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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
118/211

第118話 決心

「お前達、一体いつまでそうやって、突っ立っているつもりだ?」


 降りしきる雨の中、動こうとしない俺たちに向かってリョカさんがそう尋ねてきた。


 その声は、先程の怒りに満ちたものとは違い、俺達が普段聞き慣れた、いつも通りのリョカさんの声だった。


 が、


「…………」


 俺達は、誰もそれに対して応じる事が出来なかった。


 目の前、視界の中に入っているはずのリョカさんよりも、その奥、もう姿が見えなくなってしまったタイラさんを俺達はまだ追っていた。


「やれやれ……」


 と、呆れた様に言いながら、リョカさんは俺達の方へゆっくりと近付いて来る。


 そして、


「おい、お前達。一体どうしたいんだ?さっきから、ぼーーーーっと、遠くを見たままよ。アイツの事がそんなに気になるのか?」


 と、リョカさんは俺達の見ている方を指さす。


「追いかけたいのか?お前達は?だったら、そうすればいい。だがな……」


 そこで一呼吸置き、


「アイツを、タイラを追うというのなら、俺とはここまでだ」


 その言葉を聞いた俺達は、みな一斉に驚き、リョカさんの顔に照準を合わせた。


「なっ、何を言ってるんですか?リョカさん」


「そっ、そうだよ。突然何でそうなる……」


 そう誰かが言いかけた時だった。


「何故?……何故かだって?はっ!!おいおい、お前達。いや、」


 そこまで言いかけたリョカさんが、今度は遠くではなく、俺とトウジの二人を指さし、


「アンジ、トウジ。お前達の目的は何だ?ここで、みんなで仲良く一緒にいる事か?友達ごっこして毎日過ごす事がお前達の目的か?」


 俺とトウジは顔を見合わせる。


「違います、リョカさん。…僕たちの目的は、別にあります」


 そう答えたのは、俺ではなく、トウジだった。


「そうだよな。違うよな。だったら、何の為にアイツを追う?」


「えっ…」


 そう問われ、俺もトウジもとっさに答える事が出来なかった。


「さっきも聞いたが、お前達の目的は別にある。そして、俺とハク、そしてタイラはその目的の手助けをする為にここにいる。いわば『オマケ』だ。主となるのは、お前達、だろ?」


「確かにそうですけど…でも、今までずっと一緒だったじゃないですか…それなのに、急にいなくなるなんて…どうしてですか?教えて下さい…」


 すると、リョカさんは俺達に怒りと、悲しさが入り混じった様な口調で、


「おいおい、まだそれか?いい加減気付けよ。今までは皆、同じ敵を見据えてお前達の手助けをしてきたんだ。だが、タイラにとっての『それ』が変わった。つまり、ここにいる意味を持たなくなったってことだ。つまり…、次、会う時は…敵…かもしれないって、ことだ。それでも、アイツを追うというのなら、それでもいいさ。但し、そんな奴らの手助けを、俺はやらない。さよならだ。それと、一人欠けた位でウジウジ言ってるようだと、コウエンは助けられねぇぞ。本気で助けたいと思うなら、前を向くんだ、トウジ。アンジ」


「…………アンジ」


 俺の名を呼び、トウジがこちらを見ている。


 俺はトウジから目をそらし、うつむきながら、


「リョカさん、俺…ここにいます。俺達の目的の為には、リョカさんの手助けがまだ必要です。俺はまだ強くならなきゃいけない。自分のためにも、トウジのためにも」


 俺は顔を上げ、リョカさんの顔を見る。


 そして、トウジの顔に目を移すと、彼は、一つ頷いた。


「じゃ、俺もここだな。三人はいつも一緒だろ?」


 ソウジがいつもの調子で口を出す。


 俺達三人は自然と顔をほころばせ、カイナの顔を見る。


「カイナ…」


 彼女の顔はまだ曇ったままだった。


「わかったわ。私も、ここに残る。だって、私もトウジの『ために』戦うって、決めたんだから。だから…」


「だから?」


 俺がそう尋ねると、カイナは顔をキリッとさせ、


「私も、その中に入れて」


「それって…どれのことだ?」


「とぼけないでよ、アンジ。あなた達三人で何かやってるでしょ?だから、私もその中に入れなさいよ。いいわよね?ねっ?何?ダメなの?」


「いっ、いや、ダメって訳じゃないけど…」


 俺が答えに困っていると、ソウジが、


「いいじゃないか、アンジ。別に減るもんじゃないし、な?トウジ?」


「そうだね、いいと思うよ、僕も」


「はい、じゃあ、決まりね。二人共ありがとう」


 あれ?俺が団長のはずじゃなかったっけ?まあ、いいか。


「それじゃ、リョカさん、改めてこれからもお願いします。俺はもう揺らがない。この先、何があっても、この手で目的を…トウジのお父さんを助けます」


 俺は右手を握りしめ、リョカさんの方へと伸ばした。


「そうか。まあ、いいだろ。分かった。手を貸そう。……とりあえず、今日は、俺、帰るぞ。やるなら、風邪引かない程度にやっとけよ」


 そう言い残し、リョカさんは帰って行った。


 

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