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鋼の巨神 バーニンガー   作者: 竜馬 光司
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第9話

エーヴィヒフリーデン王国に帰還する事を決めたアッシュ達は、フーカー達と合流する為に角笛を鳴らす。

城の前で待っていると、城下町で生存者の探索を行っていたフーカー達と合流する事ができた。

彼らの後ろには数名の男女がついてきていた。

「お待たせしました。そちらは何か収穫はありましたか?」

「こちらはゴディーオ聖王を保護したが、他の生存者はいなかった」

そう言ってアッシュは力なく座り込むイースディー聖王国の最高権力者をちらりと見てから、フーカーの後方にいる人たちを見つめる。

「お前の方も生存者を見つけたようだな」

「はい。家の地下の物置などに隠れていました。隊長、我が王国にて保護しようと思うのですがよろしいですか?」

フーカー達に救出された人々は老人が一人、赤ん坊を抱き抱えた母親と、十歳にも満たない幼い兄妹の五人だった。

皆、顔見知りではないらしくお互いの名前も知らないようだった。

この五人にゴディーオを含めた六人が、イースディー聖王国の生存者であった。

「それは構わないが、どうやって移動させる? ずっと歩きというわけにもいかんだろう」

「その点なら大丈夫です。ここに来る途中無事な馬車を見つけました。それに乗ってもらおうと思います」

突如、大きな虫の羽音が聞こえてくる。

「この音は、まさかまだ生きている奴が……」

アッシュがそう言い終わるか終わらないかのうちに、約百メートル程離れた路地から虫の化け物が飛び出し、近くにいた兵を角で串刺しにする。

「くそっ! 全員集まれ。散らばっても勝てないぞ!」

「アッシュ、あれを!」

フーカーが指差す方を見ると化け物の近くにもう一人の兵士がいた。

「馬鹿野郎! 早くこっちに来い!」

「あ、あ、わあああ!」

彼はアッシュの命令を無視し、仲間の敵を討とうと顔めがけて槍を突き立てた。

その一撃は甲殻に阻まれ、食い込んだだけで致命傷にはならない。

虫は巨体に似合わぬ素早い動きで、自分を攻撃してきたものに狙いを定める。

兵士は 「ひっ!」と悲鳴を上げた直後に腹を貫かれ絶命した。

「くっ、みんな下がれ。城まで避難するんだ! 急げ!」

残った六人の部下は命令を守り、五人の生存者と、ゴディーオを城まで連れて行く。

「オギャー!オギャー!」

母親が抱いていた赤ん坊が恐怖を感じたのか突然泣き出す。

その声が聞こえたのか、その鋭い角がアッシュ達の方に向けられる。

だが直ぐにはこっちに向かってはこない。

貫いたままの二つの死体が邪魔なのか、振り落とそうともがいていた。

「聞け、フーカー。俺は奴を殺す」

「無茶だ! あいつに殺されてしまいますよ!」

「大丈夫だ。俺にはコレがある!」

そう言ってアッシュは愛用の得物を担ぎ直す。

「あのトロルの頭を潰したコイツならあの化け物も殺せるはず、いや、殺す!」

化け物が一つの死体を振り落とした。

「俺がもし失敗したら、お前が隊長を継げ。そして皆を無事に王国に連れ戻すんだ!」

フーカーの返事を待たずにアッシュは全速力で駆け、巨大な虫に肉薄する。

早くしないと突進されてしまう。

そうなれば部下達がこの地獄を生き残った人々が全滅してしまう。

そうなる前にまずは間合いを詰める。

化け物は近づかせまいとしたのか、二つ目の死体をこちらに投げつけてきた。

それを間一髪で避け距離を二メートルまで詰める。

今度はその巨体を生かして角で素早く突いてきた。

アッシュは右斜め前に向かって飛び込んで避ける。

起き上がると、体制を立て直そうとした虫の顔が目の前にあった。

「もらった!」

両手に持った大戦斧を振り下ろす。

「何っ!」

振るった一撃は固い甲殻に阻まれ致命傷とはならない。

だが目だけは守れなかったようで、左目が潰れ紫色の血が噴き出した。

化け物は目を潰された痛みを力に変えて首をメチャクチャに振り回す。

「ぐっ!」

固い所に当てたせいで一瞬動きが止まったアッシュの胸部に、角が鈍器の様に叩きつけられ、

地面に倒れる。

衝撃はある程度鎧が防いでくれたが、それでも肋骨にヒビが入ったのか、動こうとすると鈍い痛みが襲ってきた。

その痛みを堪えて立ち上がる。

何故ならまだ虫の化け物は生きていているのだから。

動かなければこちらが殺される。

左目を潰されたせいだろうか、アッシュに気づかず暴れまわっていた。

「あと一撃が限界か」

自分の状態を確認し、最後の一撃に全てを賭ける。

どんな武器でもそうだが、やみくもに攻撃しても止めはさせない。

特に斧というのは見た目以上に一瞬の判断が大事な武器なのだ。

暴れていた虫が動きを止める。

次の獲物に狙いを定めたようだ。

それはいま城に逃げ込もうとしているフーカー達だった。

「やらせるか!」

雄叫びを上げ、大戦斧を大上段から振り落とす。

狙い違わず、甲殻に覆われていない首に深々と叩きつけられた。

「ギ!?!?チ!?」

虫の化け物は声にならない悲鳴を上げながら潰れるように倒れる。

「ギ! ギ! ギ!」

「くたばれー!」

アッシュは痛みを堪え、首から斧を引き抜くともう一度叩きつけた。

今度こそピクリとも動かなくなった。


虫の化け物を地獄に送ったアッシュは応急手当を受けていた。

肋骨は折れているらしく王国に戻ったら、ちゃんとした手当が必要だった。

治療が終わった直後、幼い兄妹がやってきた。

二人は緊張しているのか中々喋らない。

「どうした。お前たち」

話しやすくなるかと思い、起き上がったアッシュは先に切り出す事にした。

「……ありがとう」

「んっ?」

「とうさんとかあさんは、あの虫にころされたんだ。だから、あいつを殺してくれてありがとう」

「ありがとうございます」

兄の言葉に釣られるように妹もお礼言う。

「……そうか、それならよかった。二人ともよく聞くんだ」

アッシュは兄妹の肩に手を置き、瞳を真っ直ぐ見つめる。

「これから厳しい事や悲しい事がいっぱいある。それと同じくらい幸せな事も同じくらいある。だから二人で力を合わせて生きていくんだぞ!」

「「うん!」」

「よーし二人ともいい子だ。さあ馬車に乗るんだ。俺たちが安全な場所に連れて行くからな」

兄妹は笑顔でアッシュの元を離れて馬車に向かった。

アッシュは(化け物は大群でこの国を襲った。もしかしたら兄妹の仇は別のやつかもしれない) そう思ったがそれを口に出す事は無かった。

言っても無意味な事だと思った。

治療を終え、再び鎧を着ると部下に自分の馬を連れてくるように命令する。

「アッシュ! ひどい怪我をしているのにどこへ行くんだ? 」

フーカーがそれを見つけ詰め寄ってきた。

「今の状況は俺の怪我がどうこう言っている場合ではないんだ」

「? どういう事だ」

「俺は二人ほど連れてゴディーオ聖王とともに先に王国に戻る。ここを襲った連中が我が王国を襲撃してくる可能性がある」

アッシュは可能性があると言ったが、それは限りなく百パーセントに近いものだった。

「一刻も早く知らせなければならん。だから俺は先に行く。お前は生き残った人々を頼む」

「待ってくれ! なら俺も共に」

「駄目だ! 俺とお前が一緒に行ったら、残されたもの達は誰が指揮するんだ!」

「そ、それは……分かりました」

「頼むぞフーカー。ここにいる全員ををちゃんと王国まで連れて帰るんだ。いいな?」

フーカーは自分の心臓に手を当てる敬礼をする。

「はっ。必ず連れて帰ります!」

アッシュは愛馬に跨がり、後ろにゴディーオを乗せ部下二人と共に、一路エーヴィヒフリーデン王国に向かうのだった。


アッシュがイースディー聖王国に向かってから三日が経っていた。

曇りの日が続いていたが、王国では特に大きな事件もなく穏やかな時が流れていた。

「どうやら炎様とは上手くいったようですわね」

その日の朝。

女王の居室ではヴェスジック王国の魔法使いツールトが訪問していた。

イーリスの短い休憩時間を利用して、お互いハーブティーを飲みながら先日の花祭りの出来事を話していた。

「ええ、貴女達が助けてくれたおかげです。お陰でとても楽しい一日を過ごせました」

イーリスはお辞儀をする。

「頭を上げてください。こちらこそ幸せそうなお二人を見て私も幸せな気分です」

「そう言われると恥ずかしいですわ」

イーリスは顔を赤くして俯いてしまう。

「ふふっ、イーリス様。それが花祭りの日に炎様から頂いた……」

ツールトの視線が、机に置かれている鉢に入った花に注がれる。

その傍らには射的で手に入れた騎士の人形も置かれていた。

「そうです。これが炎から頂いたシュネークリスタです」

そう言ってイーリスの顔が綻ぶが、直ぐに表情が曇ってしまう。

「あら、どうしたのですか? 浮かない顔をして」

「その、人がどうこう出来る事ではないのはわかっているのですが……」

イーリスは黙ってしまう。自分が思っている事を言うのを躊躇っているようだ。

「どうしたのですか? 聞かせてください。話すだけでも気が楽になるものですよ」

「そう、ですね。では聞いてくれますか?」

「はい。勿論です」

「この花を枯らさない方法は何かないでしょうか?」

シュネークリスタは美しい花だが、どんな花もいずれ散ってしまう。

後長くても五日ほどで枯れてしまう可能性が高かった。

「折角、炎から貰った大切な花なのに失いたくないんです」

(うう〜、言ってしまいました。恥ずかしいです)

因みに何回もシュネークリスタを手に入れた事のあるリーベは押し花などにして保存している。

イーリスもそれを知っていたが出来れば、そのままの形で残したかった。

「成る程、それならひとつあるにはありますが……」

「! それは何ですか? 是非とも教えて下さい」

「氷の魔法を使います。そうすれば、その花の時を止める事が出来るかもしれません」

「お願いします! ツールト。その魔法をこの花に掛けてくださいませんか?」

イーリスはツールトの手を取り懇願する。

「分かりました。だから少し落ち着いてください。イーリス様」

「す、すみません」

「ヴェスジック王国に戻らないとそれは行えないんです、少し預からせてもらっても宜しいでしょうか?」

「何日くらい掛かるでしょうか?」

ツールトにもはっきり分かるほど、イーリスの瞳には一日も離れたくないと訴えていた。

「そうですね。三日程頂ければ大丈夫だと思います」

「三日、三日ですね。それなら我慢出来ます。よろしくお願い致します」

「分かりました。楽しみに待ってて下さいね」

「はい!」

そう返事した時のイーリスの笑顔は大輪の花が咲き誇るかのように綺麗だった。

その後、他愛もない話しをしてからツールトは預かったシュネークリスタを持ってお暇する事にした。

「ではまた三日後、花をお届けに参りますね」

「はい。ありがとうございます」

「まだお礼は早いですよイーリス様」

「そうでした。じゃあ持ってきて頂いた時に改めてお礼をしますね」

ツールトは「楽しみに待ってて下さいね」と言って居室を後にする。

一人になったイーリスはふと部屋の窓から外を見る。

(何でしょう。とても嫌な感じがする空ですね)

今にも雨が降り出しそうな曇り空は、王国を覆い尽くさんとしていた。

けれど下の広場に目をやれば、彼女の最愛の人の姿が目に入った。

(ふふっ、彼は今日も頑張っていますね)

しばし見ていたイーリスは、自分の公務を務めるために窓から離れ机に向かう。

ツールトに頼んだ花の加工の完成の事を思うと自然と笑顔になってしまうのを止められない。

しかし三日後に戻るはずだったシュネークリスタは、ある事が原因で当分戻る事は出来なくなってしまうのであった。


イーリスに窓から見られていたとも知れずに、炎は日課となっている剣術訓練をツィトローネと行っていた。

お互い刃を潰した練習用の剣で打ち合う。

「たぁっ!」

炎は気合を込めて剣を振るうが、ことごとく躱され、弾かれ、受け流される。

そして膝や肘や手首に、手痛い一撃。

勿論大きな怪我をしないように手加減されているが、それでも痛い。

思わず後退して距離をとる。

「どうした? もう降参か?」

ツィトローネは隙だらけで間合いを詰めてきた。

「これなら!」

下段から振り上げた一撃は誘われたと気づいた時にはもう戻せなかった。

ツィトローネはハーフソードで炎の剣を受け止め、鍔迫り合いになる。

(何それ?)

見た事のない剣の持ち方に驚いてる隙に、更に攻め込まれる。

ツィトローネは剣を握る左手で纏めて炎の剣を握ると、剣の柄の下に自分の右腕を入れ、押し上げて剣を奪ってしまった。

炎の剣は遠くに飛ばされ、首元に剣先が当てられる。

「ま、参りました」

「よしこれで私の二十連勝だな」

炎は疲労でその場に伸びる。

土で服が汚れるがそんな事は気にしてられなかった。

「だらしないぞ。もうばてたのか?」

因みに今の格好は学校の制服では無く、訓練用の麻の服を着ている。

ツィトローネはというと、いつも通りキッチリと紅い鎧を纏っていた。

なのに息ひとつ乱れていない。

「はぁ、はぁ、それにしてもあんな剣の持ち方あるの?」

「ああ、ハーフソードという持ち方だ」

ツィトローネは右手で剣の柄を持ち左手は剣を直接握って見せる。

「この持ち方ならさっきみたいに相手の武器を奪ったり、狭い所でも活躍できるぞ」

「そんな持ち方あるんだね〜」

「後で教えて上げようか?」

「えっと、もう動けないので、明日お願いします」

こう思うとあの時勝てたのは、まぐれだったのではないかと思ってしまう炎であった。

だが実際は、炎が思っている事は少し違っていた。

あの決闘の時の訓練では、ツィトローネも炎の事を見くびっていたからだ。

だからこそ決闘の後、炎との訓練もしつつ、アッシュや他の騎士とも厳しい稽古をつけてもらっていた。

そのお陰で炎に負けた時よりも、遥かに実力は上がっていた。

今のツィトローネは女王であるイーリスだけでは無く、炎も護ると誓いを立てた。

その為にも誰にも遅れをとるわけにはいかないのであった。

例え護るべき炎であっても。

「ほらいつまで寝てるんだ。午後からも訓練だろ?」

「……そうだった」

ツィトローネに手を引いてもらって起き上がる。

最近の炎の一日は、午前中は剣術や武術の訓練。

午後からは、ジャスティベースでバーニンガーのシミュレーション。これを繰り返す毎日を送っている。

「じゃあ午後の訓練も頑張ってきます」

「ああ、頑張れ。でも着替えてから行けよ」

「はーい」

炎は自分の着ている服が、汚れていることに気づく

特に仰向けに倒れたせいで背中は土だらけだった。


炎は制服に着替えてジャスティベースに向かう。

基地の設備を用いれば、様々な種類の服。

地球の服や、この星の服を着ることも可能なのだが、炎は結局学校の制服で満足していた。

今着ているのも、学校指定の白のシャツに黒のズボン。

毎日着替えてるにしてもとことん服装に無頓着な男であった。

アシュラスーツに着替え、バーニンガーの頭部コックピットに入る。

「さあ、今日も張り切って行くわよ!」

そう言ったのは炎を補佐するバーニンガーのAI。ナーシアである。

因みにナーシアとは、ナビゲーションシステムAIを省略した名前であり、最初は本人は嫌かっていたが、今ではすっかり気に入っていた。

「今日も元気だね」

「私は何時でも元気よ! あんたは元気じゃないの?」

「俺だって元気潑刺さ! さあ今日の相手はどいつだ」

「? まあいいわ。シレイこちらの準備はいいわよ今日の相手を出してあげて」

「畏まりました」

「シレイってシミュレーションの時はいつも通りなのに、戦いの時は性格変わるよね」

「炎様、仰る意味がよく分かりません。私はいつも通りに振舞っているつもりですが……」

「ああっ、大丈夫。何でもないから、早く相手を出して出して」

それから炎に「あの状態は無意識なの」と釘をさす。

「よろしいですか? それでは出現させます」

シレイがそう言うと、バーニンガーを通した炎の視界に二体の侵略獣が現れた。

「あれ、機械の誤作動かな? 俺の目には二匹いるように見えるけど」

「大丈夫、正常よ。私のほうでも確認したわ」 「今回のシミュレーションはこの二体と戦っていただきます。尚、超必殺技(クリティカルウェポン)は使用出来ませんので、悪しからず」

「そんな! 二体同時に戦えっていうのか?」

「こういう状況が、今後ないとは言い切れません。今の内に対応しておけるようにしておくべきです」

「分かった。相手が二体でもやってやるさ!」

「その意気です。二対一という事で最初からバーニンガーのエネルギーは、百パーセントに設定してあります」

「! じゃあ、即最強になれるんだな」

シレイの「そうです」という言葉を聞きながら、炎は全速力で走らせ、間合いを詰める。

「行くぞバーニンガー! フルパワーモードだ!」

炎が叫び、音声コマンドが入力され、バーニンガーの後頭部から緑のたてがみが表れる。

どんどん距離を詰める両者。

相手の侵略獣は、以前戦った二体。

鉈のような角を持つハチェットホーン。

巨大な腕に盾を装備したゴウワン。

どちらも炎とバーニンガーを苦しめた相手だが、今の炎に恐れるものはない。

ハチェットホーンが、近づいてくるバーニンガーに体当たりしてきた。

その後ろではゴウワンが攻撃しようと身構える。

その体当たりを楽々と受け止め、迫る右拳の盾にする。

「グギャアアッ!」

身代わりに重い一撃をもらったハチェットホーンは苦悶の声を上げる。

ゴウワンはお構い無しに、次は左拳を振るう。

その前に、ハチェットホーンを投げ飛ばし、攻撃を潰す。

一瞬動きが取れなくなった二体に向けて炎は右腕に力を溜める。

「必殺! ロケットパンチ!」

バーニンガの右前腕から、四つのブースターが展開、緑の炎の尾を引きながらハチェットホーンを貫き、轟音、大爆発。

「やった!」

「まだよ!もう一匹生きてるわ!」

身代わりと自分の盾を使い生き残ったゴウワンが、反撃の一撃を振るう。

「ウオオオオオオ」

「甘い!」

炎はその行動を読み、相手の右拳とバーニンガーの左拳が正面で()ち当たる。

両者、力が拮抗して膠着状態に陥る。

それを破ったのは炎だった。

「 ロケット……」

再び炎の音声コマンドを受け、今度は左腕が展開する。

必殺の一撃を放つために。

「パアァァァァンチ!」

四つのブースターは炎を吹きながら、ゴウワンの拳をジリジリと押す。

ゴウワンも負けじと押し返してくる。

しかし次第に力負けしていき、遂にバーニンガーの拳が顔を捉え、貫く。

頭を失った侵略獣はそのまま倒れ、爆裂した。

「シミュレーション終了。炎様の勝利です。おめでとうございます」

「ブハァー。疲れた」

「お疲れ。あんたにしてはよくやったんじゃない」

「うん、ありがとう」

「なんか素直にそう言われるとツマンナイ」

(何て答えればよかったんだ)

口に出すのは怒られそうな気がして、止めておくことにした。


ジャスティベースにあるシャワーを借りて少し休息していた炎は、指令室にいた。

そこでシミュレーションの評価を受けるためだ。

しかし突然、付けているブレスレットにツィトローネから連絡が入るのであった。

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