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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第六章
103/211

第103話 不満と空腹

 翌日の朝。


 いつものように早起き出来ない俺……


 いずれトウジが起こしに来てくれると、思いながら、二度寝、三度寝と繰り返していたのだが、


 ドンドンッ!ドンドンッ!


 と、豪快にドアが叩かれた事に驚き、俺は飛び起きて、


『いつもと違う。何かあったのか?』


 そう思い、急いでドアを開けた。


 すると、そこにはリョカさんが立っていた。


「朝だぞ、アンジ」


 至って普通の声で彼はそう言った。


「えっ!?」


 俺は、呆気に取られてその一言しか声が出なかった。


「何だ?どうした?何を驚いているんだ?」


 と、不思議そうに聞かれた俺は、


「いや、何かあったのかと…」


「何かってなんだ?そんなことある訳ないだろ。まだ寝ぼけてるのか?」


『いや、むしろハッキリしてる位です!』


 そう思ったが、


「そうかもしれませんね」


 と、話を合わせた。そして、


「どうしてリョカさんがわざわざ起こしに来てくれたんですか?」


 そう聞くと、リョカさんはニヤッとしながら、


「まあまあ、いいじゃないか。たまには。早く降りてこい。話しはメシを食ってからだ」


 そう言い残し、リョカさんは下へ降りて行った。


『……何かあるな。絶対。何か………』


 そう思いながらも、身支度を済ませ、俺は、食堂へと向かった。


 が、そこにはリョカさんはいなかった。


 トウジとカイナ、それとリンドウの姿はあったが、ハクさんはいない。


『何なんだ、一体?』


 首を傾げながら中へ進むと、俺に気付いたトウジが、


「おはよう、アンジ」


 それに続いて、カイナとリンドウもあいさつをしてきたのだが、


「…あぁ、おはよう…」


 リョカさんの事が気になって、まともにあいさつをする事が出来なかった。


「どうしたの?朝から難しい顔して?」


 それに気付いたカイナが、不思議そうな顔で俺を見ていた。


「いや……」


「あ、分かった。さっき起こしに来たのが、僕じゃなくってリョカさんだったからでしょ?」


「ん?トウジ、リョカと何か話したのか?」


「何を?」


「何をって……何を?何をだろう?そう、…何で今日はリョカさんが来たんだよ?」


「驚いた?」


「そりゃもちろん驚いたさ!飛び起きたよ」


 俺がそう言うと、トウジとカイナは笑いだした。


「何がおかしいんだよ!」


 その様子に俺は腹が立った。

 

「ごめん。アンジ。僕もそうなるって分かってたから、リョカさんを止めたんだよ。でもね、『今日はのんびりしてる暇はないんだ。俺が叩き起こしてくる』って言われて、その理由を聞こうと思ったら、

 あっという間に上に行ってさ、本当かなって話しをしてたら、ね?」


「『飛び起きた』って、アンジが言うんだもん」


 話しながら、トウジとカイナは笑いを堪えていた。


 だが、俺は、ある言葉が気になり、腹を立てていたことを忘れ、


「トウジ、やっぱり今日は何かあるのか?何でのんびりしてる暇がないんだよ?もしかして『アカツキ』が出るのか?」


 トウジはカイナと顔を見合せた後、


「そんな訳無いでしょ。」


「そうよ、何を言ってるの?」


 カイナも続けた。


「じゃあ、一体何があるんだよ!」


 俺がそう言うと、


「おいおい、大きな声を出してどうした?アンジもうメシ食ったのか?」


 振り向くと、リョカさんが入口に立っていた。


「リョカさんのせいですよ」


 トウジがそう言うと、


「俺のせいだって?」


「そう!アンジはリョカさんに起こされて機嫌が悪いみたい」


「何だって?そうなのか?」


「いや、そうじゃなくって………」


 何でそうなるんだ……


 トウジ達三人のやり取りに呆れ果てていると、不意に、


「リョカさんが、今日はシシカドに行くってことをアンジに言わなかったからこうなったのです」


 と、リンドウが口を挟んだ。


「えっ!?そうなんですか!?」


 リンドウが口を開いた事にも驚いたが、その内容に更に驚いた。


「おい、リンドウ……先にそれ言うなよ。せっかく驚かそうと思ってたのによ」


「仕方ありません。話しが長引きそうでしたので」


 と、リンドウはいつもの口調でリョカさんに伝えた。


「そうか……まあ、そういうことだ。今日はシシカドに行くぞ。アンジ、トウジ用意しとけよ」


 元気なくリョカさんはそう告げると、部屋へ入ることなく、その場を後にした。


『大人げない……』


 その姿を見て、俺の怒りはどこかへ行ってしまい、残ったのは空腹だけだった。


「じゃあ、早く食べてしまうかな」



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