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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
116/211

第116話 雨雲

「ねぇ、何だか暗くなってきたんじゃない?」


 不意に、カイナが俺に話し掛けてきた。


「そう言われれば…………」


 視線を空へと移して見る。


 先程までの雲の様子は見ていなかったが、今は厚く灰色がかった雲が空を覆うように広がり始めていた。


「そうだな。もうすぐ雨が降るかもな」


 カイナの質問に、俺は空を見上げながらそう答えた。


「じゃあ、今日はそろそろ切り上げた方がいいんじゃない?」


「それは、…………」


『俺じゃなくって、リョカさんに言えよ……』


 と、内心思いはしたが、それをカイナには言えなかった。


 何故なら、今、リョカさんに話し掛けるのは難しそうだったからだ。


 俺は、視線を空からリョカさんの方へと移した。


「三人で、何を話してるんだろうな」


 俺と同じ様にリョカさん達を見ながら、俺の隣へ来たソウジが、独り言のように問い掛けてきた。


「…………」


 タイラさんが姿を現したのは、かれこれ三十分程前のことだろうか。


 俺と、トウジ、更にカイナも、久々……といっても三週間だが、まあ、それは置いておいて、久々だったため、俺達はタイラさんの元へと駆け寄った。


 それから、遅れてソウジも。


 リョカさんとハクさんの二人は、タイラさんの方へ近付いて来なかった。


「久しぶり」、「どうしたの」、「何かあった」……と、俺達、というより、カイナが矢継ぎ早に質問をしていたので、タイラさんの顔は困っている様子だった。


 しかし、それらの質問には答えず、タイラさんは、


「すまない、今日は……今は、リョカさんに用があるんだ。みんな、後にしてもらってもいいかな?」


 俺達は、別に構わなかったので、皆、一様に頷いた。


 その様子を見た、タイラさんは、


「ありがとう」


 と、礼を言って、リョカさんの方へと向かって行き、三人で何やら話を始めたのだった。


 何故だろう……


 いつもと三人の雰囲気が違うように感じた。


 リョカさんは不機嫌そうで、タイラさんは、顔がとても疲れているように見えた。


「確かに……何か話してるんだろうな」


 遅れて、俺は先程のソウジの独り言に答えたのだった。


 すると、ソウジがまたこちらを見ずに、話し出す。


「実はさ、アンジ……トウジ。二人に、言って無かった事があるんだ。出来れば、俺の中だけで止めて置こうと思っていたんだが……」


「何だよそれ、水くさいじゃないか?そもそも、団長に隠し事何てダメだろ」


「それを言われると……痛いな。だから、とりあえず、今、伝えようと思ってな」


「じゃあ、僕も聞いておいた方が良いってことだね」


「まあ、そういうことだ」


「何それ!私は?私には教えてくれないの?」


「別に…聞きたければ聞いていいぞ。ただ、楽しい話かどうかは、分からないがな」


「分かった。とりあえず聞かせてくれよ、ソウジ」


 俺はそう言って、話の先を促した。


「実は、アンジ達がシシカドへ来た日。二人が帰った後、遅れてリョカさんが帰って行くのを見かけたんだ。声を掛けようかと思ったんだが、イライラしていたみたいでな、止めた。どこから出て来たのかと思って、リョカさんの後ろへ目を向けると、そこには親父がいた。一緒にいたはずの、タイラさんの姿はなかった」


「エイダイさん?」


「そう。で、親父はそのまま部屋へ入って行ったんだ。なんだろな、俺は何だか気になって、親父にリョカさんの事を聞こうと思って、部屋の扉の前まで行った時、聞こえたんだ」


「何がだよ?」


 もったいぶるソウジを急かし、


「扉の隙間から親父の声で『何て事だ!まさか、身内に敵が潜んでいたとは!!しかも、それに長年気付けていなかったとは……』ってな。つまり」


「つまり、シシカドの中に『裏切り者』がいたってこと?」


 トウジの問いに、ソウジは頷き、


「多分な。まあ、親父に直接確認してないけど、間違いないはずだ」


 それを聞いて、トウジが、


「でも、ソウジ、どうして今それを教えてくれたの?」


 と、尋ねた。


 ふと、ある事に気付き、まさかと思いつつ俺は、


「ソウジ…………タイラさんを疑っているのか?」


 その問にソウジは頷き、


「ああ、疑っている」


 その答えに、俺達三人は、驚きを隠せなかった。



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