第3話
深い森を抜けた先にその王国は存在した。
その王国は人を寄せ付けぬ深い森だけでは無く、三方を高き山々に囲まれており永らく戦乱とは無縁の王国である。
迷宮の森と砦の山に守られた王国。エーヴィフリーデン王国。その名は永遠と平和を意味する。その王国の中央にあるのはエーヴィフリーデン城。
その城の玉座に座るのは、美しい金色の長髪をハーフアップに纏め純白のドレスを身に纏い美しいエメラルドの瞳を持つ、王女イーリス ・ヴァイス ・スマラクトその人であった。
彼女はスマラクト王家の13代目女王で王国建国当時から代々この王国を統治してきた。
代々の王族は民達に好かれ王族達はこの王国を繁栄させてきた。
もちろん彼女イーリスも民と王国を守り繁栄させてきた。
あるよく晴れた爽やかな朝の日の事。
女王と女王を守るロートシルト騎士団のいる玉座の間に一人の男が王女に謁見に来ていた。
王国を守る王国防衛軍隊長アッシュである。
「女王陛下。速やかにお耳にお入れしたいことが御座います。暗黒の山脈を監視中の部隊から報告がありました。」
「続きを」とイーリスが続きを促す。
「報告によるとここ数日オークやその他のモンスターどもが姿を消したという事です」
「それは姿を隠しているという事ですか?」
アッシュは冷静を務める。
「いえ。完全に姿を消し、気配も全くないとの事、このような事は今まで一度も有りませんでした。何か恐ろしい事が起こる前触れではないかと、兵達は恐れています」
イーリスは1つ頷くと「分かりました。引き続き監視を怠らずに任務を全うするようにと、伝えて下さい」
「 承知しました」と言って退室するアッシュを見送ってから、イーリスはロートシルト騎士団団長のツィトローネを呼んだ。
王女の前に現れたのは女王と同じ金色の長髪をサイドアップに纏めた紅い瞳とお揃いの紅い鎧を身に纏った女性だ。
「お呼びでしょうか? 陛下」
イーリスは他の者を下がらせツィトローネと2人きりになる。
「ツィトローネ。よく聞いてください遂に予言の日が来ました」
「という事は、姉様あのお方をお呼びする日が来たという事ですね?」
妹のツィトローネは2人きりの時はイーリスのことを姉様と呼ぶ。
「ええ、1年前、暗黒の山脈に落ちた流星は、やはり予言にある侵略者なのでしょう。そしてここ最近の異変から見てもはや一刻の猶予もないはず。わたくしは召喚の準備を始めます。何かあったらコレで、連絡を」
そう言って妹とお揃いのイヤリングを指差す。
「分かりました。姉様お気を付けて」
退室するツィトローネを見送ってからイーリスは、一族のものしか入れない秘密の間へ向かうのであった。