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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第八章
149/211

第149話 解毒不可能?

 トントントン……


 玄関のドアをハクさんが叩くと、少し間を置いて奥から声が聞こえてきた。


「はい、誰かな?」


 若くはない声色の男性の声。


 それと共に、ゆっくりとこちらへ近付いてくる足音。


「おはようございます。わたくし、ハクと申します。少々お尋ねしたいことが有りまして、お伺いさせて頂きました」


 と、ドアの側に向かってハクさんは声を掛けた。


「ハク………はて、この村にその様な名前の者が居ったかな?……………」


 そう言いながら、奥から鍵を開ける音が聞こえ、ゆっくりとドアが開いた。


 リョカさん達よりも低く、俺やトウジとあまり変わらない身長の老人が姿を現す。


 大勢で居たことに驚いた顔をした後、ハクさんの顔を見て、


「ああ……、お前は、ハクか」


 そう声を掛けられると、ハクさんは一礼し、


「お久しぶりです、長」


「ああ、久しいな、ハクよ。顔は余り変わらない様だが、体は随分と大きくなったな。大分父親に似てきたのではないか?」


「そうですかね?それは、なかなか自分では分からないものですよ」


 ハクさんは和やかに笑顔で答えていた。


「それで、後ろの者達は?」


「はい、実は言いにくいのですが、彼らは外の人間です」


「何と……」


 ハクさんに長と呼ばれていた老人の眉間にシワがよる。


「長、先程も申しましたが、実は彼らの事で相談に上がりました。無礼、ぶしつけを承知でお伺い頂けないでしょうか。よろしくお願いいたします」


 先程とは違う意味合いでハクさんが再び頭を下げる。


 リョカさんも、それにソウジも続けて頭を下げている。


 慌てて俺も、残りの二人も頭を下げた。


「なんと……。そこまでするということは、余程の事なのだな?」


「はい、私どもにとっては一大事です」


「そうか………、やれやれ。とりあえず、頭を上げてもらえないか?」


「いえ、長が了承して頂けるまでは上げません」


 下を向いたまま、ハクさんがそう言うと、長は、


「なんとまあ、頑固なところまで、父親に似ておるな…。いつまでもそうさせてはおられん。分かった。話を聞こう。」


 その言葉を聞くと、ハクさんは、一度顔を上げた後、


「ありがとうございます、長!」


 と言うと、再び頭を下げた。


「礼はよい。とりあえず、中へ入れ」


 長は、半身になり、一行を中へ迎え入れようとしたのだが、頭を上げたハクさんは、


「いえ、せっかくの、ご厚意ではございますが、長が良ければ、ここで話を聞いていただけないでしょうか?」


「なんと、まあ、そこまでの急ぎの用なのか?」


 ハクさんは、真顔で「はい」と、一つ頷いた。


「そうか、では、ここで話を聞こうか。じゃが、その前に、ワシの分だけでも椅子を持ってきてもよいかな?」


「もちろん、構いません。お待ちいたしますとも」


 長は一度奥へと戻り、再び戻って来る時には、こじんまりとした椅子を一脚持ってきた。


 そして、腰を下ろすなり、


「待たせたな。では、話を聞くとしようか」


 と、ハクさんを促した。


 ハクさんは一つ頷き、口を開いた。


 ここへ来た目的。


 ここへたどり着くまでの経緯。


 もちろん、それは過去へさかのぼって、俺達が生まれたところまでの話…をかいつまんで、しかし、要点はしっかりと押さえて話をする。


 黙って聞く長。


 やがて、一通り話を聞き終えると、


「成程。そこのリョカと、申す者の体内に入っている毒を消せるモノ…、つまり解毒出来るモノを探しにここまで来た…と」


「はい、その通りです」


「そうか、……リョカ…と、呼んでもよいか?」


「ああ、別に構わないぜ」


「リョッ、リョカ!長に向かってなんて口を」


 顔を真っ赤にし、ハクさんが慌てて注意する。


 しかし、


「はっはっはっ、まあまあ、そう怒るな、ハクよ」


「しかし、長…」


「よいよい、そんなことよりも、リョカ。その傷口を見せてはもらえぬか?」


「傷口か?別に、いいぜ。ほらよっ」


 そう言うと、リョカさんは上着を捲り上げ、先日、ホウキの針が刺さった部分を指差し、


「ほら、ここだ」


「どれどれ、………。……リョカよ、何か治療は施したのか?」


「治療ねぇ、さっきハクが話したと思うが、とりあえず、ハクにやってもらっている位だな」


「そう…か」


「ああ、それと、ハクは話さなかったが、昨日…一昨日だったか?おかしな夢を見てな。それ以降は全く痛みがないんだ」


「なんと…夢。か。…そうか。………リョカ、言い難いのだが」


「いや、構わない」


「この集落にお前の傷口、いや、解毒を出来るモノは『いない』。何故ならば、解毒という術自体が現在必要とされていないからだ。そもそも、毒で侵すという術を誰も使用しない、する必要がないのだから、当たり前と言えば当たり前の事だが…な」


 長の言葉に皆が凍り付く。


「そっ、そんな……」


 俺の口から自然と声が漏れた。

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