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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
127/211

第127話 休憩場所

 ドサッッ!!!


 大きな音と共に、それは崩れ去った。


 それを確認した後、アンジは刀に込めていた力を抜いた。


「ふ~~~~っ。これでやっと三体目か……」


 刀を降ろしながら、アンジが疲れた様にそう呟くと、


「何言ってるんだよアンジ。『まだ』三匹だろ?」


 アンジの横で、ソウジがいつもの調子で話し掛けてきた。


「まだって……、ソウジ、俺、今日が初めてなんだぞ?あんまり無茶言うなよ………」


「あっ、そうだったっけ?けど、まあ、もう大分慣れたんじゃないか?『力』の加減さ。やっぱり、俺の教え方が良かったんだよなぁ~」


「いやいや、ソウジ……本気で言ってるのか?」


「もちろん!!」


 と、ソウジは胸を張って言い切った。


「ははは……そうなんだ。まあいいや、それより、ソウジ」


「何だよ?」


「いや、大した事じゃないんだけどさ」


「うん?」


「何で『匹』なんだ?ヒトツキを数えるなら『体』だろ?」


 俺がそう尋ねると、


「あっ、それ、僕も思った」


 と、トウジも同調する。


 しかし、ソウジは首を傾げながら、


「えっ?そんな事か?別に意味なんて考えたこと無かった。まあ、そうだなぁ、あいつらが人間じゃないからかな。ん~~、まあ、何となくだな。別にどっちでもいいだろ、それ」


 何食わぬ顔でそう答えた。


「まっ、そうだけどな。ちょっと気になっただけだよ」


「へぇ~。変な所気にするんだな、お前ら」


「そうかな?まあね、もっと気になった事もあるんだけどね」


「今度は何だよ、アンジ」


「いや、……ソウジにじゃなくってね、リョカさんだよ」


 そう言いながら、俺はリョカさん達がいる後方へと向き直る。


 同じ様にソウジも、そしてトウジも向きを変えた。


「さっきの『あれ』……一体何だったんだろ?今まで黙っていたのに、急に……声を掛けてくるなんて」


「確かにそうだね。僕も、急にリョカさんが、大きな声を出したから驚いたよ。きっとアンジの事が心配だったんじゃないのかな」


 と、トウジ。


「そうだな。隣にいた俺から見ても、アンジが疲れているみたいだったからな。喝を入れてくれたんだろ」


 と、ソウジ。


 しかし、俺の考えは違っていた。


『声』とは言ったものの、俺から言わせれば、あれは完全に『ヤジ』だった。


 そして、その先には、何やら企みがあるようにも感じた………と、いうよりも勘に近いものだった。


「……とりあえず、リョカさん達の所へ行こう」


 そう言いながら、俺と二人は一緒に歩き出した。


 俺達を待ち受けるリョカさんは、とてもにこやかだった。


「さすが、アンジ。俺が言った通り、一撃で仕留めるなんてよ。嬉しいねぇ~」


「そっ、そうですか。ありがとうございます……」


 優しい言葉を掛けられ、尚更、俺は警戒心を強めた。


『間違いない。何かある』


「あの……、リョカさん」


「どうした、アンジ」


「いや、その、少し……休んでもいいですか?」


「ん?休みたいのか?」


 そう尋ねられ、


「はい。お願いします」


「そうか、別に良いぞ」


 と、まさかの答えに俺は驚いて、


「ほっ、本当ですか!ありがとうございます」


 と、素直に喜んだのだが、


「ただし、ここじゃない。少し移動してからな」


「あっ、はい……分かりました」


 不思議に思いながらも、俺はそう返事をした。


「何処へ向かうのですか?」


 早く休みたい気持ちがあり、俺がリョカさんにそう尋ねると、


「何、そう遠く無いはずだ。あっちへ向かうぞ」


 そう言いながら、今まで通って来た道を戻るのではなく、反対側をリョカさんは指差した。


「そうですか……でも、そっちだと園から離れて行きますけど……」


「そうか?まあ、それは良いだろ?まだ気にしなくても。とにかく、早く行くぞ。遅れるなよ」


 そう言い残し、リョカさんは歩き出した。


「全く……勝手だよね。けど、とりあえず、行こうか」


 そう俺達に声を掛け、ハクさんが続いて歩き出し、前を歩いていたリョカさんに並ぶ。


 残された俺達は三人で顔を見合せ、


『やれやれ……』


 と、思いながらも口には出さず、前の二人を追うように、皆一斉に歩き出した。


 リョカさんが指差した方向。


 それはもちろん、あの咆哮と、光が射したであろう場所だったのだが、ヒトツキに集中していた俺達三人は、誰も気付いていなかった。


「あぁ~~、早く休みたい…………」


 俺は一人呟いた。


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