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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
133/211

第133話 二人の作戦

 あの時。


 リョカさんがシンロウの方へと歩いていく様子を、俺は座ったまま確認していた。


「まぁ、リョカさんが言うことが全て正しいかどうか、俺には分からないけどよ、アンジ、お前が今、そうやってただ座り込んでるのは違うと思うぜ。後悔する事もあるだろうし、反省しないといけない事もあるだろうよ……」


「………」


「だけど、それは今するべき事じゃないよな?」


 落ち着いた口調で俺に語りかける、ソウジの顔を俺は見た。


「顔上げて、前見ようぜ!とりあえず、ここ。この状況、俺達みんなで何とかしようぜ!」


 そう言いながら、ソウジは頷いて見せた。


 俺は周りを見る。


 ハクさんも、トウジも同様に一つ頷いた。


『みんなの力で………』


 俺は立ち上がり、


「俺達の力で……………か………………。ありがとう、ソウジ。それと、ごめん」


 謝りながら、俺は刀をしっかりと持ち直し、前を向く。


「いいさ、これでも一応年上だしな」


 いつもの口調でそう言いながら、ソウジも二本の刀を構えた。


「そうだった。忘れるところだった」


「………落ち着いたか?」


 隣にいる俺にソウジが声を掛けてくれた。


「ああ、もう……大丈夫だ。ありがとう」


「別に、いいさ」


 お互い、前に集中しつつも会話を続けた。


「あんまり無茶しないでくれよ。お前も大事な戦力なんだぜ?アンジ団長」


 そう言うソウジの口元は緩んでいた。


 この緊張感の中で、冗談を言える余裕があるなんて……、


『やっぱり、場数が違うんだな………それに比べて…………』


 先程の事を思い出し、自分に呆れ思わず、「フッ……」と、息が漏れる。


「どうした?この状況で笑うなんて。本当、大丈夫か?」


「いや、リョカさんの一発が今、効いてきたみたいだ。ソウジも後で、もらってみたらどうだ?」


 そう言うと、ソウジは一瞬驚いた様に俺の方へ視線を移す。


 そして、ニヤリとして、


「遠慮しとく。一応、これでも目は『覚めてる』んでな」


 俺に両目を最大限大きく開いて見せ、再び前へと視線を戻した。


 暫くし、リョカさんの攻勢から、シンロウの方へと転換し始めた時、それまで無言だったソウジが口を開いた。


「アンジ、さっきシンロウが言った事聞こえたか?」


「さっき?まあ、聞こえてはいたけど、……どれ?」


「リョカさんの刀を受けながら、アイツ言ったよな?『貴様ら人間ごときの……』、ってさ」


「ああ、それか。覚えてる。……けど、それが?」


 ソウジの意図がわからない俺が、そう尋ねると、


「多分、アイツは、『力』…っていうか、武器が光を放っているかで受け方?交わし方を変えているみたいだな。と、いうことは……」


 そこまで言うと、ソウジは右手に持った刀で地面に『力』と書いた。


「何で急に書くのさ?別に口で言えばいいじゃないか」


「念のためさ。アイツはオオカミだろ?俺達の話が聞こえているかもしれないだろ?」


 そう言われ、地面の文字からシンロウへ目を移す。


 確かに……そう言えば以前会った時、ホウキの匂いを鼻でおっていた様な……


 あの時のシンロウは冷静だったが、今はそうでも無いように見えるので、そう心配することもないと、俺は思ったのだが、


「それで?続きは?」


『念のため』と言うソウジに従い、先を促す。


「だからな、俺とアンジ、それにアイツが……こう、いたとして、……ここで、これを、………こうする、っていう作戦なんてどうだ?」


 地面に書きなぐられた絵と文字を見ながら、


「それ。やろう!ソウジ!」


 頷きながら、俺がそう答えると、ニヤリとしながら、


「だろ?」


「どうする?いや、直ぐにやろう、ソウジ」


 と、俺が彼を急かすと、笑みが消え、


「いや、まだだ。向こうへ行く前にリョカさんが、『合図をしたら』援護するって事だったからな」


 確かに、だが、


「ソウジ、でもさ、その作戦……もし、シンロウに近付く前に気付かれたら、……効果薄くならないか?」


「そ、それは、まぁ………確かに……」


 ソウジが答えに困っていた時だった。


「アンジ!ソウジ!う、上っ!!」


 俺達二人の後ろから、トウジ急に叫ぶ。


 一瞬、ほんの一瞬トウジへ目をやり、再び前を向いた時には既に二人目のミツキ、見覚えのあるミツキがそこにいた。


「あ……あいつ………ホウキだ」


「知ってるのか?アイツを?」


「ああ、知ってるさ。カイナが生気を吸われて生まれたミツキだからな」


「あいつがか……」


 驚いた様子でホウキを見ながら、ソウジが声を漏らす。


 不意に何故か、ホウキはシンロウと向き合い、こちらに背を向けた。


「行こう、ソウジ。いくら何でもリョカさん一人じゃ、不利だ」


 もう迷っている暇はない。


 意を決し俺が声を掛けた隣にいるソウジに目をやったその直後、「あっ!」と、彼が叫ぶ。


 事態は段々悪化し始めている。


 遠目でもリョカさんの身に何か起こっている事が分かった。


 そして、ホウキの容姿が変化し始めている事も。


「行こう、ソウジ」


 先に一歩踏み出しながら声を掛ける。


「ああ。そうしよう。ただ、アンジ」


「何だよ?」


 足を止め、ソウジを見る。


「チャンスは一回。狙いはシンロウ。いいな?」


 ソウジ言い残し、返事を待たずに駆け出した。


「了解!!」


 俺も、ソウジの後を追うように走り出した。


『リョカさんは、俺達が助けるんだ!』


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