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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第六章
114/211

第114話 闇と光

 その建物の内部は闇に包まれていた。


 外から見れば、窓があることは確認できる。


 日中には日の光、夜には月明かりが中へと差し込むはずなのだが……


 ここの内部は違っている。


 全ての窓は封鎖され、一切の光が入り込まぬように手が加えられていた。


 その為、この建物の内部に光が差し込む瞬間は、入口の扉が開いた時のみしかなかった。


 しかしながら、その建物が誰もいない廃墟かといえば、そうではなかった。


 その様な、闇に閉ざされた空間をすき好み、居住としている者たちもいた。


 その者たちは、暗闇を苦にしない、むしろ心地よい空間と思えている。


 この空間を作った人物、そして、闇を好む者達の主。


 それが、コウエンであった。


 その主には、今、ある問題で頭をかかえていた。


 その様子を見せぬ様、いつもとは違う部屋にいた。


 無論、そこは建物の中。


 しかし、彼がいる場所は、光に包まれた空間だった。


 屋外に出ている訳ではない。


 その逆とでもいうべきであろうか、そこは建物の地下にある一室の更に奥にあった。


 その光は、常人でさえ、眩しく感じるであろうものであるが、部屋の外へ漏れることは無かった。


 その為、コウエン以外の者達は、入ることもままならない、いや、その前に、この空間があることを知らないはずである。


 光の根源は、巨大な石……


 そして、その石を守るかのように幾重にも結界が張られていた。


 巨大な石には、無数の管が取り付けられていた。


 何の目的で、結界が張られているのか?


 何故、無数の管が?


 それは、その石を守る為、引いては街の『光』を守る為、つまり、その巨大な石は、アンジ達の住む街の『光』の供給源なのだ。


 あの街の動力は、全てが『ここ』から送られている。


 闇を好む者の側に、光の根源が存在しているとは、滑稽な話である。


 しかし、そのことを知っている者は、この建物に住む者の中で、コウエン以外いなかった。


 彼に言わせれば、『やつらの知る必要のないこと』だからだ。


 そして、彼はこの『光』を止める事が出来る術を持っていた。


 結界を解き、『光』を消す……


 すると、街の光が全て消え、『アカツキ』の為の良い闇夜が出来上がる。


 コウエンのみが使える術。


 正確には、彼の中にある『エンセキ』が覚えている術であった。


 だが、今はそれを使う事が出来ない。


 それは、エスカの策によって、術が使えない状態にされてしまっている為に他ならなかった。


『アカツキ』を発生させることも、『光』を止めることも、今の彼には出来なかった。


 幸いとでもいうべきか、シュウキがあの術を記憶していた為、『アカツキ』の関しては、シュウキがこのところそれを発生させていた。


 だが、それはあくまでも偽りのモノ。


 シュウキのそれと、コウエンのそれでは、消滅するまでの時間の長さに大きな開きがあった。


 偽りのモノの存在する時間は短命で、長く見ても三時間程度であろうか。


 限られた時間、それに加え、『光』も止められない……


 その中で回収される『エンセキ』は、数も質も今一つだった。


『エンセキ』の数を増やし、質を上げるには、何らかの手を打たなければならない。


 エスカのいう期限。


 その期限の終わりは日に日に近付いては来ている。


 しかし…………


 ひととおり頭の中を整理した後、コウエンはある答えにたどり着く。


「止められぬならば、いっその事……破壊してしまうか」


 光る巨大な石に向かって、コウエンは静かに呟いた。


 一つ頷き、部屋を後にする彼の頭の中には、ある場所が浮かんでいた。


『さすがに、今回は一人で行くには荷が重いか……誰か一人連れて行こう……そうだな、ガクテイかヨウボが適任であろうか……』


 人選に迷いながら、地下から地上へと戻り、いつもの部屋へと入ろうとした時、


「おい!親父!!」


 と、大声で呼び止められた。


 もちろん、誰が呼んだのかはすぐに分かった。


『やれやれ……』


 と、思いながらも、声には出さず、


「騒々しいな、ガクテイ。一体どうしたというのだ?」


 普段通りの口調で声の主に尋ねる。


「『どうしたというのだ』じゃねえよ。仕事は?俺の仕事はまだ無いのかよ?」


『やはりそれか……』


 おおよその見当はついていた。


 何しろ、このところこれといって、ガクテイに何もさせていなかったからである。


 だが……


「ちゃんと考えている。『お前にしか』向いていない仕事だ」


「おっ!ほっ、本当か?」


 そう問われ、コウエンはゆっくりと頷きながら、


「本当だとも。近々また外出をする予定だ。その時には、お前に付いて来てもらわねばならん。よろしく頼むぞ、ガクテイ」


「よしっ!!分かった!しっかり準備しとくぞ。でもよ、全体置いて行くなよ!全体だぞ!」


「分かっておる。だが、準備の前に、もう少し静かにしておくのだぞ」


 と、声をかけたが、既に時遅し、ガクテイの姿はもう無かった。


『やれやれ……先程まで、私は何を悩んでいたのだか……』


 頭を横に振りながら、コウエンは部屋へと入っていった。



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