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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
132/211

第132話 苦悶

 見覚えのある顔……


 シンロウ、その他のミツキを見たあの夜。


 今、目の前に突如現れた『敵』の顔もその時にあった。


 間違いない。


「ホウ……キ」


 刀に力を込めながら、リョカは再びその名を口にした。


 しかし、


「シンロウ……、あなたは、何をしているのですか?」


 リョカの方を一切見ず、ゆっくりと立ち上がるシンロウへ問い掛けた。


 その口調は、以前と同じく淡々としている。


「シンロウ」


「うるさい!!黙ってろ、ホウキ!!!」


 リョカの一撃によって、地面に背を着けた事もあり、シンロウの怒りは更に増していた。


「邪魔をするな!退いてろ!!」


「……何をむきになっているのですか?」


 今に至るまでの経緯を知らないホウキは、冷静にそう尋ねた。


「うるさい!!貴様には関係無いだろうが!!」


「関係が『無い』と……」


「そうだ!だから退いてろ、ホウキ!!」


「いえ、……残念ながら、そうはいきません」


「何……だと?」


 シンロウの口元が、更に怒りで震えているのが分かる。


「関係が無いとは、良く言えたものですね……シンロウ、我々は、一体何をするためにここへ来たのですか?」


「何を今更……そんなのも決まってるだろうが!」


「そう、決まっています。我々の目的は、『エンセキ』の回収。コウエン様からの命により、ここへ来ているのです」


「だからどうした?」


「どうしたとはこちらの台詞です。目的を遂行せずにシンロウ、あなたは何をしているのですか?」


「うるせぇって言ってるだろうが!!そんな事、今関係ねぇんだよ!!さっさと、どけっ!!!」


「『そんな事』?……………シンロウ、それは、本気で言っているのですか?」


 ここで、ホウキの口調が変わり、


「それを、コウエン様にも言えるのですか、シンロウ?」


 冷酷な口調………


 周囲の空気が冷たくなった様にリョカは感じた。


 もちろん、シンロウもそれを感じたらしく、


「それは、……」


 と、口ごもる。


「では、任務に戻りましょう、シンロウ」


 ホウキの口調は、元に戻っていた。


 それに対し、シンロウは幾分怒りを抑えて、


「ああ、分かった。が、ホウキ。そいつ、そいつだけは殺らせろ。じゃないと怒りが収まらねぇ!!」


 シンロウの視線の先にはリョカがいた。


 そして、この時初めてホウキがリョカの顔を見た。


 自分の刀に刀を振り下ろしたままの状態で止まっている人間。


「話しは、終わったのか?お二人さん。とりあえず、そういう事だ、そこをどけ、ホウキ」


 リョカはそう言いながら、再び力を込める。


 ところが、ホウキはそれを無視するかのように、


「……、この人間をですか」


 ため息混じりにホウキはそう漏らすと、自分の握っていた刀を空へ振り上げる。


 不意の出来事の為、リョカは若干態勢を崩したが、その場に踏みとどまった。


 ホウキは、リョカの行動など気にせず、振り上げた刀を下ろし、ゆっくりとシンロウとリョカ、二人の間に割って入る。


 そして、リョカに背を向け立ち止まった。


「あの人間を倒せば、戻ると………間違いないですね、シンロウ」


 シンロウの目を見ながら、ホウキが確認すると、


「ああっ!!そう言ってるだろうが。だから、退け!」


 目を逸らす事なく、シンロウがそう答えると、


「分かりました……」


 と、二人のやり取りが聞こえたリョカは、


「おいおい、何を二人で勝手にまとめてるんだよ」


 ホウキの背中に向かって声を掛けた。


 そして更に、


「そもそも、何を俺が負けること前提で話を進めているんだ?俺は……」


 と、続けていた時、突然自身の左の脇腹に激痛が走る。


「ぐっ……!!!」


 苦悶の表情を浮かべながら、その場所を確認する。


「なっ、何……だっ…………こっ、れ……………は…………」


 それは、武器では無かった。


 しかし、見たことのあるもの………


 本来、自然界の中であれば小さいはずのそれ。


「おいっ!ホウキ!!貴様、人の獲物に何しやがる!!」


 その声に反応するように、リョカは激痛を感じながらも、再び視線を前に向ける。


「決まっているでしょう。この人間を動けなくする様に……」


 言葉を発するホウキの身体が徐々に変化していく。


「私の『毒針』を打ち込みました……これで、放っておいてもいずれ果てるでしょう」


 そう言い終えた時、ホウキの姿は、まさにハチ……巨大なスズメバチの姿になっていた。


 ゆっくりと、静かにリョカの腹部からそれが抜かれると、痛みの余り患部を押さえ、リョカは片膝を着いた。


「おいっ!ホウキ!!貴様何をしている!!!!」


 そう叫んだのは、シンロウだった。


「見ての通り、この人間に毒針を打ち込みました。放って置いても、その内倒れるでしょう……それに、これでこの人間は抵抗出来ません。トドメを刺すなりお好きして下さい。そして、早く任務に戻りましょう……」


 当然の様にそう言うと、ホウキは横へ動き、シンロウの前を空ける。


 再び対峙するシンロウとリョカ。


 痛みで身動きの取れないリョカを見下ろし、


「クッ……………」


 複雑な表情を浮かべながらシンロウは、右手を振り上げ、


「ウォォ~~~~~ッ!!」


 と、叫びながらその手を振り下ろそうとした時、


「さぁ~~~せるかぁぁぁ~~~~~!!!!!」


 大声と共にシンロウへ向かって来る、二つの人影が宙を舞っていた。


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