると思っていなかったからだ。


 俺達は前後を等間隔でナガレ達に挟まれている。


 しかし、後ろから話し声は聞こえるが、その内容までしっかりとは聞き取れないような距離間だ。


 もちろん、俺達もさっきまで小声で話していた訳では無い。


 かといって、大声という訳でもなく、普段通りの声量だった。


『聞かれてた…のか?この距離で?』


 口を開きかけた時、


「いや、そうですよね。ナガレさん。そんな事ある訳ないですよね。因みにですけど、俺の名前はソウジです。『丸いの』はやめて下さいよぉ。あっ、ナガレさん、耳良いですね」


 俺より先に、俺達が驚いた事をそのままソウジが本人に尋ねていた。


「別に、アンタに褒められてもうれしくもなんともないね」


 ナガレはソウジに素っ気なく答えた。


 俺とトウジは目を合わせた。


『やっぱり聞こえてるんだ…』


 そう思うと自然と俺達の口数は減っていった。


 そして、それから暫くした時、


「着いたよ!こっちへ」


 と、ナガレが振り向き、俺達を手招きする。


 走る事なく、俺達はゆっくりとそちらへ向かう。


 ナガレの後ろは確かに茂みが無く、光が差し込んでいる場所のようだ。


 どうなっているのか、薄暗い道を歩いていたせいで抜けた先が良く見えない。


 程なくしてナガレの隣へ着くと、その空間がはっきり見えた。


「ようこそ、『ジャノメ団』のアジトへ。…って、言っても何もないけどね。まあ、その辺でとりあえず休んでおくれ。ほらっ、お前らっ!メシの用意しなっ!」


 ナガレが弟達と呼んでいた男達に命令すると、一斉に支度に取り掛かった。


 慌ただしく動く男達。


 家の中ではなく、準備は外で進められている。


 その間に、俺は周囲を観察する。


 円を描くように切り開かれた空間。その材木を使用したのだろうか、家が一軒建っている。


 ドリュウ様の家とどちらが大きいのだろうか……


 それほど差は無いかもしれない。


 しかし、その作りは雲泥の差がある。


 雨風はしのげるだろうが、暑さ寒さに耐えられるのか……


 丸太作りのこの家は、もしかして、自分達で建てたのではないのか?


 ただ、そこへ住む人間の数は、間違いなくこちらが多い。


「二十人はいるな…」


 頷いているのか、数えているのか、リョカさんが首を上下させながらそう呟いた。


「に、二十人…って、そんなに兄弟がいるんですか?」


 驚きながらおれがリョカさんにそう尋ねると、


「おかしいか?」


 質問に質問が返ってきた。


「えっ?おかしくないんですか?」


 そう言うと、五人の視線が俺に集中する。


 みんなの顔を見ながら、


「えっ?なんで?」


 と、尋ねると、トウジが俺の左肩をポンッと叩き、首を横に振る。


「アンジ……、君こそ何を言っているんだい?」


「そうよ、アンジ」


 カイナもそう言いながら、右の肩に手を置き、首を横に振る。


 そして、


「ここにいる彼らもきっと私達と同じって事よ、アンジ」


「あっ!そういう事か」


 やれやれというように首を振りながら、


「やっと分かったのかよ」


 ソウジは呆れていた。


 そして、それとは別に、


「へぇ~、あの子達もそうなのかい…珍しい事もあるもんだね…」


 離れた場所で声を漏らすナガレの姿に、俺達は気付いていなかった。



 



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