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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
136/211

第136話 決意

 一夜明けた翌朝。


 いつもより早く目が覚めた。


 床に就くのが早かった訳ではない。


 むしろ、普段よりも遅い時間だったと思う。


 しかし、それでも俺の目覚めは早かった。


 リョカさんの状態が気になったからだ……


 シンロウ達がいなくなった後、ハクさんがいつもの様に治癒してくれていたのだが、余り効果がある様子では無かった。


 それでも、何とか連れて帰ってきたものの、その後の対処を大人達に任せた為、俺はその後どうなったのかを知らない。


 だからこそなのだろうか……


 ひとまず、俺は部屋を出て、食堂へ向かう事にした。


 部屋を出て、階段を下りていると、ちょうど階段を上ろうとするトウジと会い、


「驚いた。どうしたの?アンジ、今日は早いね!」


「何だよそれ…、いいだろ?たまには…」


 俺がそう言うと、トウジがすまなそうに、


「あっ…、そうだね。ごめん」


「別にいいさ」


 と、答えながら階段を下り、トウジの前で止まる。


 そして、


「………で、どうなんだ?」


 俺の意図が伝わり、


「ん?ああ、えっと」


 そこまで言うと、トウジは一旦周囲を確認し、小声で、


「実は、僕もまだ知らないんだよね…」


「はぁっ!?」


 思わず声が大きくなる。


『小声の必要ないだろ、それ!!』


「し~~っ!大声出さないでよ。冗談だって…、ごめん」


「お前なぁ…、」


「分かってるから、ごめんなさい。…でね、実はその事かどうか分からないけど、今から君を起こしに行くとこだったんだ」


「俺を?何で?」


「さぁ?園長が呼んで来いってさ」


「園長が、か。あんまり良い予感はしないな」


「そうだね、でも、とりあえず行こう」


 トウジに促され、二人でそのまま園長の部屋へと向かった。


 園長の部屋の中には、園長とソウジ。


 それと、カイナとリンドウがいた。


 しかし、部屋の中は静かなものだった。


 空気が重く感じる。


 いつも笑顔のソウジでさえ、何やら微妙な表情を浮かべていた。


「それで、園長。お話というのは何でしょうか」


 切り出したのはトウジだった。


「少し待ちなさいトウジ。もうすぐ、ハクが来るはずだから」


「あっ、そうだったんですね。すいません」


「いや、謝るは無い。それに謝るのはこっちだ。朝早くから、皆すまないな」


 すると、突然カイナが


「ホント!いい迷惑!!」


「何言ってるんだよカイナ。大丈夫ですよ、園長、俺達平気ですから」


 慌てて俺が訂正すると、園長は、


「そ、そうか…」


 取り繕った表情を見せる。


 そこへ、扉をノックした後、ハクさんが部屋の中へと入って来る。


 その顔はとても疲れている様に見えた。


「大丈夫か、ハクよ?」


 園長が心配そうにそう尋ねると、


「ええ、いや、まあ、…大丈夫です。それで、ジンさん話というのは一体何ですか?」


「ああ、出来るだけ手短に話すとしよう。他でもない、リョカの事だ」


『やはりそれか…』


 俺達は、無言で頷き、先を促す。


「昨晩の出来事はハクから聞いておる。皆、大変だったな。お前達が連れて帰ってきたリョカは、とりあえず、まだ生きておる」


「はぁ~…、良かったぁ…」


 そう漏らしたのは、ソウジだった。


 その物言いをみて、俺もトウジも顔がほころんだ。


 しかし、


「おい、まだ本題はここからだ。…ひとまず、リョカは生きておるが、『辛うじて』と、いう状態だ。そこにいるハクのお陰でな」


「そっ、そんな………」


「で、でもさ、その内、良くなるでしょ?今までだって、ハクさんに治せ…」


「今回は、治りません」


 そう言い切ったのはハクさんではなく、リンドウだった。


「残念ですが。あの毒は、ハクさんの力では除去出来ません」


 ハッキリとそう言い切る事に、俺は苛立ち、


「じゃあ、どうするんだよ!!もう治らないって言いたいのかよ!!リンドウ!」


「よさないか、アンジ!!」


 と、園長に止められたのだがどうにも怒りは収まらない。


『一体どうしろって言うんだよ!!!』


 怒りを込めた眼差しで、俺は彼女を見る。


 しかし、当の本人は涼しい顔で、


「…続けます。あの人。リョカさんに残された猶予はあと五日。そして、あの人。リョカさんを救うすべはここにはありません」


 そこまで聞いたトウジが、


「…ちょっと待って。じゃあ、それはどこにあるのさ?リンドウ?君には…それも分かっているのかい?」


 そう尋ねると、リンドウは頷き、


「ええ、もちろん。でも、事の結末は分からない。あなた達次第だから…」


 俺は、皆を確認するように見渡す。


 誰一人、首を横に振る者はいなかった。


 それに応じるように俺も一つ頷き口を開く。


「リンドウ……その場所、教えてくれ。俺達が、俺達の力でリョカさんを救う!!俺達に選択肢はそれしかないんだ!!!」



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