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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
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第120話 初陣

 部屋へ戻った俺は、園長から貰った『コオロキ』を再び両手に着けてみた。


 大き過ぎず、小さ過ぎず、本当に俺だけにしか合わないのではないかと思うほど、俺の腕に馴染む。


 また、改めて気付いたのだが、拳の部分もしっかりと『エンセキ』で覆われていた。


 握っては開き、握っては開き…………


 幾度と無く繰り返す、が、全く違和感がない。


「すごいな。園長は。こんな物が作れるなんて」

 ?

 と、自分の両手を見ながら、独り言を言っていた時、


「アンジ!おい、アンジ!!」


 部屋の外から、俺を呼ぶ声がする。


「なっ、なんだよ。ソウジ」


 慌てて俺が、そう返事を返すと、


「おっ、いたか。入るぞ」


 と、言うや否や、ソウジはドアを開け、中に入ってきた。


「なっ、何だよ、急に」


「いや、リョカさんがな……って、それ、何だ?どうした?」


 俺の両腕を見たソウジが、もっともな質問をしてきた。


「ああ、これな、さっき園長に貰ったんだ」


「へぇ~、そうか」


「『そうか』って、何だよ、羨ましくないのかよ?」


「いや、だってよ、俺も貰ったからよ、園長さんにな」


「そっ、そうなのか?」


 ソウジと違い、俺は彼の答えに驚いてしまった。


「これを、ソウジも貰ったのか?」


 両腕を見せながら、俺がそう尋ねると、彼は、


「まさか!それは、お前用だろ?俺のは、俺用……見るか?」


「うっ、うん」


「だよな、見たいよな。…………でも、ここじゃ無理だ。だってよ、俺のは刀だからな。流石に、部屋の中じゃ振り回せないしな。残念」


 そう言うソウジの顔は、いつものように笑っていた。


「そっか、仕方ないな。で?リョカさんがなんだって?」


 と、尋ねると、ソウジは急に慌てたように、


「おっ、おう、そうだった。いや、忘れてた。リョカさんがな、今から外に行くぞってさ。実戦だってよ」


「実戦?…………」


 俺はハッとなり、窓の外へと目をやる。


「『アカツキ』が出てる……」


 全く気付いていなかった。


 一体いつから出ていたのだろうか。


「おい、アンジ!聞いてるのか?」


「ああ、悪い、ソウジ」


「じゃあ、伝えたからな。用意が出来たら、玄関の外に集合だぞ」


「分かった。すぐ行くよ」


 俺がそう答えると、ソウジは部屋を出た。


 そこで再び、彼は振り向き、思い出した様に、


「あっ、それと、もう一つ。『訓練じゃないから、重りは外して来い』だってよ。伝えたからな」


 と言い残し、部屋から離れていった。


「重りもか……」


『コオロキ』を着ける為に、既に重りを外していた両腕を見ながら、


『本当に……………いや………やるしかない!』


 俺は決意を固め、両足に着けていた重りを外す。


 …とはいえ、それは直ぐに終わり、


「よしっ!」


 と、一つ気合いを入れて立ち上がり、コオロキと一緒に貰った刀を手に取り、そのまま部屋を出ようとした。


 ふと、部屋の片隅に目をやる。


「あっ、そうだ……」


 そこには、大事な物が置いてあった。


 汚れた袋。


「そうだよ。俺、肝心な物を忘れるところだった」


 中に入っているのは『アカアシ』、アンジの『シキ』が入っていた。


「とりあえず、これは…」


 袋を手に取り、それをアンジは足に着けず、袋ごと持って行くことにした。


 部屋を後にし、急いで玄関を出る。


 半ば呆れ気味の口調でリョカさんが、


「やっと来たか、遅いぞ、アンジ」


「あっ、すっ、すいません。これでも急いで来たつもりなんですけど……」


「はぁ、まあいい。とりあえず、準備はいいんだな?」


「はっ、はい」


 俺は、必要以上に頷いて答えた。


「ん?おい、その袋…」


 俺の持っている袋に気付き、リョカさんは、


「アンジ、それ…持って行くのか?」


「あっ、えっと、ですね…どうしましょう…か?」


「はっ?俺に決めろって言ってるのか?呆れたヤツだな。必要無いなら、置いてきゃいいだろ?そんな事、いちいち聞くんじゃねぇよ」


 と、リョカさんに叱られ、


「そっ、そうですよね…わかりました」


 と、謝ると、


「だが、一先ず、今日はそれ、置いていけ。持って行ったところで、それを着ける余裕がお前にあれば別だが、無理だろ?」


「…そう、……です…ね」


「それに、アンジ。お前、まだ『それ』の扱い方分からないだろ?」


「あっ!!」


 そうだ。


 それを俺はまだ、教えてもらっていなかった。


 袋とは別に持っている『刀』…よくよく考えてみれば、俺はまだ『力』の使い方を知らない……


 リョカさんの顔を見る。


「そんな目で見るな。とりあえず、今日は、『力』の使い方を覚えろよ。但し、遊びじゃないぞ。訓練でもない。実戦の中でだ。死にたくなかったら、頑張れよ」


「そっ、そんな。リョカさん…」


 そこまで言うと、俺の肩に腕を回し、


「『無茶苦茶な~』って、とこだろ?アンジ?」


「ソウジ…」


「心配するなって、俺が、援護するからよ、ちゃんと団長を守ってやるぜ。リョカさん、俺、援護してもいいんですよね?」


「好きにしろ。俺が決める事じゃないだろ?」


「だってさ。まっ、けど、さっさと覚えてくれよ。ダラダラ戦うのはしんどいからな」


 また、いつものあの顔……


「わっ、分かったよ。努力するさ」


 まるで、俺の物覚えが悪いような言い方に聞こえた為、多少口調が強くなる。


「まあまあ、仲良くいこうよ。二人共」


 間にトウジが入って来る。


「『シカジキ団』初陣でしょ?」


「初陣って……」


 トウジのその言葉に、俺とソウジは、目を合わせた後、顔が緩んだ。


「よしっ。じゃ、行くぞ!」


 リョカさんの掛け声に、俺達は、


「はいっ!」


 と、返事をし、園の外へと向かって歩き出したのだった。



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