第2章 苦戦! 勇者人生初の決闘! 第1話
『三の日七の月巨大な化け物が倒されて二週間経ちました。ノルント王国から避難してきた私も大分落ち着いてきたので、日誌を再開しようと思います。
あの時の事を思い出すのは今でも怖いですが、何かの役に立つかもしれないので日誌に残しておこうと思います。あの時の事は忘れもしません。
二週間前の十九の日六の月。化け物が現れた時、私と母は家にいました。私は家で母の家事を手伝っている時、大きな音と地響きがしました。それも一度ではなく、断続的に何度も何度も…………、(一体何が起きてるの?)私はそう思いながら、外に出ようとしました。家にいた母もこの時は何が起きたかは分かりませんでした。
どんどん音は大きくなり揺れもひどくなっていき、家の物が倒れたり割れたりして私も揺れで歩くのが困難な程でした。
何とか扉にたどり着き開けようとしたその時、外から扉が開きました。扉を開けたのは父でした。父は王国軍の兵士でしたが、私達家族を避難させるために命令違反をしてまで来てくれました。
「あなた一体何があったのですか?」
母は尋常じゃない様子の父に外の様子を聞きます。
「逃げるぞ。二人とも、今すぐに」
父は私と母の手を掴んで、避難させようとします。
「待ってお父さん。何も持ってかないで避難なんて出来ないわ」
母も「せめて理由を教えてください」と言っ言います。父は私と母の肩に手を置いて言いました。
「よく聞きなさい。信じられないかもしれないが、暗黒の山から巨大な化け物が現れてこちらに向かっているんだ!」
父はさらに続けます。
「我が軍は迎撃体制を整えているが、とても勝てるとは思わない。だから逃げるんだ。さぁ早く。」
私はにわかには信じられませんでした。
母もそうでしょう。暗黒の山の魔族は百年前に起きた魔神戦争でほとんどの滅ぼされたと言い伝えられていたからです。
だけど、外の慌ただしい音が父の言ってることが嘘ではないということを物語っていました。
外では兵士達が北に向かい、反対に町の人々は南に向かって逃げていきます。
私と母も父と共に避難する為に父を説得して最低限の荷物を持って外に出ます。私はこの日誌を持って外に出ました。
どんどん音と揺れがひどくなり近づいてきます。外の道は、様々な人でごった返してとても身動きが取れません。
父は人をかき分けて道を作り母と私ははぐれないようにくっついて父の後をついて行きます。
「向こうに馬車が待っている。そこまで行けばすぐ逃げれるぞ!」
どうにか馬車にたどり着き、街を出た後、大砲や叫び声が後ろから聞こえてきました。でも父から「後ろを振り向くな」と強く言われていたので後ろでは何が起きてるか分かりませんでした。
けれど母のひと際大きい叫び声と、とても人の声では出せない大きくて不気味な咆哮が聞こえてきました。私は振り向きました。とても怖かったけど……、ソレを見てしまいました。
巨大な角を生やした恐ろしい化け物がノルント王国を私の家を踏み潰しながら、こちらに向かってきたのです。母は気絶していました。化け物が再び咆哮しました。
馬車を引っ張っていた馬が泡を吹いて倒れました。私達は馬車を捨て、徒歩で逃げました。気絶した母を父がおんぶし、私は持てる荷物と日誌を持って必死に逃げます。
向かう先は、エーヴィヒカイトフリーデン 王国。南にある、山と森に囲まれた王国に一目散に向かっていました。
化け物は王国を徹底的に破壊すると今度は逃げる私達を追いかけるかのようにこっちに向かってきました。
私達は必死に逃げました。化け物の一歩一歩はとても大きくどんどん近づいてきます。
時々振り返る時に見える化け物の目はとても冷たく感情こもってないように見えます。
その目と私の目がと合ったような気がしました。
その時思いました。化け物の目に感情はこもっておらず私達を虫のように潰そうと、その大きな足を使って近づいてきます。
私達家族は何とかエーヴィヒフリーデン王国にたどり着き、地下の避難所に避難できました。避難できても揺れは収まらずこのまま死んでしまうかと思ったその時、揺れが収まりました。
私達が避難壕から出た時、そこには巨大鉄の巨人が佇んでいました。私達はその巨大な鉄の巨人に助けられました。
その巨神に乗っていたのは異世界から来た勇者様だそうです。いつかお目にかかれたらお礼を言いたいです』
少女は日課の日誌を書き終え寝むりについた。少女の名はサンネ。その少女は炎が助けた炎の妹日向に似たあの少女だった。
その勇者はというと……。