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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第八章
141/211

第141話 一過性

「リョカさん!」


「リョカ!リョカ!!」


 俺達がそう呼び掛けると、リョカさんは苦しそうに、


「ううっ……」


 そう声を漏らしながら、ゆっくりと目を開ける。


「リョカ!大丈夫かい?リョカ、聞こえる?」


「大丈夫だ……耳元で、そんな大声出すなよ、ハク」


 苦しそうだが、ハッキリとした口調でリョカさんがそう言うと、


「ごめん、でも、さっき急に苦しみ出したからさ………悪化したのかと思って……」


 心配そうに見つめるハクさんに対し、リョカさんは、


「そうだったのか……済まなかったな」


 そう言いながら、身体を起こした。


「だっ、大丈夫かい?起き上がって?」


 心配そうにハクさんがそう尋ねると、リョカさんはハクさんの顔を見た後、自分の両手を見つめながら、


「ああ、とりあえず、大丈夫………みたいだ…………な」


「そっ、そうなんだ。良かった」


 安堵の表情を浮かべ、ハクさんがそう言った。


 回りにいた俺達もホッとした。


 その様子を見た後、リョカさんは辺りに目をやり、


「ここは?………もう、到着したのか?」


 横たわっていたのは荷馬車の中ではなく、ベットの上だった。


 回りの様子からして何処かの部屋の中にいることをリョカは理解した。


「違うよ。ひとまず今日はゲッシまで。って、出発する前に話したじゃないか。もう忘れたの?まだ一日も経っていないっていうのに」


 ハクさんが呆れ気味にそう言うと、


「そんな事話したか?……覚えていないな。まあ、いいさ」


 そう答え、リョカさんは窓の外に目を向けた。


「…もう夜か。とりあえずもうメシ食ったのか?」


 ハクさんの方へ目を向けながら、リョカさんがそう尋ねると、ハクさんは首を横に振り、


「いや、まだだよ。でも、そろそろ行こうかって話を皆でしていた所だったんだ」


「そうか」


「どうする、リョカ?一緒に行く?それとも、ここで待ってる?」


 ハクさんが尋ねると、リョカさんは彼から目を切り、


「そうだな………よし、………せっかくだしな。俺も行こうか」


 そう言いながら、俺達の顔を見渡した。


「リョカさん……」


「ん?どうした、アンジ?」


「いや、その………大丈夫……なん…ですか?」


「何でだよ?一緒に行くとまずいのか?」


 そう聞かれ、俺は慌てて首を振り、


「いや、そういうつもりで言ったんじゃないんですけど」


「リョカ。アンジは、君の身体の事を心配して聞いてるんだよ。そうだよね、アンジ?」


 俺は首を縦に数回振り、


「もちろんです」


 と、付け加えた。


 すると、リョカさんは、ベットから降りて床に立ち、両手を広げ、


「だろうな。だけど、ほら、大丈夫だ。この通りな。立てるし、何なら、逆立ちでもして見せようか?」


「…いや、さすがにそれは……」


 俺が返事に困っていると、


「はいはい、じゃあ、皆で行こう。リョカもあんまり調子に乗っちゃダメだよ。……さあ、行こう」


 ハクさんは、リョカさんの背中を押しながら、俺達より先に部屋を後にした。


「って、事だ。俺達も行こうぜ、アンジ。腹、減ってるだろ?」


 ソウジの誘いに、


「…そうだけど」


 曖昧に返事を返すと、カイナが、


「何?どうしたの、アンジ?お腹、減ってないの?」


「そんな訳ないさ。減ってるよ」


「じゃあ、早く行こうよぉ」


 カイナは自分のお腹を押さえながら、俺を促す。


「ソウジ、カイナと先に行ってて。アンジは僕がすぐに連れて行くから」


「そうか?じゃあ、トウジ、任せた!さっ、カイナ先に行こうぜ」


「はぁい。んじゃ、トウジ、よろしくね」


 二人が出ていき、部屋には俺とトウジだけになった。


「なぁ、トウジ……本当にリョカさんは大丈夫なんだろうか……」


「あぁ~~、やっぱり。アンジはそこを、気にしてたんだね。でもさ、それ、リョカさんにしか分からない所じゃない?本人が大丈夫だって言っているんだから、僕達は信じるしかないんじゃない?……仮に一過性のものだとしてもね」


「一過性?」


「うん。そう。もしかしたら、ハクさんの治癒の効果で一時的に善くなっているのかもしれないってことさ」


「じゃあ、やっぱり……」


 そこまで俺が言いかけると、トウジが口を挟み、


「だから、だよ。アンジ。今、しっかりと食べてもらって、リョカさんが元気なうちにフシチヨに行って、本当の意味で元気になってもらわないとね。そうじゃない?」


「まあ、そうだな」


「だったら、そこへ向かう僕達も体力付けとかなきゃね。だから、ほら行くよ。団長がいつまでもそんな事で悩まれてたら、団員の僕達が困るんだけどね!」


「そうですか、………それはすまん。以後きをつける」


 わざとらしく、偉い大人が言いそうな口ぶりで俺が、部屋の入り口の方へ向かって歩きながらそう言うと、


「何それっ。変なの」


 とトウジが言った後、二人でひとしきり笑ったのだった。

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