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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
131/211

第131話 交戦

「おいおい、挨拶してるんだ。何か言えよ」


 返事を返さないシンロウに向かって、リョカは再び声を掛けた。


「騒がしい人間だな……」


「人間って、何だよ……。初対面じゃないだろ?」


 リョカがそう言うと、シンロウの鼻が、ピクッと一瞬動いた。


「このにおい…………以前に嗅いだ事があるな……そうか、貴様、ジンキを消したとか言っていた人間だな」


「おっ!覚えてくれていたみたいだな」


「……だから何だというのだ?…………何の意味も無い。貴様は、俺に食われてしまうのだからな……」


 シンロウはそう言いながら、口を大きく開いた。


「おいおい、物騒なこと言うなって。そもそも、『はい、そうですか』って、言う訳が無いだろ?」


 リョカの顔が徐々に引き締まっていく。


「はっ!!だったら、どうする?」


 シンロウが、そう言葉を発した後、二人の周囲が張り詰めた空気に覆われる。


「決まってるだろ…こうなるさ……!」


 そう言葉を発すると同時に、リョカはシンロウとの間合いを詰め、両手で持ち直した刀を一気に振り下ろした。


 しかし振り下ろされた刃をシンロウは左腕で受け、


「そうのようだな」


 と、リョカに対しそう答えた。


 リョカは、一旦シンロウから離れ、しっかりと刀を構えた。


 そして再び、シンロウへ襲い掛かる。


 上段からの一撃。


 しかし、先程と同じ様に、その攻撃は左腕で受け止められていた。


「俺の刀は受けるのか…シンロウ?」


 もちろん、そう言葉を発したのはリョカだった。


「何故避ける必要があるというのだ?この程度の攻撃で……調子に乗るなよ『人間』」


「おいおい、『人間』はやめろよ…こっちにだってな、『リョカ』っていう名前があるんだよ」


 そう言いながら、リョカは受け止められている刀を握る両手に力を込める。


「ほおぉ……それがどうした」


 受けるシンロウも左腕に力を込める。


 互いに視線は逸らさない。


「受けるだけか?シンロウ?そういえば、お前あの刀はどうした?」


 リョカがそう尋ねた時、明らかにシンロウの表情が一層険しくなる。


「……」


「なんだよ、忘れてきたのか?それとも、何処かに落としたか?」


 すると、振るえた声でシンロウが呟く、


「貴様に…」


「何だって?」


 シンロウは左腕により一層力を込めながら、


「きぃ~~さぁ~~~まぁ~~~~~にぃ~~~、いぃうぅ~~~、必要ぅぅ~~~ぉぉ~~~~~~~~、無いわぁぁぁあぁ~~~!!!!」


 大声と共に左腕の刀を振り払うと、勢いそのままにリョカへ襲いかかって来た。


「おいおい、一体どうしたっていうんだ、よっ!」


 自分の方へと向かって来る、シンロウの右手をリョカは刀で咄嗟に防ぐ。


 重い一撃。


 返す刀で反撃とは行けなかった。


 防がれた右手を引いたシンロウは、直ぐ様左手を振り上げていた。


 振り下ろされる左手。


 それを受けるリョカ。


 その後もやむことの無いシンロウの攻撃。


 二人の攻防は逆転したまま、しばらく時間が経過した。


『クソッ……不味いな。………さすがに無傷って訳には、いかないか………』


 人間同士であれば、これだけ攻撃し続ければ多少なりとも疲れが見えてくるはずなのだが……


 怒る獣と化したシンロウの振るう拳には、それが見えない。


 とはいえ、それは単調に繰り返されていた。


 リョカは反撃の機会を伺っていた。


 しかし、


『コイツを止めるにゃ、アイツらが必要だな……』


 もちろん、それはアンジ達、彼らの『力』の事だった。


『出来るか?アイツらに…?』


 防戦の中の、リョカは葛藤していた。


 それは、自分がまだ『力』を使えていれば、沸くことは無い感情だった。


『後ろの二人に託さなければ、コイツを止めることは出来ないのか……。他に、方法は…………ないのか?』


「いや、……」


 シンロウの、右の拳を受け止めながらリョカはそう呟き、更に、


「何、考えているんだ、俺は……」


 シンロウが左からの攻撃を仕掛けると、自分にそれが届く前に刀で右へ払う。


 そして、その勢いを殺さず、リョカはその場で一回転し、下段からシンロウの脇腹へ一撃を加えた。


 勢いを持った一撃により、シンロウは後方へ飛ばされ、地面背を着けた。


「俺がアイツらに頼って、どうするんだよ。……全く」


 態勢を整えながら、リョカは呆れた様に呟いた。


 もちろん、自分に対してだった。


「お前の面倒は、……」


 立ち上がろうとするシンロウに向かって、リョカはそう言いながら駆け出し、更に一撃を加えようと刀を振りかぶり、


「俺が見なきゃな!!シンロウよ!!!」


 振り下ろされた刀は、シンロウの頭部へ直撃するはずだった。


 しかし、


 ガキンッ!!!


 と、頭部へ届く前に横から伸びた刀で受け止められていた………


「何!!!?」


 リョカは、刀の出所を確認する。


「おっ、……………お前は、………ホウキ」


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