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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
124/211

第124話 黒い集団

 その頃、街の中の別の場所では、回収が行われていた。


 回収される物…それは、もちろん『エンセキ』である。


 赤い月を見て、家路を急ぐ人々を横目に、回収者はゆっくりと街の中を歩いていた。


 当然の事だが、誰も近くには寄ってこない。


 むしろ、一見するだけで、きびすを返し絶叫と共に走り去って行く。


 何故なら、一目見るだけでそれが『人』ではないことが分かるからだ。


 アカツキが出ていない状況であれば、それが人ではないと気付ける人間はいないかもしれない。


 しかしながら今、あのアカツキの光の中では、彼らは本来の容姿を現す。


「全く……、弱い奴ほどよく吠えやがる……」


 走り去る人影を目で追いながら、その回収者は呟く。


 しかし、直ぐ様視線を周囲へと移し、対象を探した。


 歩く事は止めず、ひたすら前へ進む。


 路地がある度その先も確認する。


『全く……地味な作業だな………』


 そう思いはするが、口には出さず、更に通りを進む。


 人ではない……まるで狼を想像させるような容姿をした回収者。


 背中に大きな刀を携えた、その回収者の名はシンロウという。


 以前、アンジ達の住むガクエンに現れたミツキであった。


 シンロウはホウキと共にエンセキの回収の為、この街に来ていた。


 が、二人で行動するのでは効率が悪いため、個々に回収をしていた。


『いっそのこと、アイツに任せておくか』


 そう思いながら、ふと、目をやった路地に、それがいることに気付いた。


「やっといたか」


 一言そう漏らすと、シンロウはその路地へと足を向けた。


 明かりも少ない場所。


 先程までいた通りの街灯も、全てではないが気の向くままに破壊してきた。


 もちろん、ヒトツキが行動しやすいようにだ。


 しかし、この通りはそもそも明かりが少なく、その必要はないようだ。


 それに……


 路地の中ほどで仁王立ちしていたヒトツキが、シンロウの存在に気付いたのか、彼の方を向く。


 シンロウはヒトツキに言葉を掛ける事もなく、手の届く距離までヒトツキに近付くと、そこで足を止めた。


 そして、無言のままシンロウは右腕を伸ばし、手の平をヒトツキの胸辺りに置く。


 すると次の瞬間、


 ドサッ!!!


 なんと、ヒトツキが跡形もなく崩れ去ってしまった。


 シンロウは、伸ばした右手を握りしめながら、


「チッ!また空か………」


 と、呟いた。


 本来、シンロウは、『エンセキ』の存在する場所、つまりヒトツキのいる場所を『臭い』で嗅ぎ付ける事が出来るのだが……彼はそれをしようとはしなかった。


 この無駄な回収が多いからだ。


 目についたヒトツキからのみ回収する。


 それがシンロウの回収方法だった。


 徒労に終わった事に苛立ちを感じながら、シンロウはその場を離れることにした。


 今通ってきた道を戻るのではなく、そのまま路地の先の通りへと向かうことにした。


 すると、通りへ出た時、不思議な光景をシンロウは目にする。


 通りに面した家から、黒い人影が出て来たのだ。


 黒い人影とは抽象的ではなく、全身が黒い身なりで、顔の部分だけ表情のない白っぽい仮面を着けていた。


 しかも、それが三人。


 そして、その内の一人の方には人間が担がれていた。


 一般人がそうされているのであれば、気にも止めないのだが……


「おい、お前ら、何をしている」


 シンロウには、聞かざるをえない理由があった。


「………」


 その問いに、誰一人として答えようとはしない。


「何をしてるんだと聞いてるだろうが!」


 その集団に近付きながら、シンロウは声を荒げる。


 すると、その内の一人が、


「キサマニハ、カンケイナカロウ。…ジャマスルナ」


 と、無機質に答えた。


「関係無いだと?残念だが、そうでも無いようだ」


 肩に担がれている人間は、『臭い』からして、エンセキを埋め込まれている間者の一人だということを、シンロウは分かっていた。


『このまま見過ごす訳にはいかない』


 シンロウの中にある、コウエンに対する忠誠心が、行動に現れていた。


「そいつを置いていけ」


 威嚇するように、シンロウはその集団に言い放つ。


 黒ずくめの三人は互いに顔を見合せると、その内の一人が、


「シタガワナイト、イッタラドウスル?」


「はっ!そんな選択肢がある訳ないだろうが!仮にあった時は、……力ずくになるだろうな……」


 シンロウは、そう言いながら、背中に携えた刀を右手で抜き、臨戦態勢に入った。


「ホウ、オモシロイ……ヤッテミルカ」


 と、言葉を発した一人も手に持つ武器を構え、臨戦態勢に入るのだった。



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