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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
135/211

第135話 ミツキ撤退

 ドサッ!!!!


 という音と共に、俺の目の前に落ちてきたシンロウの左腕。


 程無くしてそれは、砂となり、地に帰っていった。


 手応えはあった。


『ヨシッ!これで、残りはホウキだけだ!』


 俺は内心そう思っていたのだが、


「貴様ぁ……」


 低く、そしてうなるような声が聞こえた。


 サッと顔を上げ、声の主を確認する。


 右手で左目を押さえたまま、俺の顔を見下ろすシンロウ。


「貴様は……貴様だけは!!ただじゃおかねぇ……」


 そう言いながら、左腕をゆっくりと前に出す。


 するとその時、


「ざっ、残念だったな…シンロウ……」


 と、リョカさんがシンロウに声を掛けた。


「何だと!?」


「残念だったなって、……言ってるんだ…よ。お前……再生出……来ると思ってるんだろ?……あいにくだった……な。『力』使って…切られた部分は、もう…もとには……戻らねぇんだよ……」


 リョカさんが苦しそうにそう告げると、


「馬鹿なっ!!」


 と、真偽を確かめる様に、シンロウは左腕に力を込める。


 だが………


「なっ?……諦めろって…………」


 変化のない左腕を見つめるシンロウに向かって、再びリョカさんが声を掛けた。


「黙れ!!瀕死の貴様に、言われたくないわっ!!!」


 苛立ちを隠さず、シンロウはリョカさんに近付き、彼の左腹部を蹴りつけた。


「ううぅぐっ!!」


 リョカさんから苦しそうな声が漏れる。


 その様子を見ながら、


「俺の事を言える様かよ。それが!……たとえ、今この左腕が無くとも……貴様の息の根は止めること位は出来る」


 右手を左目から離し、再び拳を握ぎる、シンロウ。


 人間ではない、ミツキのシンロウ。


 血が滴り落ちる事もない、彼の顔の左側には額から口元にかけて、大きく裂かれた様な傷が入っていた。


「これで、少しは…気が晴れる」


 拳を振り上げながら、シンロウがリョカさんに向かってそう吐き捨てた。


 それを見た俺は、


「止めろ!シンロウ!!」


 刀を構え直しそう叫ぶと、頭だけをこちらに向け、


「黙れ小僧!!お前は次だ!!黙ってろ!」


「そうは、………させるものか!」


 後どれだけ自分に『力』が残っているか分からないが、


『今は、迷っている場合じゃない』


 俺は再び、コオロキに『力』を込めたのだが…………その光は先程よりも弱く感じる。


 しかし、それでもシンロウにとっては脅威にであることに違いないはずだ。


「おっと、俺もまだ戦えるぜ!!シンロウ!!」


 と、いつのまにかシンロウを挟む様に、俺の向かい側にソウジが立っていた。


 両手に持つ曲刀、ユウオウとケイカンもまた黄色い光を帯びている。


 動けないリョカさんは別として、二対一の構図になっていたのだが、シンロウから怯む様子はうかがえない。


 それどころか、


「ガキ共が、図に乗るんじゃねぇぞ…」


 と、交互に俺達の顔を見ながら威嚇する。


 そして、一度リョカさんを見下ろした後、


「こいつを先にと思ったが、止めだ!貴様らを先に…」


 そう言いながら、俺達を品定めするように顔を動かした。


「いい加減にして下さい、シンロウ…何時までも、見苦しいです」


 と、背後からする声にシンロウは驚き、


「!?ホウキ!」


 そう言いながら、とっさに振り向こうとしたのだが、ホウキがそうはさせなかった。


 シンロウの首に左腕を回し、後ろを向くことが出来ない様に締め上げる。


「きっ、貴様、何をする!」


「何時まで、その醜態をさらすのですかと言っているのです。あの人間にとどめを刺すどころか左腕まで失って……これ以上は、無意味です。もちろん、回収もここまで。帰りますよ」


「何だと?離せ!ホウキッ!」


 納得出来ない様子の、シンロウが右手を振り上げてる。


 ところが、その腕もホウキに掴まれた。


 更に、左腕も羽交い締めされ、シンロウは動きを封じられていた。


 三本の腕、更にもう一本の右手にはまだ刀を持っている。


 四本の腕に二本の足。


 大きな複眼でこちらを見るホウキの容姿は、気味が悪かった。


「あなたたちも、命拾いしましたね……しかし、次に会うようなことがあれば………フッ、……せいぜい会わないように………気を付けて下さい」


 ホウキはそう言いながら、羽を震わせる。


「まてっ!ホウキ!!離せ!!!」


 ホウキから離れようと、シンロウはもがくが振りほどけない。


「クソ~~~!!!許さんぞ貴様ら、人間!!覚えていろ!この借りは必ず返す!!返すからな!!人間!!…………イヌイィ~~!!!」


 そう叫ぶ声と共に、シンロウとホウキは空へと舞い上がり、消えていった。


 ………


 静寂が戻る。


「おっ、終わったのか……?」


 俺は、ソウジの顔を見ながらそう問い掛けた。


 彼は無言で頷き、刀を納めた。


 その様子を見た俺は、急に肩の力が抜け、両膝を地面に着けた。


『何とか……切り抜けた……』


 と、安心したのも束の間。


「リョカ!!大丈夫?リョカ!!!」


 ハクさんが、リョカさんの隣で声を掛けている。


 そうだった!


 俺もリョカさんの元へ急いで駆け寄る。


「リョカさん!!大丈夫ですか!?」


 俺達の問い掛けに答えず、リョカさんは苦悶の表情を浮かべていた。


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