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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
130/211

第130話 怒りの拳

 渾身の力で振り下ろされる、アンジの『コオロキ』。


 それに気付いているミツキ。


 不意討ちであれば結果は違っていたであろうが……


 アンジの一撃は、無情にも空を切り、地面に刺さる。


 敵は、後方へ一歩下がっただけだった。


「何だ……貴様は?わざわざ俺に食われに来たのか?……そいつと同じ様に」


 見下す様に吐かれた言葉に、アンジは、


「黙れ!!この化け物め!!!」


 地面から刀を抜き、下段から、更に上段からと、連続で攻撃を繰り出す。


 しかし、ミツキはそれを易々とかわすのだった。


「どうした?そんな攻撃では、当たらんぞ?」


「黙れ、黙れ、だまれ~~~~~~~~!!」


 憎しみと、当たらない攻撃に苛立ちながら、アンジはそう叫びながらも攻撃を続ける。


 それでもミツキには届かない。


 寸前の所で全てかわされしまう。


 それが更にアンジを苛立たせた。


『クソッ!何で当たらないんだよ!!』


「貴様じゃ、役不足なんだよ!いい加減、気付け人間!!」


 その言葉と同時に、ミツキの拳がアンジの腹部に入る。


「うっ!!!!」


 引かれた拳と同時に、アンジは片膝を付いた。


「それと、俺様の名前は『シンロウ』様だ。覚えておくが良い、小僧」


「シッ、シン…ロウ…………」


 アンジの記憶の中にその名前はハッキリと記憶されていた。


 あの時とは全く違う容姿だが、それは、あの『アカツキ』のせいだということは、容易に想像出来た。


「シン…………ロウ……」


 怒りに満ちた目で、シンロウを睨み続けていた。


「ほぉ、良い目だ。安心しろ、直ぐに楽にしてやる…………」


 その言葉の直後、シンロウは口を開ける。


「させるかよ!」


 と、アンジの背後から声がし、シンロウへ飛び掛かる。


 気付いたシンロウは、後方へ大きく飛んで距離を取った。


「まだ、いたのか……」


「悪いな。邪魔してよ」


 それは、アンジの仲間であるソウジだった。


「大丈夫か?」


 シンロウを見たまま、ソウジが俺に問い掛ける。


「あぁ、大丈夫だ……すまない」


 俺は立ち上がり、彼に礼を言った。


 すると、


「そうか、大丈夫か」


 と、ソウジではない声がする。


「リョ、リョカさん……」


 俺の隣に立ち、シンロウを見つめるリョカさんの姿があった。


「大丈夫なんだな?」


 再度聞かれ、


「はい。大丈夫です」


 と、俺が答えると、


「そうか……」


 と言う、言葉と同時に俺の頬に拳が飛んできた。


 不意をつかれた俺は、勢いのまま後方へ飛ばされた。


「いっ、……………なっ、何するんですか、リョカさん!」


「『何するんですか』じゃねえだろが、この馬鹿!お前、一体何やってるんだ?英雄気取りか?はっ!笑わせるな!怒りで我を忘れて、ただ、がむしゃらに刀を振るお前が、そんな者に成れる訳が無いだろうが!!!そこで頭冷やしてろ!」


 周囲も気にせず、怒鳴り声でリョカさんがそう一気にまくし立てた。


「…………」


 俺に反論する余地もなく、黙って視線を落とす。


『俺は………何をやってるんだ……………』


 自分の愚かさを痛感し、俺は強く目を閉じた。


「顔を上げろ、アンジ。まだ何も終わってないぞ!反省するのは帰ってからにしろ!……今は、これからどうすべきか、冷静に考えるんだ」


 リョカさんは再び俺に声を掛けてくれた。


「…………」


 だが、俺は返事が出来なかった。


「チッ。仕方ねぇな……とりあえず、俺は行くぞ」


 そう言い残し、リョカさんは俺達の前にいたソウジの元へと向かった。


「良いんですか、リョカさん?放っておいて?」


 我関せずと、いつもの口調でソウジが尋ねると、


「いいさ。後は、あいつの問題だ」


「そうですか、じゃあ、俺も『アイツ』に集中しようかな」


「そうしてくれ……、と、言いたい所だが、ソウジ、お前はここにいろ」


「えっ!?」


 ソウジは驚いた様子で、隣にいるリョカさんの顔を見た。


「ここに……ですか?」


「そうだ」


「でも……」


「いいんだ、ソウジ。お前はこにこいろ。場慣れしているのは、俺とお前とハクしかいないんだ。……とりあえず、合図するまでここにいろ、いいな?」


 ソウジは、後方を確認した後、


「分かりました」


 と、指示に従った。


「じゃあ、頼むぞ」


 リョカさんは、その場を離れ、シンロウの方へと近付いて行く。


「さてと、………どうしたものかな」


 歩きながら、誰にも聞こえないほど小さな声で、リョカさんは呟く。


 ゆっくりと、徐々に近付く両者の距離。


 そして、リョカさんは、自分の間合いの一歩手前で立ち止まり、


「よぉ、シンロウ。待たせたな」


 先程までとは打って変わり、いつもの口調でシンロウに声を掛けた。


 口調と同様に、表情を緩めているリョカさん。


 しかし、シンロウのそれは、険しいままだった。



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