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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第八章
146/211

第146話 開錠

 その翌日。


 アンジ達一行の朝は今日も早かった。


 とはいえ、昨日よりも若干遅いだろうか。


 辺りに時間を示す物がない為、はっきりとは分からないが、体感としてそう感じた。


 昨日よりも片付け、支度に時間はそう掛からなかった。


「おっ、今日は早いな」


 リョカさんがそう言うと、俺は、


「さすがに荷物もそう出していなかったですしね」


「まあ、そうだろうな」


「リョカさん、これから直ぐ出発ですか?」


「そうだ。一先ずこのままこの湖の右側へ進むぞ」


 そう言いながら、リョカさんは湖の外周を走る道を指でなぞる仕草をした。


「右へ……ですか。向こうに何かあるんですか?」


 首を傾げ、リョカさんに尋ねた。


「まあな。そういうことだ。とりあえず、移動するぞ。早く皆乗れ」


 言われるがまま、俺達四人は荷台へと乗り込んだ。


 リョカさんはそれを確認すると、馬をゆっくりと誘導する。


 あっという間に目的地へ着いたのか、リョカさんは馬を止めた。


 止めた場所は道から外れ、茂みの中へと入っていた。


「よし、皆、降りるんだ」


 リョカさんはそう言うと、ハクさんと二人先に馬車から降りる。


 俺達もそれに続く。


 リョカさんとハクさんは馬を近くにあった気に繋いでいた。


「何をしているんですか?」


 俺がそう尋ねると、


「見りゃ分かるだろ?馬を繋いでいるんだよ。逃げないようにな」


「いや、それは分かりますけど……これからどうするんですか?」


『馬を繋いでは移動出来ないじゃないか』


 内心そう思いながら尋ねると、


「これでいいんだよ。ここからは、歩きだ。で、いいんだよな、ハク?」


「そうだよ。まあ、そう距離も無いから、みんな安心して」


 俺達四人は顔を見合せた後、


「分かりました」


「私も大丈夫。だって昨日からあんまり動いてないし……」


 と、リョカさん、それとハクさんに返事を返した。


「よし、まあ、そういうことだ。出発するぞ」


「って、リョカは何処へ向かうか知らないでしょ?全く……」


「まあ、そう言われりゃそうだな。それじゃあ、ハク、案内してくれ」


「もちろん、そのつもりだよ。みんな、付いて来て」


 そう言うと、ハクさんは先頭を歩きだした。


 俺達も、その後に続く。


「ハクさん、あの、聞いてもいいですか?」


「何だい、アンジ?」


「いや、大した事じゃないと思うんですけど……こんなに朝、早いのには何か理由があるんですか?」


 俺がそう尋ねると、トウジやカイナ、それにソウジも確かに……と、いうような顔をする。


「ああ、何だ、その事か。ごめんね。早起きさせちゃって」


「いや、別に俺は、全然構わないんですけど」


「何だよそれ、俺達は問題があるみたいな言い方して。俺達も別に構わないよな?」


 ソウジはそう言って、トウジとカイナの顔を見る。


 二人とも「そうそう」と言って頷いていた。


 それを見た俺は慌てて訂正しようとしたのだが、それより先にハクさんが、


「ごめん、ごめん。まあ、ケンカしないでよ。とりあえずね、この時間じゃないといけないって理由は、あると言えばあるかな。そうだね……無い訳じゃないよ」


「つまり、あるんだろ?その言い方よ」


 と、リョカさんが口を挟むと、


「そうだね。……実は、あまり人目に付きたくなかったんだ。今は『誰も知らない』事になっている場所に行くわけだからね。辺りに人がいたり、見られたりしたら、後々面倒そうじゃない。それで、人目を避けるとなるとね」


「この時間帯になるって事か……さすがに、誰も通らないわな、こんな時間には。って、事らしいぞ、アンジ」


「なるほど…」


 と、俺が答えた後、ハクが、


「で、もう着いたよ」


 と言って立ち止まったので、皆の目が点になった。


「……はっ?」


 俺達を代表した、リョカさんの一言だった。


「とりあえず、目的地だよ」


「目的地って……ここは」


 後ろを振り返れば、姿は見えないものの、馬達の鳴き声はまだ聞こえる距離だ。


 しかもそこは、元々野営していた場所から通って来た道。


 街道の真ん中にハクさんと、俺達は立っていた。


「ハク……何の冗談だ?」


「冗談な訳無いでしょ」


「おいおい、じゃあ、聞くが、一体何処にその入り口があるって言うんだよ!」


 リョカさんは、大げさな身ぶりをしながら、ハクさんに尋ねた。


 俺達も同様見回すが………何も見当たらない。


 その様子を見てハクさんは、


「みんな、何やってるのさ……見えるわけ無いでしょ。もぉ………さあ、いいからこっちに来て」


 そう言うとハクさんは、街道を横切り、湖の方へと近付いていく。


 そして、大きな岩の前で立ち止まった。


 俺達も後を追い、その場へ向かう。


 大きな岩……といっても、俺の身長よりも若干低いが、横幅は、俺の三倍はありそうだ。


 ただ、特に変わった様子は無さそうだが……………、いや、一ヶ所だけ、岩の側面に妙な凹みがあることに気付いた。


「ハクさん、この凹みは……」


 と、尋ねたのはトウジだった。


「そう、そこが大事な場所さ、トウジ。君も知っておいた方がいいよ。………フシチヨは、いわば、カギの掛かった家……みたいな感じかな。だから、中に入る為には、カギを開けなくちゃいけないんだ。そして、そのカギっていうのが、これさ」


 そう言うと、ハクさんは襟元に手をやり、服の中から首に下げていた袋を取り出し、首から外す。


「この中にはね、カギとなると水晶が入っているんだ。これを当てると」


 そう言いながら、ハクさんはその袋を握り、凹みに当てると、


「ウソッ!!」


 カイナが、不意に声を上げた。


「どうした、カイナ」


「みっ、湖の上に道が……森があるの!」


 震えながら指差す方へ、俺も、他の三人も同時に目を向ける。


「…………」


「…………」


 カイナの言う通り、先程まで何も無かったはずの水面に一筋の山道が延びていた。


 かといって、湖全体がそうなっている訳ではない。


 変化しているのは、限られた一部のみ………


 違和感しかないその光景に、目を奪われる俺達を後目に、役目を済ませた袋を首に掛けながらハクさんは、


「何してるのさ、早く行くよ。急がないと、閉まっちゃうんだからね。だから、ほら、みんな、急いで」


 一人、冷静に先へ進んで行く。


 残りの俺達は、困惑しながらも後を追ったのだった。


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