循環型社会は可能
誰が考えても「素晴らしいこと」「良いこと」が実現しないのが不思議。
お金の要る世界ではたくさん作ってたくさん買ってもらう。
それがお金を流通させるために必要だということはわかった。
子どもの世界ではゲームもマンガ本も貸したり借りたりするのが当たり前だった。
大人の世界ではたくさん買ってもらわなければいけない。
資源をたくさん使うことも問題だけど再利用するとなると何か問題が起きるのかもしれない。
幸夫はその話をしようと思って参加したみたいです。
「こんにちは、よろしいですよ、私は60歳の主婦素子です、
よろしくお願いしますね」
「僕は23歳の会社員栄治です、よろしくお願いします」
「僕は小学6年生の稔です、わからないことが多いので
参加しています、いろいろ教えてください」
「丁寧な紹介ありがとうございます、僕は40歳です、
いろんな仕事をしていま契約社員です、よろしくお願いします」
掲示板に幸夫という男性が入ってきて少し緊張気味だけど、
「いろんな仕事をして」という文言に興味を持った栄治が尋ねてみた。
「幸夫さんはどんな仕事をされたんですか?」
「金融業や運送業や他にもいろいろですよ」
「僕は社会人になったばかりだけどなんだかお金儲けがイヤになって
転職を考えているんです」
「僕も同じ気持ちでいろいろ転職してきましたよ」
「それで何かわかったんですか?」
「お金がないと生きていけないってこと、それに・・・」
幸夫は続けて答えた。
「お金儲けをしない社会なら仕事が楽しくなるってね」
「へ~、仕事が楽しくなるんですか?」
「そうですよ、罪悪感が無くなることが大きいかもしれませんね」
「罪悪感ですか?」
「いろんな罪悪感がありましたね」
「そう言えば『お金儲けが悪いんですか?』という
言葉を思い出しましたよ(笑)」
「お金儲けのために心を痛めることは多いですよ」
「そうなんですか」
「保険会社のことを書きたいけど、いまは資源の無駄という話題に
参加しようと思って参加しました」
稔も幸夫の「仕事が楽しい」というコメントに興味を持った。
栄治が「仕事がつらい」と言ってたからだ。
そこで稔は幸夫に尋ねた。
「幸夫さん、資源が無駄にならない方法があるんですか?」
「ありますよ、お金の要る社会では難しいことだけどね」
「それはなんですか?」
「完全循環型システムを作ることなんです」
「完全循環型システムですか?僕はよくわかりません」
「インターネットで検索してみてごらん」
「はい、さっそく見てみます」
稔は聞きなれた「循環型社会」で調べてみた。
ウィキペディアでは
「循環型社会とは、
有限である資源を効率的に利用とするとともに再生産を行って、
持続可能な形で循環させながら利用していく社会のこと」
とあった。
「あの~循環って同じ資源を何度も使うってことですか?」
「簡単に言うと、そうですよ」
「すごいじゃないですか」
「それがいまのお金の要る世界では難しいんですか?」
「そうですね、すべてはお金が原因だからね」
「でもお金を使えば出来ることなんでしょ?」
「ところが誰もお金を使うことを嫌がるんですよ」
稔はこんなに良いことがなぜ難しいんだろうと疑問に思った。
稔はどうしても聞いてみたくなった。
「幸夫さん、僕はどうしても大人の社会がわかりません、
良いと思うことがなぜ出来ないのか」
「それはね、お金をもうけなきゃいけないからですよ」
「やっぱりそうなるんですか?」
「すこし話が長くなるけど良いですか?」
「はい、かまいません、知りたいです」
幸夫は語り始めた。
「この社会は大人も子供もお金がないと何も出来ないことは
わかっているよね?」
「それはわかってます」
「だからすべての仕事はお金を得るためにします、
だから損することは出来ないんです」
「はい」
幸夫は続けてコメントを書き始めた。
「産業廃棄物の運搬をしてたときの話です。
住宅リフォームや建築会社の廃棄物を山間部の産業廃棄物処分場へ
持って行くんですけどね、まだ使える新品や
『これを埋めたら土壌汚染になるんじゃないか?』
と言うような物まで埋めて土をかぶせるんです。
小さな末端の運送屋は分別する経費を浮かせるために運ぶんです」
「しっかり分別する会社もあるんでしょ?」
と素子が気になって聞いてみた。
「従業員が多くて経営が安定している企業はそんな事はしないと思いますよ」
「それなら安心ね」
「問題なのは産業廃棄物の不法投棄です」
「テレビでかなり取り上げていましたね、芸能人が不法投棄を近所の人たちと
片付けるボランティア活動」
「僕も見ましたよ」
と稔もコメントを入れた。
幸夫は続けて
「自然の立場から見たら不法投棄も産業廃棄物処分場も無くして欲しいと
思ったんです。
『捨てるならここに捨ててください』
という場所を作ったら良いのにってね」
「それなら不法投棄が無くなるじゃないですか、
私の実家の近所の山間部も不法投棄で悩んでましたよ」
と素子が喜んだ。
「それでね、産業廃棄物処分場はそのまま埋められてしまうけど、
一箇所に集められた産業廃棄物をすべてリサイクル出来るように
大規模リサイクルセンターの建設を考えたんです」
「僕学校で習ったことがあります、リサイクルは大切だって、
でもいまの社会はやっているんじゃないんですか?」
「すべてを回収して分別したり、再利用するには
お金がかかりすぎるんですよ」
「そうですよね」
栄治が気になってコメントを書いた。
「リサイクルが当たり前になってくるといままで作ってきた会社の仕事が
減ってくるじゃないですか?」
「そうなんです、たくさん作ることで経営が成り立っていたから
リサイクルが増えると経営が出来なくなるんです」
「それならリサイクルと生産と両立させれば良いじゃないですか」
「そうなんですよね、それを簡単に実現してくれるのがお金のない世界なんです。
大規模リサイクルセンターの実現が解決してくれるんです」
そこでみんなは納得した。
お金の要る世界では出来なかったことが
お金のない世界では簡単なことなんだと。