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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
122/211

第122話 ソウジの実演

 赤い光に照らされた街並み…


 もちろんそれは、他でもない『アカツキ』によるものだった。


 以前のように前触れがあれば、早めに対処が出来るのであろうが、このところは突如として現れる。


 気付けば良い方だろう。


 最悪でも、灯りの無い通りや、路地裏…光の届かない場所へ近づかなければ良い。


 とにかく明るい場所へ。


 と、普通の人々の考えではそうなるのだが、彼らは違った。


 あえて、暗い道を選び歩いて来た。


 理由は一つ、目の前にいる『それ』と出会う為だった。


 暗い道とはいえ、全く灯りが無い訳ではなかったのだが、徐々に一つ、また一つと、窓の外へと漏れていた家の灯りが、雨戸によって閉ざされ、消えていく。


 赤い月や、おぞましい異形の物など、誰も見たくはない。


 ましてや、それが自分の命と引き換えになるかもしれないことだとすれば、尚更誰も好んで家の外を見ようとはしない…


 辿り着く景色は結局、いつもの『アカツキ』の夜と同じ状況だった。


 ただ、いつもと違う状況もある。


『ヒトツキ』と対峙している彼らは、今回が初めての実戦なのだ。


 アンジとトウジ、それにソウジ。


 アンジとソウジが前方で横に並び、その後ろにトウジが配置した。


 話し合った訳でもなく、指示された訳でもない。


 三人は、自然とそういう配置を取った。


 もちろん、俺も、ソウジも既に刀を構えていた。


「行って来いって、よく言うよな?よくよく考えたら、俺まだ、どうやれば良いのか聞いてないじゃないか…」


 ふと、一瞬冷静になり、俺がそう漏らすと、隣にいたソウジが、


「まあまあ、そんなに怒るなって。別に、大した事じゃないんだからよ」


「大した事じゃないって……俺にとっては『かなり』大きな問題だぞ。目の前にもう『ヒトツキ』がいるんだぞ!!」


 俺は顎で目の前にいるヒトツキを指した。


 しかし、


「ああ、いるな。一匹『ヒトツキ』が、確かに。でも、それがどうした?」


「それがって……」


 俺は、驚きのあまり、ヒトツキから目を離し、ソウジの顔を見た。


 ……その表情は、至って普通だ。


 強がっている様子もない、怯えている様子もない、いつも通りの表情。


 何故だろう………


『あっ、そうか、忘れてた!ソウジにとっては、今回が初めてではないからだ!!ソウジは…ソウジは、シシカドの隊長だったじゃないか!!!!』


 俺は、目を丸くしてソウジの顔を見るのだった。


「なっ、何だよ、アンジ。集中しろよ!俺じゃなくって、アイツによっ!」


「あっ、ああ。悪い」


 その言葉で冷静になり、再びヒトツキへ視線を戻す。


「でも…ソウジ」


「どうした?」


「おっ、俺、これから…どうしたらいいんだ?教えてくれ」


 視線はヒトツキから離さず、俺は構えた刀の柄を両手で握りしめ、ソウジに尋ねる。


「そうだった。そうだった。そうだよな。それ。それが、今回の目的だった」


「まさか…忘れた訳じゃないよな?」


「……まさか、忘れる訳、ないだろ?とっ、とりあえず、……そうだな……」


『怪しすぎる…ソウジ…さては…』


 と、思いはしたものの、


「そうだ、実演…実演がいい。今、やってくれよ、ソウジ!」


「えっ。あ、まあそうだな。それが、早いか。それに…これも、試してみたいところだしな…よしっ!!じゃ、やるか!」


 と、やる気になったソウジは、二本の刀を構えた姿勢を変えず、


「ふぅ~~…」


 と、一つ長い息を吐いた後、小さな声で、


「…いいか?…やるぞ」


 その言葉と同時に、ソウジが持っていた二本の刀『ユウケイ』が、黄色い光を発し始めたのだった。


「うわっ、アンジ、前に見たタイラさんの刀の光とは違うね。これが、『シキ』の光なんだね」


 と、俺達の後ろから、不意にトウジが口を開いた。


 確かに、俺もそう思った。


 だが、今の俺の注目すべき箇所はそこではなかった。


 ソウジの持つ『ユウケイ』の刀身は確かに光を帯びている。


 しかし、ソウジ自身が光っている訳ではない。


 二本の刀のみ…


「ソウジ…」


「どうした、アンジ?」


「結局、今、どうやったんだよ?」


 静かに息を吐き、その後「やるぞ」の掛け声と共に光り出した、二本の刀…


 理解しろというには無理があり過ぎた。


「どうって、言われてもな。まあ、そうだな…心を落ち着かせて、自分が持っている『シキ』に…送り出す感じか?…何て言うんだ、その~気持ち?ん~~、気合い?『やるぞ~!』みたいな…『行け~!』みたいな感じか?」


「………」


 俺は、言葉が出ないほど驚いた。


 ソウジ………説明が下手すぎる!!!





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