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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第六章
110/211

第110話 ソウゴ

 その場から離れて行くムロク隊長の姿を、アンジは見ていなかった。


 アンジの頭の中は、すでに目の前にいる『ソウゴ』の事でいっぱいになっていた。


 刀を下ろし、ゆっくりと彼は振り返り、


「大丈夫か?」


 と、笑顔でアンジへ声を掛ける。


「だっ、大丈夫です…………あっ、その、……ありがとうございます」


 とりあえず、間一髪の所を救ってもらった事に、アンジは礼を言う。


「何、気にするなって。ま、もっと早く助けに入っても良かったんだけどな、ギリギリに登場した方がカッコいいだろ?」


「………いや、まあ、そうですね……」


 彼の言ったことに虚をつかれ、アンジは曖昧な答えをする。


『なんだろう……この感じ……』


 すると、


「よう!久しぶりだな、ソウテンなんちゃら」


 と、彼に向けて声を掛ける人がいる。


 もちろんそれは、


「ソウテンなんちゃらって、呼ぶなら、ちゃんと呼んで下さいよリョカさん!無理なら…いや、無理じゃなくっても『ソウゴ』にして下さい」


 そう、あの人だ。


「まあ、まあ、そう怒るなって。おっ、そうだ、こいつがアンジだ。よろしくな。それと、こっちがトウジだ」


 リョカさんに紹介されたので、改めて俺達は、


「アンジです」


「トウジです……」


 一礼をしながら名を名乗ると、


「そっか。君たちか。俺は、ソウテンオフジゴウライ……長いだろ?だから、みんな俺のこと、略して『ソウゴ』って呼んでる。君たちも、それでいいよ」


 と、彼は笑顔でそう言ってくれた。


 金色の短い髪。俺と同じ位だろうか。


 容姿は…………丸い……背丈は俺より頭一つは高い。


 ただ、横幅が俺の二倍近くあるのではないかという感じがする。


 だからといって、俊敏性が無いわけではないのだろうと、俺は思った。


 何故なら、先程のムロク隊長の一撃を受ける際、俺は、全く彼の存在を近くに感じていなかったのだから。


 見た目じゃないってことを、体現している人なんだ、きっと。


「あの、ソウゴさん……改めて、さっきは、ありがとうございました」


 俺はまた頭を下げてそう言った。


「いいから、いいから。気にしない、気にしない」


 と、彼は笑顔でまた答えてくれた。


「それより、いつから見てたんだ?」


 割って入るように、リョカさんが急にソウゴさんに尋ねると、


「いつからって、言われても……彼がムロク隊長に飛び掛かる少し前くらい……ですかね」


「そうか、じゃあ、彼女はどれくらい『本気』だったんだ?」


「えっ?」


 そう聞かれた時、笑顔だったソウゴさんの顔が素に戻る。


「いつも、彼女を見てるお前なら分かるだろ?どうなんだよ?」


「それはまた、困った質問ですね。確かに、リョカさんよりも近いところではみてますけど……」


「そうだろ?お前の方が分かるはずだろ、どうなんだよ?」


「弱ったな……じゃあ正直に言いますけど、最近、彼女が誰かと仕合いをしているところは……みてないんですよね。というのも、周りがみんな避けてる……と言った方が正しいのかも知れませんが」


「避けてるって?何でだよ?」


「それは……彼女が強いからですね。ここへ来た当初はみんな面白がって『俺が相手してやる』って感じだったんですけど、実力が分かってくると次第に避けてるようになっていったんですよね。なんだかんだ言っても、やっぱり女性に負けるのは不本意ですからね」


「なるほどな。そりゃ確かにそうだ」


「ですから、質問に答えるとしたら、最近のところは、分かりません。ですけど、当初の彼女……まあ、どこまで本気だったかは分かりませんが、それを元にするならば、隊長以下……一般の隊員以上の仕合いだったと思いますよ」


「ん~、なんだかよく分からないが、そこまで本気じゃ無かったってことだな」


 リョカさんがそう言うと、ソウゴさんは困った様子で、


「そう言われると、みもふたもないもないですね……」


 と、苦笑いをした。


「そう言えば、お前は相手してもらったのか?」


 思い出したかのように、リョカさんがそう尋ねると、ソウゴさんは首を振りながら、


「いや、残念ながら。私の相手は出来ないと、頑なに断られました。だから、彼が、アンジ君がうらやましいです……」


 そう言って、ソウゴさんは俺の方を見たのだった。


 自分のせいではないが、何故だか申し訳ない気になった。


「まあ、とりあえず、用事も済んだことだし、帰るか。……と、その前に俺はタイラと、エイダイさんのところに行って来るから、お前達は適当に帰ってろ」


 俺の考えなど知るよしもないリョカさんは、そう言い残し、タイラさんを連れて建物の方へと歩き出した。


「えっ?俺達だけですか?」


 リョカさんの背中に向かって、俺がそう尋ねると、


「他に誰がいるんだよ。じゃあな」


 と、振り向く事すらなく、素っ気ない返事が返ってきた。


「…………」


 残されたのは、三人だけになった。








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