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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第一章
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第14話 連戦

  『俺達があいつを退治する…』と、あのアンジという子には言ったものの、俺達の現状はそう楽観出来るものではなかった。


  ヒウムに刀…ヒトツキに対抗出来る武器が無いに等しい。


 いや、無いと言ってもよかった。


 ましてや今は俺達は三人しかいない。


 イスミ達が戻って来たにしても最低でもあと一時間、どうにかして耐えなければならなかった。


  一時間…なんとかするしかない。


 ヒトツキに視線をやりながらタイラは覚悟を決めた。


  「カイ、リュウ」


  「はい」


  「はい」


  タイラに呼ばれた二人はヒトツキを見ながら返事をした。


  「俺達の置かれている状況は決してよくない」


  「…分かっています」


  カイと呼ばれた男が返事をする。


  「でも、あの子達を助ける為には、やらないといけないですよね」


  リュウという男が後を続けた。


  タイラは「そうだ」と言って頷いた。


 さらに、


  「だからといって無茶はしないでくれ。頼む」


  そう言うと、カイとリュウは声を揃えて、


  「はい」


  と返事をした。


  「よし、ではまずヒトツキの前にいる、あのトウジと言う子を安全な場所に二人で移動させてくれ。その間俺がヒトツキの相手をする」


  「しかし隊長、それでは…」


  「そうです。あまりも無茶です」


  タイラの命令にカイとリュウが慌てる。


  「大丈夫だ。それくらいの時間、なんとかなる。それに…心配なら早く戻って来てくれ」


  笑いながらタイラがそういうと、二人共渋々頷いた。


  「…」


  タイラは刀を右手に握りしめ、一呼吸すると、


  「行くぞ」


  と、言ってヒトツキに向かって走り出した。カイとリュウも後に続く。


  ヒトツキも自分に向かってくる俺達に気付いたらしく、こちらに顔を向けている。


『次の獲物はこいつらだ』とでもいうように。


  「そうやすやすとやられるものか」


  走りながらタイラは呟く。


  元々それほど離れていなかったこともあり、タイラ達がヒトツキの前に着くまでに余り時間は掛からなかった。


  そして、倒れているトウジより前に立ち、刀を構えると、


  「さあ、早く連れていけ」


  二人の隊員に指示を出した。


 二人は無言で両脇からトウジを抱えると今来た方へ走り出した。


  しかし、今まで微動だにしなかったヒトツキが突如として歩みを進め始めた。


 当然だ。


 獲物だと思っていた人間達が自分から離れて行くのだから。


  「そうはさせるか」


  タイラがヒトツキの前に立ちはだかる。


  「お前の相手は俺だ!」


  そう言いながら刀を振り上げ、ヒトツキの肩口に向かって振り下ろした。


  無論、結果は分かっていた。


 この刀ではヒトツキの体を傷付けることなど出来無いことは。


 だが、自分に注意を向かせ、足止めすることは出来る。


 そうすればカイ達の時間が稼げる、と。


  タイラの思惑通り、ヒトツキは歩みを止め、彼と対峙した。


 それを確信したタイラは更に暫撃を繰り出した。


 ただひたすらに刀を振る。


 ヒトツキが自分だけに集中するように。


  普段なら、日々刀の稽古をしているタイラにとって、それはさほど苦にならないはずだった。しかし、今は違っていた。


  …刀が重い。


  それもそのはずだった。


 これまで幾度となくヒトツキと戦い、退治してきた。


  だか、その方法が違う。


 ヒトツキ数体を一カ所に陽動し、ヒウムを使って動けなくなったところを俺のこの腰にさしている刀『オウケン』でまとめて粉砕する…それがいつものやり方だった。


  『力』も一度使えば済んでいた。


 そのため過去に連戦は経験が無かった。


 今日、今が初めて『力』を使いきった状態でヒトツキを相手にしていた。


  普段、稽古の時なら『力』は一時間程度で戻ってくる。


 しかしそれは戻すことに集中しての話しだ。


 ヒトツキを相手に実戦の中で、連戦の中では無理があるのか?


  刀を振るタイラの中に不安が広がる。


  後一時間…今どれほど時間が経過したのだろうか…

 

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