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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第六章
105/211

第105話 制御するのは……

「おっ、タイラ、待たせたな」


 リョカさんは、やけに明るくそう声を掛けた。


「いえ、そんなことはありませんよ。ただ、ついさっきまでは半信半疑でしたよ。やはり、冗談ではなかったのですね」


 タイラさんが困ったような顔をしてそう言うと、


「当たり前だろ。俺は嘘と冗談はいわないだろ?」


 と、リョカさんが当然の事のように返すのだが、


「………」


「………」


 俺とトウジは顔を見合わせる。


『そうだった。今日は、ハクさんがいないんだ…』


 いつもリョカさんの暴走を抑制してくれている、ハクさんが今日はいない。


 これは大問題だ。


『タ、タイラさん、何とかリョカさんを制御してください……』


 俺達二人は、心の中で必死にそう願うのだった。


 タイラさんは、知ってか知らずか、


「そうですね」


 と、一言リョカさんに返事をした後、続けざまに、


「まぁ、それはそうと、リョカさん、今からどうしますか?」


「ん?」


「一応、現在の居場所の確認は出来てますが、どうしますか?」


 タイラさんがそう尋ねると、リョカさんは嬉しそうに、


「おっ!さすがタイラ!仕事が早いな。じゃあ、そうしよう。しかし、もう一つの…」


 そう言い掛けた時、


「そちらも大丈夫ですよ。先程、総隊長にも会って了承を得てます」


「そうか。…何から何まで悪いな」


 リョカさんは珍しくばつが悪そうにそう言った。


「別に良いですよ。そんなに気にしないで下さい」


 タイラさんは、笑ってそう言い、


「では、行きましょうか」


 そう言いながら俺達に背を向け歩き出した。


 それにリョカさんが続き、その後を俺とトウジが続く。


「何処へ向かうんだろう?」


 歩きながら俺は、トウジに尋ねた。


「さぁ、何処だろね」


 首を傾げながらトウジはそう答えた。


「それよりさ、改めて見たらやっぱり広いね。ここ」


 トウジが辺りを見渡しながらそう言った。


「確かにそう言われれば……」


 俺も歩きながらトウジ同様辺りに目をやる。


 正面には大きな建物がある。


 きっとあの建物にエイダイさんはいるのだろう。


 それにしても、あの建物も門と同様、黄色い壁で覆われている。エイダイさんの趣味なのだろうか?


 そして、左手には広く整備された訓練場?とでもいうのだろうか、広場ある。


 そこでは、藍色の制服に身を包んだ隊員達が訓練をしている。


 気のせいか、さほど緊張感があるようには感じなかった。


「へぇ、あっちで訓練やってたんだ…気付かなかったな」


 以前ここへ来ていた時は、気持ちに余裕が無かったせいかもしれない。


 入口を背に、右手にある白い壁の建物に目を向ける。


 あの時、俺達はあの建物に用事があった。


 そう、カイナが『いた』場所だ。


 そして、彼女が帰ってきて以来、俺達は一度もここへ来ていない。


『周りの景色の見え方って、その時の気持ち一つで全然違うんだな…』


「アンジ!何やってるんだ早くこい!」


 いつの間にか足が止まっていた俺に、リョカさんがそう叫ぶ。


 慌てて俺は、急いで皆の元へと駆け寄った。


「すいません。っていうか、リョカさん、一体何処へ行くんですか?そろそろ教えて下さいよ」


「もう着いたぞ。ここだ」


「ここって………」


 そこは、広場の端。


 街の通りと敷地を仕切る壁の内側に植えてある、木々のの一つの根元だった。


「この木に……何かあるのですか?」


 木を見上げながらそう尋ねると、


「あるわけないだろ。そっちじゃなくて、あっちだよ、あっち」


 リョカさんは、もう一本向こうにある木を指差す。


 そこには人影が一つある。


 紫色の長い髪の女性だ。


 両目を覆うように結ばれた藍色の布らしきものは、頭の後ろの方で結ばれている。


 藍色……着ているものも同様だった。つまり…


「タイラさん、もしかして……」


 俺がそう尋ねると、彼は頷き、


「そうだよ。彼女がムロク隊長だ」


「やっぱり!」


 男性とは違う、凛としたたたずまい、何と言うか……


「なんか、格好いいね」


 トウジの漏らした言葉に、俺は無言で頷いた。


「よし、じゃあ、行くか」


 おもむろにリョカさんがそう告げる。


「行くって、何処にですか?」


「決まってるだろ。見とれてるだけじゃ、つまらないだろ、アンジ?」


「まっ、まさか、リョカさん?」


「その、まさか、だよ。ほら、行くぞ」


 そう言うと、自ら先に動き、彼女の方へと俺達を促すのだった。


「ちょ、ちょっと、待ってくださいよ」


 慌てながら、俺は思った


『ハクさん…あなたがいないと止められません……』



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