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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
123/211

第123話 『力』解放?

「とりあえず、このままじゃどうしようも無いから、ちょっと、行ってくるな」


 そう言い残すと、ソウジはヒトツキの元へ駆け寄っていく。


 俺は、その様子を、まだ呆気に取られたまま、見送った。


 その場からまだ一歩も歩を進めていないヒトツキ。


 動きが鈍いのは、もしかしてまだ生まれたばかりだからなのかもしれない。


 顔が無いので表情が分からない。


 俺達の事には気付いているのだろうか…


 体はこちらを向いているので、きっと気付いているはずだ。


 などと、俺が考えている間に、ソウジはもうヒトツキの目の前だ。


 すると、ヒトツキもそれに対し動き始める。


 右手を握りしめ、大きく振り上げていた。


 その様子を見ながら、


「おっ!いいね!!やる気だな!こいっ!!!」


 と、ヒトツキに向かってソウジが声を上げる。


 俺の場所からでは、ソウジの顔が見えないが、彼の口調からして、きっと今は歓喜の表情を浮かべている事だろう。


 もちろん、ヒトツキにはソウジの言葉など理解できる訳がない。


 ただ、必然的に振り上げた腕をソウジに向かって勢い良く振り下ろした。


 だが、決して早くは無い一撃に対し、ソウジは残念そうに、


「あぁ~、もう少し、早い方が良かったんだけどな……。仕方ないか。ちょっと失礼っ!」


 と、言い終わると同時だっただろうか。


 ソウジは、構えていた『ユウケイ』を、ヒトツキの右腕目掛けて切りつけた。


 ……ドサッ!!!


 俺の数歩先にヒトツキの右腕が降ってきた。


「うわっ!!」


 俺も、後ろにいたトウジも驚きのあまり声を出した。


 地面に落ちたそれは、サッ…と、消えた。


 ヒトツキの体を離れると、元の土に戻るらしい。


 もちろん、切られた体も、出血などしていない。


「おぉぉぉ~、良い切れ味!」


 俺達の事などお構いなし。


 ソウジは、余韻に浸っていた。


「とりあえず、もう少し…」


 そう言いながら、二度、三度と、彼はヒトツキの右腕を徐々に短く切って行く。


「おっ、おい、ソウジ?話しが違うぞ!」


 止まりそうにない様子の彼に向って、俺は大声で声を掛けた。


「あぁ、そうだった。悪い、アンジ…」


 再び切りかかろうとした刀を引き、こちらを振り向き謝罪をする。


「じゃ、アンジ、とりあえず、交代しよう。俺、ここで待ってるから、早く来てくれ。」


「えっ!?」


「いいから、早く来いよ。ひとまず、俺の『力』は…と、また、後で」


 その言葉で、彼の持つ『ユウケイ』から、光が消えた。


『………んっ?』


 俺は一旦冷静に考える。


 刀から光が消えたって事は…『力』使えないって事だよな…


 って事は、俺が見ているあの状況は…、もしかして……


『危険な状況じゃないか!!!!』


 のん気に見ている場合じゃない。


 俺は慌ててソウジの元へ駆け出した。


 と、その時、ヒトツキが今度は左腕を大きく振り上げていた。


 それに気付いたのか、ソウジも俺ではなく、ヒトツキの方へと向き直っていた。


『ヤバい!』


 あの腕が振り下ろされる前に、あの場所へ…


 あと数歩…というところで、左腕がソウジに向かって振り下ろされる。


『あぁ~~~、面倒だ!』


 俺は地面を勢い良く蹴り、その勢いのまま、


「行くぞ~~!!」


 両手で持ち直した刀を振り上げ、ヒトツキの左腕めがけて、一気に振り下ろした。


 ドンッ!!!!


 という衝撃が俺の体に伝わってきた。


 訳も分からず振り下ろしたせいで、刀がヒトツキに当たる瞬間ををあろうことか、俺は目をつぶっていたらしい。


「おいおい、どうしたんだよ、アンジ?慌て過ぎだろ?」


 気付けば俺は、ソウジと、ヒトツキの間にいる。


「いや、だって、ソウジ、暫く『力』使えないだろ?だから…」


「はぁ?なんだそれ。俺、使えるぜ」


 そう言うと、ソウジは再び呼吸を整え『ユウケイ』を光らせて見せた。


「えええっ!なんで?タイラさんは、そんな風に出来なかっ…」


「おいおい、一緒にするなって、仮にも、俺は…いや、お前も本来の『シキ』の使い手だぜ。一回だけとか、時間を置かないと…とか、あるわけないだろ?まっ、確かに、多少は加減しないと、燃料切れみたいにはなるけどな。流石にヒトツキ一匹に全力出すほど、俺は馬鹿じゃないぜ?」


 と、いつもの笑みを浮かべながら、ソウジは教えてくれたのだった。


「そうだったんだ。なんだ、焦る必要無かった…」


「けど、良かったじゃないか」


「だってよ、それ、光ってるぜ?」


 ソウジは、俺の両手を顎で指す。


「えっ?えぇぇぇぇっ!!」


 確かに、俺が手にしている刀が赤い光を刀身に帯びていた。


 でも…


「俺、どうやったんだろう…」


 記憶にない…


 首を傾げながら、ふと、脇に目をやる。


 すると、ソウジの後ろに転がる物体が目に入ってきた。


 もしやと思い、すぐさまヒトツキに目を向けると、やはり、左腕の肘の辺りから先が無かった。


「…」


 この状況で、


 俺は『力』を手に入れたぞ!


 と、言えるのだろうか…


 俺は再び、首を傾げた。


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