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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第八章
150/211

第150話 動揺、落胆、その先に

「長…、それは、間違いないのですか?」


 先程までとは違い、ハクさんの声に余裕がない。


「すまない。この様な事で嘘をついても仕方あるまい。本当の事だ、ハクよ」


「ウソだ………。ウソだ、ウソだウソだ!」


「おい、アンジ!!落ち着け!!」


 がぶりを振りながら叫ぶ俺の両肩を押さえながら、リョカさんがそれを制す。


「お前が取り乱すなよ、アンジ。今は、俺がそうやって取り乱す所だろ?どうしてくれるんだよ…。一先ず、落ち着け、アンジ」


「リョカ……さん…」


 俺以上に落胆しているはずのリョカさんに慰められている俺……


「諦めるなって。アンジ。治療が必要な俺は諦めていないのに、お前が先に諦めてどうするんだよ。笑えてくるぞ?」


「でっ、でも、リョカさん。ここで治すことは出来ないって…」


 うな垂れながらそう言うと、


「そうらしいな。さっきの話だとな。……しかし、だ。何も無かったら、そもそもリンドウが此処へ来るように指示すると思うか?」


 リョカさんにそう聞かれた俺は、首を横に振る。


「あいつが、どうやって治るか教えてくれたか?」


 その問いにも俺は首を横に振った。


「だよな。つまり、さっきの長の話と併せると、ここにある何かであって、術ではないって事…。みたいだな。そう思わないか、アンジ?」


 ここへ来る前のリンドウの話、先程の長の話……。


 リョカさんの目を真っ直ぐみつめ、俺は一つ大きく縦に首を振った。


「アンジ。俺は、諦めないぞ。必ず…、必ず約束の時間までに、あのじいさんを見つけ出す!!だが、一人で探すには広すぎるみたいだ……。だからアンジ、お前も協力してくれないか?」


 俺の肩を握る手に強く力がこめられる。


「もちろんですよ。リョカさん。俺は、リョカさんを助ける為に、一緒にここへ来たんです」


「ああっ!!また、自分だけみたいな言い方してる!アンジだけじゃ無いでしょ!?私達、みぃんなでリョカさんを助けるんでしょ?」


 と、後ろから怒鳴られ、


「すいません、リョカさん。俺達、みんなの意見です……。みんなで、その老人を捜しましょう…」


 と、訂正した。


「ははっ。そりゃ、ありとう」


 力を緩め、両肩を一度叩くとリョカさんは、俺から手を離した。


「よし、とりあえず、時間も無いことだ。そろそろ捜索を開…」


「少し、少し良いか、リョカ?」


「何だよ。まさか…、村を歩き回るな、とか言わないよな?それは流石に、勘弁だぜ?」


「まさか!流石にこの状況で協力しないと言えるものか!それは別に構わん。それではない」


「じゃあ…」


「老人…とは?じいさんとは、一体誰の事だ?私の事ではないのか?」


 真剣な表情で尋ねる長に、リョカさんは首を横に振りながら、


「違う。あんたじゃない。さっき、ハクが言わなかったが、俺は一昨日夢を見たんだ。その夢に、じいさんが現れてな。話の成り行きで、条件付きで治してくれるって事になったんだよ。だからここへ来て、ドアが開いた瞬間、あんたの顔を見て『違う』って分かってから、俺は早く移動したくって仕方がなかったんだよ。一刻も早くじいさん達の顔を見て回りたいんだ」


「老人……。リョカ、急いでいる事は、良く分かる。だが、もう少し、聞かせてくれ。その老人の背格好は?身なりは?どのような感じであった?」


 長の質問に、リョカさんは空を見上げ、眉間にしわを寄せ、その時の事を思い出しながら、ポツリ、ポツリと答える。


 リョカさんが答えるごとに、長は頷き、徐々に目を大きく見開いていく。


「そうか…………、まさかとは、思ったが、特徴がこれだけ一致するとなると間違いないか…」


「何だよ。結局知ってるのか?」


 呆れたようにリョカさんがそう言うと、長も首を横に振りながら、ため息交じりに、


「もちろん、知っている。知っていたのだが、許せ、リョカよ。まさかその御方は生きてはおらん、はずだ。何せ、私も実物を見たことがない。あくまでも書物の中でのみ、知る御方だからな。…いやはや、この歳まで『ドリュウ』様は架空の存在だと思っていた、と言うかそう信じていたのだがな…覆されてしまった」


 と返した。


「長。そんな事で納得されても、俺達は困るぜ。むしろ、俺達が途方に暮れるような話じゃないかよ。なあ、ハク?」


 リョカさんがハクさんに同意を求めると、見るからに落胆した表情で、


「確かに、そうだね。リョカ……」


 と、短く返事をした。


「そうかもしれん。しかしだ。一歩前進したのかも知れんぞ、リョカ。相手は、ドリュウ様だということが分かった。と、言うことは、あの御方の家に向かえば、何かしらあるかもしれん」


「えっ!?」


 長以外の全員がその言葉に驚く。


「家が、家が残っているのですか?」


 そう尋ねると、長は頷き、


「もちろんだとも。架空、偶像だと思われてはいたが、我々の有する術の生みの親とも言われていた御方だ。その御方が住まわれていたとされる家は、今もこの村の住人の手によって大切に保護されている。そのままの姿でな。………入れる様に私が、段取りを取っておこう。今から向かうがよい」


 その言葉により、皆の表情が甦る。


 互いに顔を見合せ頷く。


「よし、行こう!」


 リョカさんの号令に「はいっ!」、と返事をし、皆一斉に動き出した。


 

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